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GOAL


ミナムがアメリカから戻ってきて、ようやくグループに加入となった。


双子だが、こうも性格が違うのかとある意味感心してしまう。


 


あのテギョンを前にしても動じない肝の据わった様。


見ているこっちがヒヤヒヤしたが、案外うまくやれている。


有限実行のタイプなんだろう…


 


ジェルミとは、スキンシップの過剰さに辟易していたが


すっかりなれて、よくじゃれ合っている。


 


そしてシヌはといえば…


ミニョが去ってから、心にぽっかり穴が空いた気持ちだ。


ついつい、そっくりなミナムを見つめてしまう。


 


オフの日の早朝のこと、


いきなり部屋に入ってきたミナムに、紙片を渡される。


『はい…ミニョの電話番号だよ。もう毎日俺の顔を見るたび溜息を疲れるのは勘弁して欲しいからね。』


こっちの気持ちなんて見透かされているのだろう。


 


だけど、いきなり電話なんかしてどう思うだろうか…


そんなことを考えてしまうんだ。


 


『あ~あ!!もうじれったいなぁ…電話借りるよ』


半ば強引にシヌの電話を掴む。


そしてその電話はもう、ミニョへと繋がっている。


ミナムといえば、用は済んだとばかりにドアへと向かう。


振り向きざまに、ファイティンポーズを残して…


 


「はい…コ・ミニョです」


ああミニョの声だ。


女の子として聞く初めての可愛い声。


 


『あ…カン・シヌです』


第一声をどうしようと思ったが、なんの捻りも無く名乗るだけ。


電話の向こうのミニョは、無言だ。


いきなり電話して、迷惑だったんだろうか。


 


『シヌヒョン?本当にシヌヒョンですか?お久しぶりです。すみません挨拶もそこそこで宿舎を出てしまいました。皆さんときちんとお別れできなかったこと心残りだったんです』


ミニョは申し訳なそうに話している。


こっちの都合で振り回されたのはミニョだというのに。


 


「いや…皆わかってるから気にするな。それよりも元気だったか?ごめんないきなり電話して。驚いたか?」


ミナム時代とは違うんだと自分に言い聞かせて言葉を選ぶシヌ。


 


『はいっ、TVでシヌヒョンを見てたのです。その本人から電話が来たんですから…もうびっくりです


ミニョの声は、ミナムの時と違って少し高い。


 


TVって?」


『あっあっ…その昨日の歌番組を…』


何故だか焦るミニョ。


やっぱりテギョンのことが気になっているのか?


シヌの頭の中に蘇る二人の姿。


だけど、今はそれは気にしないことにする。


折角ミナムがくれたチャンスなのだから…


 


「ミニョ…今日この後何か予定入っているか?」


『え?特に…』


こんな簡単な質問でも、シヌの心臓の音はかなり煩い。


幸運なことにミニョも今日はフリーのようだ。


 


思い切って会う約束を取り付ける。


場所はミニョがミナム時代に撮影で使用した高校のグラウンド。


 


ミナムには言えなかったけど、ミニョに言いたい言葉があるんだ。


『あの場所ですか?…はいわかりました』


電話の向こうのミニョは怪訝な声だが、OKを貰う。


 


 


ところが、いざ出かけようとしたら


 


『シヌヒョン!!どこ行くの?』


目ざとく出かけるシヌを見つけたのはジェルミ。


 


「ああ…ちょっとな」


ミニョに会うといえば絶対についてくるであろうジェルミ。


だけど…今日は…二人きり出会いたい。


 


そんなシヌの気持ちを知ってか知らずか、自分もひまだから一緒に来たいと言ってきたのだ。


いよいよ困り果てていると…


 


「ジェルミ…オレもヒマなんだ!!この辺よく知らないから遊びに連れて行ってよ!!」


「えーもう仕方ないなあ。付き合ってやるよ」


助け舟を出してくれるミナム。


ジェルミは頼られて悪い気はせず、すぐに出かける支度を始める


 


それにしてもミナムはずいぶん気が利く奴だ。


 


車を飛ばして、高校へと向かう。


駐車場から全力でグラウンドまで走っても、5分の遅刻だった。


 


自分から呼び出して遅れるなんて、だけどミニョは気を使ってくれるんだ。


わざわざこの場所を選んだ理由…それは


 


思い切り息を吸い込んだシヌの下に、転がってきたのはサッカーボール。


 


(そういえば…撮影のときは1度も決まらなかったな)


スーパーストライカーの設定だったシヌ。


だが、いくら運動神経抜群でも入らないときはあるのだ。


シヌとしては入るまで取り直しをして欲しかったが、結局タイムオーバーでCG処理。


 


だけど…今日は絶対に決めてやるという強い決意が生まれていたのである。


 


そんなシヌにボールの女神が微笑んでくれたのだろうか?


シヌの蹴ったサッカーボールは、大きなカーブを描き吸い込まれるようにゴールポストへと…


 


「すごい!!入った」


背中に聞こえるミニョの興奮した声。


 


シヌも思わずガッツポーズ。


いつも覚めていたと思っていた自分だけど、こんな一面があったことに驚く。


 


このゴールに後押しされて、ミニョの前に立った。


カッコなんかつけなくて良い…ただ素直に自分も気持ちを伝えるために。


 


当たって砕けることも覚悟していた…


だけど…ミニョからでた思いがけない言葉。


それって…そういう意味なのか?


 


「俺のこと好きか?」


結構恥ずかしいけど、思い切って言ってみた。


 


「はいっ大好きです!!」


こっちを真っ直ぐに見て、そう答えてくれたミニョ。


 


可愛くて


愛おしくて


自分だけのものにしたくて


胸の中へと閉じ込めてしまった。


 


「シッシヌヒョン…苦しい…です」


「ごめんな…嬉しくってつい」


ミニョの声にはっとしたシヌ。


考えてみれば場所も場所。


「行こうか?」


ミニョの手をしっかりと握り歩き出す。


 


「どこへ?」


小首を傾けてきいてくるその表情に、シヌの心臓はいくつあっても足りない。


 


「初デートは遊園地でいい…かな?」


「もちろんです!!」


シヌの言葉にミニョの表情は、ぱあっと明るくなる。


 


ずっとミニョと行きたかった場所…ようやく叶うんだね。 



拍手[36回]

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Shoot


「ミニョ!!ごめん待ったか」


「シヌヒョンどうしたんですか?いいえ私も少し前に来たばかりです」


少し緊張の面持ちのシヌがミニョを呼び出した場所は、


彼女がミナムとしてPV撮影を行った高校のグラウンドである。


どうしてわざわざここに?


ミニョは少し戸惑っていた。


 


PVは日本のサッカー漫画を題材にしたもので、ミナムとテギョンがクラスメートの設定で、当時テギョンと噂のあったアイドルのユ・ヘイも出演していたもの。


 


ミナムの正体を早い段階で知ったヘイは、何かとミナムに辛く当たる。


演技も経験はOのミナムは、何度もやり直しのテイクがかかった。


そんなミナムを一瞥したヘイは、ミナムを放置してテギョンに送るように強要していたのだ。


不本意ながら従うしかなかったテギョン。


ミナムの秘密は絶対に守らなければならなかったから。


 


そんなとき、たまたま撮影場所を通りかかったシヌ。


思うような演技が出来なくて落ち込むミナムを優しく励ますシヌの姿を見ていた監督が、


インスピレーションを感じて、シヌに出演交渉を始める。


 


頼まれたら断れないシヌは承諾せざるを得なかったが…


そこで問題が生じた。


 


『ずるい!!みんな出るなんて!!オレもでたい!!』


ごり押しで勝ち取ったミナムの友人役。


 


結局A.N.JELL総出演のPVということで、かなりの話題となったのだった。


 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夕暮れ時の誰も居ないグランドで、ひたすらシュートの練習をする侵入部員のミナム。


だが全く入らないことですっかりやる気をなくしてしまったとき、それに気付いた


キャプテンのシヌが声を掛けた。


自分には才能がないと嘆くミナムを見て、一言だけ問うのだ。


 


“ミナム…サッカー好きか?”


“はい”


好きな気持ちさえあればいいというシヌの言葉で吹っ切れたミナムは、再びボールを蹴り続ける。


 


いつか憧れのシヌのようなプレイヤーになることを夢見て。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 


 


「あのな…俺ミニョに伝えたいことがあって…っと」


言いかけたシヌの足元に転がってきたのは、サッカーボール。


 


「その前にこのボールを入れてくるかな?」


軽いドリブルの後、足を止めたシヌ。


 


(え?ここから蹴るの?)


ミニョが驚くのも無理は無い。


ゴールポストからかなり離れているのだ。


 


「あの時は、CG処理したけど今日は決めるから」


自分に言い聞かせるように呟きながら、蹴ったシヌのボールは大きなカーブを描き


ゴールポストへと吸い込まれていった。


 


「すごい入った」


思わず叫ぶミニョ


 


「やった!!」


シヌにしては珍しいガッツポーズ。


 


その後、練習中の部員にお礼を告げると


ミニョの元へと戻ってきた。


 


「ミニョ…俺ずっと思ってたんだ…ミナムが戻ってきたら気持ちを伝えようって。聞いてくれるか?」


ミニョを真っ直ぐ見目つめるシヌの表情は、いつもの優しいそれだけじゃなく


切なさも含んでいるように見える。


 


「はい…」


もちろんミニョは断れるはずも無い。


 


「ミニョ…好きだよ?」


「え…?えーー」


不意打ちのようなシヌの告白に戸惑うミニョ。


 


「ゴメン驚いたか?俺はずっと好きだった。だけど男としてがんばっているミナムを応援したい気持ちもあって、ずっと見守ってきたんだ。そしてようやく本当のミナムが戻ってきたからやっと伝えることが出来る。ミナムにとっては良い兄貴だったかもしれないけどそれはいやなんだ…もちろん友達にもなりたくない。俺はミニョの恋人になりたい!!」真っ直ぐなシヌの告白に戸惑いつつも、ミニョは静かに聞いていた。


 


最初にミニョが心惹かれたのはテギョンだった。


だが、彼はユ・ヘイを選んでしまう。


もちろんそれは、ミナムの秘密を守るためだという事情を後で知ったのだが。


 


初めてのPV撮影。


慣れない環境の中唯一頼れる存在であるはずのテギョンは、ミナムよりヘイを優先する。


 


あの時孤独感にさいなまれたミナムを救ってくれたのは、シヌ。


だからシヌが急遽撮影に参加すると知って、本当に嬉しかったのだ。


 


演技に関してのアドバイスに、宿舎へ戻ってからのティータイム。


いつの間にかシヌと一緒の時間が、かけがえの無いものになっていたのだ。


 


だが、シヌのやさしさはあくまでも同じメンバーとして


そう思い込んでいたミナムは、本来のミニョに戻ったとき…自分とは住む世界が違う人だと…無理やり心に言い聞かせるしかなかった。


 


そんなときのシヌの告白。


自分の思いが許されるなら、伝えたいとミニョは思った。


 


「シヌヒョン…あのPVの台詞をサッカーを私の名前に変えて言って下さいますか?」


恥ずかしそうに顔を赤らめながらのお願い。


シヌは一瞬目を丸くしたが、すぐに気付いてくれたようだ。


「ミニョ…俺のこと好きか?」


「はいっ大好きです!!」


嬉しそうに聞いてくるシヌに、はっきりと答えるミニョ。


 


その瞬間、ミニョの身体は吸い込まれるようにシヌの腕の中へと。


 


ドラマのワンシーンのような二人に、サッカー少年たちは練習も忘れて


ただただ二人の姿に釘付けだった。


 


その後…シヌが入れた場所からシュートが決まると恋が成就するという伝説が広がったという。 


拍手[17回]

ROULETTE 7



「こん「こんにちは!!ミニョ」」

シヌの言葉を遮ぎり元気よく部屋に入るカイル。


「あっあの・・・」
元来人見知りのミニョは、カイルの姿に緊張の面持ち。


「こら?大声出すなよ。ミニョがびっくりしてるだろう?ごめんね煩くして」
「いっいいえ・・・大丈夫です」
シヌがさっとミニョの傍に行くと、ミニョは小さく首を横に振った。


「ほらぁ?平気だっていってるじゃないか」

そういって後から入ってきたカイル。


「シヌさん、今日はいつもより早いんですね」
「うん・・・仕事が思ったより早く終わってね。そうだちょっと待ってて」
簡易テーブルをセッテイングしたシヌ。


次にミニョをベッドから抱きかかえると、キャスター付のソファに座らせ
テーブルの前へ連れてゆく。
恋人さながらのその行為を目の当たりにしたカイルが呆気にとられていることなど、
まるで気にしない。
もちろんミニョ本人は、あっという間の出来事だったので目をぱちくりさせているのだ。


そして奥の部屋へと入ったシヌは、数分後ワゴンを押しながら戻ってきた。

「あっ!!それは!!」
ミニョは驚きのあまり声をあげる。

「うん・・・まだあのカフェには連れて行って上げられないけど・・・気分だけでもね」
そういってシヌは、ミニョの目の前に限定スイーツセットを乗せた器を置き
次にテイーポットからお茶を注いだ。もちろんノン・カフェインある。


「わぁ・・・嬉しい。でもすごい人気だって書いてました。忙しいのにわざわざ買いに言って下さったんですか?」
申し訳なさげな表情でシヌを見るミニョ。
ミニョが喜ぶならこんなことなんでもないというのに・・・

もちろん実際今回は買えなかったわけだが。


「うん・・・買いに行ったんだけど・・・ギリギリ買えなくてね。そこにいるカイルに譲ってもらったんだよ」

「っもう!!わざわざネタばらししなくてもいいのに」
正直に話すシヌに、カイルは少々呆れ顔だ。


「ごめんなさい・・・私の為に・・・」
「いーよ。気にしないで。スイーツを譲る代わりにミニョに会いにこれたんだもん。シヌったらさーまるで宝物を隠すようだったんだよ。その代わりに1個だけちょうだい」
顔を曇らせるミニョに対して、明るくかわすカイル。
ちゃっかり自分も食べようとするのは、抜け目のないやつだ。


「もちろんです・・・・・・」

ほっとした様子のミニョは、オレンジキュラソーを強めに効かせたチョレートケーキを
カイルに譲る。
(アルコール強なら・・・懸命な選択だなミニョ)


「じゃあ・・・3人でおやつタイムだ」
元気よく声をあげたカイルは、大きな口をあけて早速ケーキをほお張る。


「ん~濃厚なチョコ味サイコー」

口の周りをチョコだらけにして満足げである。

「全く・・・子供じゃないんだから・・・あっほらミニョも食べて?」
ふと見ると、ミニョは二つのケーキをじっと眺めているのだ。

「あの・・・シヌさんも1つ好きなほうを・・・」
3個のスイーツだから気を使ったようである

「折角だけど・・・俺甘いものはあまり食べないから・・・気にしないでミニョが食べて?」
「そう!なんですか?実はどっちも食べたいケーキだったので悩んでました」
シヌの言葉にミニョの表情はぱぁっと明るくなる。

そしてカイルに負けず劣らずで、口の周りをクリームだらけにしてしまうのだ。

「ほら?食いしん坊お姫様?ついてるよ」
そういってミニョの口元を指で拭ったシヌは、そのままパクリ。

「シ、シヌさん!!何ですか?」
「ん?限定スイーツ俺にもおすそ分けだね」
慌てて口元を押さえるミニョに、表向きは冷静なシヌ。
ミニョの唇に触れるのは、偽の恋人の馴れ初め話をしたあの公園以来だ。


(俺のシナリオを一生懸命に覚えようとした姿が、逆に苦しかったっけ)
ミナムとしていたミニョとの日々・・・折りにつけ思い出すのかもしれない。

「もう!シヌさんたら!!意地悪です」
「え?ひどいなぁ意地悪したつもりなんて無いのに。ごめんねクリーム俺が食べちゃったから怒ってる?」
俯いたままのミニョに対して、席を立って覗き込むシヌ。


「ちっ違います・・・も・・・知らない」
ミナム時代とは違い、自分に対して女の子の反応を見せてくれることが嬉しくて
ついからかってしまったけど、これ以上は嫌われてしまう。

何とか機嫌を直してと考えていたそのときだった


『rrrr』

ポケットの中の電話が震える。

「ごめんね・・・すぐ終わるから」
一言ミニョに断りを入れると、奥の部屋へと行くシヌ。

“え?今からですか・・・?”
“どうしても・・・”
“はい・・・わかりました・・・戻ります”
相手が電話を切ったのを確認すると、やや乱暴に通話ボタンを切るシヌを見て
カイルが心配そうに尋ねてきたので、訳を話す。


「ああ・・・俺のシーンをこれから撮りなおすんだって」
シヌと絡んだ初回のゲストの新人女優から、自分の映りが気に入らないとクレームがついたため。

「全く・・・自意識過剰だって言うんだよ。誰もあいつなんて気にしていないのに。それよりあの棒演技を何とかして欲しいよ」
シヌの話にカイルは理不尽だと憤慨する。

「ありがとう・・ちょっとはスッキリしたよ」
苦笑するシヌ。

その後ミニョの傍に行くと、目線を合わせるために腰を落とすと。
急な仕事で戻らなければならないことを話した

「え?あっそう・・・なんですか?」
明らかに落胆した様子のミニョを見て、不謹慎だけどどこかで喜びを覚えるシヌ。

椅子から抱き上げて再びベッドに寝かせると、ふわりとブランケットをかけてやる。

「ごめん・・・ミニョとゆっくる話せるって思ったのに残念・・・」

離れがたいのはシヌのほうだ。
こんなときに優先しなければならない仕事。
もちろんこの仕事を選んで無ければ、ミニョとの再開も無かったわけで


「また来るからね。カイル行くぞ」
カイルの取り直しは無いが、当然シヌと一緒に戻るはず。

だが、予想外の言葉が彼から返ってくる。

「オレ・・・もう少しここにいたいんだけど。ね?ミニョ良いでしょ?やっとこの部屋に来たんだからもう少しおしゃべりしよう?ダメぇ?」

「えっダメとかそんな」

屈託の無いカイルの笑顔を見せられたミニョが、断れるはずも無く。


「ということだから・・・シヌは心配しないで仕事がんばってきてください」

ぐいぐいとカイルに背中を押されてしまう。

「全く・・・仕方がないな・・・ミニョを疲れさせるようなことはするなよ」
「はーい。りょーかい」
真面目に聞いてるのか分からないカイルの返事。

だが・・・漠然とカイルなら安心だという思いもどこかにあったのかもしれない。

===========================================

ミニョちゃんとの新しい関係は中々良好なシヌです。
男として意識をしてくれるのは嬉しいですよね?
ずっとスルーされまくりでしたから・・・

病室で過ごすミニョちゃんは、グルメ雑誌のスイーツ特集をみて
いつか食べたいと思っていたのでしょうね。

そんなささやかなミニョちゃんの願いをかなえるために、カイル君にも頭を下げることをいとわないシヌ。
ミニョちゃんの笑顔のためなら、造作も無いことです。

もちろん甘党のカイル君、すんなりというわけには行きませんが・・・
シヌのミニョちゃんへの思いを聞かされていたから、承諾するしかありません。

甘いケーキを食べるミニョちゃんとちょっぴり甘いひと時を過ごすシヌ。
(お邪魔虫のカイル君はこの際眼中にいれず・・・汗)

だけど、急な撮影のため戻る羽目に。
後ろ髪を惹かれる重いでしょうね。

ミニョちゃんと二人きりになったカイル君。
深い事情を知らないですが、シヌの思いを知っているので・・・何がアクションを起こすでしょうか

例によってこれから考えます・・・自爆


拍手[36回]

ROULETTE 6


愛しいミニョの寝顔を見つめていたシヌは、しばらくすると静かに病室をでてゆく


 


自分の部屋に戻っても、ミニョのあの泣き顔が頭に焼き付いて離れないのだ。


 


記憶をなくしていると言うのに、やはりあの歌はミニョにとって特別なものなのか。


ベッドに寝転びながら、静かに目を閉じるといつかの日の光景が瞬時に蘇ってきた。


 


『思いが溢れて仕方がないんです』


『誰にも見られたくない』


テギョンへの思いをどうしたいいかわからずに、苦しんでいたミニョ。


 


『隠してやる』


本当はミニョからその思いを消し去ってしまいたかった。


俺のほうがずっと愛しているのに・・・どうして気付いてくれない・・!!


 


良い兄貴になんてなりたくなかった・・・のに。


 


だけどミニョにこの気持ちをぶつけて苦しめることなど、シヌに出来るはずも無く・・・。


今はミニョの笑顔が見られるだけで良い・・・その思いだけで、彼女の病室へと通う日々。


 


少しづつ打ち解けてきたミニョは、子供のころの話を聞かせてくれるようになった。


ミナムとしてではなく、ミニョ本人のエピソード。


 


「その頃のミニョにも会いたかったな?きっと可愛い女の子だっただろう?


あっだけどミナムのガードが硬くて近づけなかったか・・・」


「もっもう・・・からかわないで下さい・・・カン・シヌさん」


大真面目なシヌの言葉に、ミニョは恥ずかしそうに頬を染める。


 


あの頃のミニョは、こんな表情を見せてくれたことは無い。


記憶をなくしたことで、意識してくれたのだとしたら皮肉なものだ。


 


一方ミニョからも、グループに加入してからのミナムの話を教えて欲しいと頼まれてしまう。


気になるのは当然だろう・・・


 


だが・・・身代わりの話は出来ない。


そこでシヌのとった方法は・・・


 


「ミナムはさ、加入そうそう酔っ払って潔癖症のリーダーに・・・・」


「まっオッパったら・・・そんなことを・・・あの怖そうな方なら怒られたでしょうね」


シヌの言葉を効いて目を丸くするミニョ。


 


「ああ・・・怖いって良くわかるな」


テギョンのことを覚えていないミニョがどうして・・・?


シヌは自分の動揺が悟られないように、できるだけ平静を装う。


 


「だって・・・動画サイトで見ると・・・こんな目をしてます」


そういってつり目を作るミニョ。


 


「プッ・・・すごいそっくりだ」


ミニョの顔真似がつぼに入ったのと、安堵からかシヌはしばらく笑いが止まらない。


 


「シヌさん!!笑いすぎです」


ミニョがふくれっ面で抗議をするが、怒った顔も可愛い。


 


そうしてミニョが寝入るのを待って病室を出てゆくのだが・・・


ふと開きかけの雑誌に目が留まった。


 


 


(ミニョ・・・変わってないな)


雑誌のとあるページの花丸をみて笑みが零れる。


できればその希望を叶えてあげたいが・・・


 


翌日も早朝からの撮影に臨むシヌ。


ドラマの初回O.A.が数日に迫り、いよいよ大詰めである。


 


「良いぞ、シヌ!!言葉はなくても秘めた思いが伝わってくる」


シヌの感情をギリギリまで抑えた演技は、監督や演出家から評価が高い。


 


本国では大人気のアイドルでも、こっちではほぼ無名だったシヌ。


クランクイン当初はそれほど期待はされていなかったのだが、撮影が進むにつれて


周りの空気は変わってきたのをシヌ本人以外は敏感に感じ取っていた。


 


NGを殆ど出さないシヌの撮影は予定よりもかなり早く終わる。


 


(これなら、間に合うかもしれない)


シヌは逸る思いで大学病院の近くにあるスイーツカフェへ向かう。


 


そうミニョが食べたがっているであろう限定のスイーツを買うために。


 


だが・・・


到着と同時に完売の紙が貼られてしまったのだ。


(遅かったか)


 


落胆するが、折角来たので店内に入ろうとしたところ


 


「やりぃ限定スイーツGET!!」


年内から満面の笑みで出てきたのは・・・今日は別の場所の撮影だったカイルだ。


浮かれているのか?シヌに気付かずそのまま通り過ぎてしまう。


 


(限定って言ったよな)


慌ててカイルの後を追ったシヌは、思わずその手を掴んでしまった


 


「待て!!」


「何だよいきなり!!っとシヌ?」


不快そうな声で振り返ったカイルだが、すぐにその表情は変わる。


 


「悪いな、驚かせたか?」


「っもうっ・・・一瞬襲われるんじゃないかとおもってビビッたよー♪」


シヌの姿を捉えると、はぁっと大きく息を吐く。


 


だがシヌはカイルが一瞬見せた構えを見逃さなかった。


フワフワとした見かけとは違い、侮れない奴かもしれない。


 


そんなカイルに、紙袋の中のスイーツを譲ってほしいとシヌは頭を下げた。


当然良い返事はもらえない。


スイーツ好きなカイルがようやく買えたのだ。


 


「頼む!!ミニョに食べさせたいんだ」


再びシヌが頭を下げると・・・カイルは態度を軟化させたようだ。


 


「わかったいいよ」


「ありが」その代わりオレも一緒に行っていいでしょ?」


いたずらな笑みを浮かべるカイル。


何度か着いてきたいと言われていたが、ミニョの体調を思って首を縦に振らなかったシヌ。


 


「全く・・・良いけど・・煩くするなよ」


不本意ながら足元を見られているシヌは、しぶしぶ承諾した。


尤もあの部屋はカイルの働きかけによるものだからむげには出来ないのだが。


 


【コッコッ】


「はぁい」


ノックをすると中からミニョの可愛い声が聞こえてきた。


拍手[34回]

ROULETTE 5


ミナムとの通話を終えたミニョは、早速教えてもらった動画のページを開いてみる。

そこには、スポットライトを浴びているミナムの姿。

(オッパ・・・オッパ・・・良かったね)
ミニョにとっては始めてみるミナムの姿。
だが・・その歌を聞くと自然に口ずさんでいる自分に気付く。


(この歌・・・私知ってる・・・?)
不思議な感覚だが、確かにそうなのだ。
動画を食い入るように見ながら、次にミニョの目に止ったのは

(カン・シヌさん?)
ギターを弾きながらステージを駆け回るその姿は、ついさっきこの場にいたシヌとはまるで別人の姿。

更に他のメンバーの姿も凝視する。
漆黒の髪のボーカルは、なんだか怖そうなイメージ。
だが金髪のドラマーは終始笑顔で、楽しそう。


(私・・・どうして覚えてないんだろう)
もどかしさを覚えながら、次々に動画を開くミニョ。


あっという間に数時間が過ぎてしまうほど。


「あらあら?ほどほどにしないと疲れるわよ」
夕食を運んできた看護士に諌められて、ようやく閉じた。

言われてみると、目が痛い
それにバッテリーもずいぶん減っているようだ。

充電しないといけないだろうが、肝心の充電器がみあたらない。
食事を済ませ薬を服用したミニョは、音楽プレイヤーを起動させる。
グループがこれまで発売した曲をとにかく聞き続けたのだ。


そこでミニョが注目したのは、ミナムのソロ曲。

【言葉もなく】
歌が始まってすぐ、切ないメロディーに何故だか胸がしめつめられて涙が止まらない。

(どうしよう・・・苦しいよ)
泣き続けるミニョは、部屋をノックする音にも気付かない程だった。


「!!どうした?気分が悪いのか?」

「え?先生」
切羽詰ったその声に反応して顔を上げると、心配そうにミニョを見つめる白衣の人物。

一瞬新しいドクターだと思ったが、白衣を脱ぎメガネを外すと現れたのはシヌ。
ナースコールをすると言う彼を慌てて制した。


「平気です・・・」

「だけど・・・そんなに泣くほど辛いんだろう?」
どうやら具合が悪くと誤解されているようだ。


「あの・・・違います・・・ミナムオッパの歌を聴いていたら・・・その」

「ああ・・そう・・だったのか」
ミニョが握り締めているスマートホンから流れているミナムの曲に気付くと、一瞬シヌが顔を歪めたに見えたのは気のせいだろうか。


「おか・・・しいんです・・・私・・・涙が・・・止まってくれなくて・・・大好きなオッパのソロ曲なのに聞いていると苦しくて仕方がなくて・・・どうしたら?」
途切れ途切れに言葉を繋ごうとしたミニョだったが、不意に暖かい温もりにつつまれてします。

「止める必要ないよ・・・好きなだけ泣いていいから・・・」
掠れ気味の優しい声のシヌ。

シャツにシミが出来るとか、そんなことを考えもしないで
シヌの言葉に甘えてしまうミニョ。
温かい腕の中は、心地よかった。


「ごめんなさい・・・迷惑をかけて」
ようやくミニョが泣き止んだとき、シミが出来るどころかぐっしょりと濡れたシャツ。

「気にしなくて良いからね。俺の胸でよかったらいつでも貸すから」
どこまでも優しいシヌ。
記憶が無いミニョに対して何故これほどまでに気にかけてくれるのか?


「あの・・・」

「ん?何?」
ミニョの言葉にすぐ反応してくれるシヌ。

(ミナムオッパの妹だから・・・だよね?)
改めて確認することも無い。だけど言いかけたからには何か話題を・・・
そう思ったミニョからでたのは

「シヌさんのギター弾いてる姿見ました。ここで会うシヌさんとはイメージが違っていたんですけど・・・あの・・・カッコ良かったです。」

「ホント?ミニョにそういってもらってすごく嬉しい」
ちょっと照れた笑いのシヌ。

「あっ八重歯あるんですね?」
「えっ?見られたのか?俺の秘密だったのに・・・参ったな」
どうやら見てはいけないものだったらしい。

「ごめんなさい・・・何もみてません」
思わず俯いてしまうミニョ

「うそだよ・・・ミニョに秘密なんてないから」
耳元で囁くシヌ。

「もっもう驚かさないで下さい!!」
「ゴメンゴメン・・・悪かったよ」
頬をほんのり赤くしたミニョの抗議の言葉に、シヌは笑いながら謝罪。

こうしてひとしきりじゃれあいが続いた。

やがて気分が落ち着いてきたミニョから漏れる欠伸。
シヌに促されて床につくと程なく寝息を立てたのは、泣き疲れも大きな要因だったのかもしれない。



「ミニョ・・・あの曲を聞いて何か思い出したのか・・・俺は・・・」
完全に眠ってしまったミニョに対して、シヌが切なげに語りかけていたことなど知るはずも無かった

=============================================


ようやくミナムと話をすることが出来ました。
シヌは携帯を複数持っていると思われます。
ミニョちゃんに渡したのは、韓国にいるときに使っていたものということで。


言葉もなくは・・・かつてミニョちゃんテギョンさんを思って涙した曲です。
『俺が隠してやるよ・・・』
シヌにとっては辛い思い出ですね。


記憶が戻る切欠になるのでしょうか?
当初はもう少し短い話を想定してたのですが、例によって長くなってしまうかもしれません。


 

拍手[40回]

ROULETTE 4



「コ・ミニョさん、今日からお部屋を移りますよ」
診察後に看護士から言われた言葉。
昨日大掛かりなモニターが取り外されたので、自分の状況は快方に向かっているのだとミニョも思った。

おそらく大部屋に移動になるはず。

(どうしよう・・・)
人見知りにミニョにとっては気が重かった。

だが・・・予想に反して連れて来られた場所は

「嘘・・・」
ドアがあくやいやな病室のイメージとは違う空間がミニョの目の前に飛び込んできた。

子供の頃なら、さしずめ御伽噺のプリンセスの部屋。
大人になってからも、シスターとして神に仕える自分には縁の無い場所だったはず。

「あの・・・私無理です・・・こんな高そうなお部屋・・・払えません・・・戻りたいです」
看護士に必死でミニョは訴えた。

「あら?そんな心配無用よ。それとあの部屋はすでに別の患者が入ることになっているから無理ね。」
「そんな・・・」
明るい口調の看護士とは対照的に、悲観的になるミニョ。
だが、今の状態で退院することも出来ないこともわかっている。

(入院費…どうやって払えばいいんだろう)
退院したらこの病院で働かせてもらえないだろうか・・・
その前にミナムに連絡・・・だけど番号が思い出せないのだ。
ミニョの頭の中は益々混乱してしまう。

「あらあら?そんな暗い顔をしたら治るものも治らないわよ。この特別室は誰でも入れるわけじゃないわ。ムーア先生の計らいよ。、めったに無い幸運をありがたく受け取らなきゃ!!」
どうやら看護士もこの部屋に入るのは始めてらしく、ミニョの担当になってよかったと言い残して部屋を出てゆくのだった。


「はぁ・・・行っちゃった」
ベッドの上で大きなため息を漏らすミニョ。

人生の中でこんな広い場所に住んだのはおそらく初めて・・・
加えてダブルサイズのベッド・・・

そしてやけに静かだ・・・
さっきまでいた部屋は、周りの話し声が聞こえてきたというのに・・・

TVを付けてみたが、言葉が良くわからずにすぐに消してしまった。
再び静かになる病室の中で、ミニョはわけも無く心細くなる。

そのときだった・・・

ノックに続いて入ってきたのは・・・

「あ・・・カン・シヌさん・・・」
兄の知り合いだというシヌ。

「良かった。俺の名前ちゃんと覚えてくれたんだね・・・」
名前を呼んだだけなのに、なんだかとても嬉しそうだ。
目覚めたばかりのときは、ちょっと怖かったけど今はそうは思わない。
優しい語り口が、不思議と落ち着くのだ。

「どうしたの?元気が無いね」
シヌの問いにミニョは小さく首を横に振ると、ポツリと呟いた。

「この豪華な部屋は・・・・その・・私には勿体無くて」
「そんなこと無いだろう?こんな可愛い部屋を可愛いミニョが使わないで誰が使うのかな?」
ベッドの傍までやってきて、可愛いを連呼するシヌ。
改めてその顔を見ると・・・びっくりするほど端正な顔立ちであることに気付くのだ。


「かっ可愛いなんてからかわないで下さい」
「心外だな?本当にそう思っているのに・・・信じてもらえないの?」
悲しげな表情のシヌだが、急に話題を変えた。

「そうだ・・・これ古い機種だけど・・・良かったら使って・・・」
ミニョの前に差し出されたのは、携帯電話。

(え?全然古くない)
この数年の記憶が抜け落ちているミニョにとっては、ほぼ最新のモデルが目の前にあって
困惑してしまう。

「折角ですが、大丈夫です。病院の電話かりますから」
高そうな部屋に加えて携帯電話まで・・・今のミニョにとっては贅沢以外の何物でもない。
好意に甘えたほうが良いのかもしれないが・・・・

「そうか・・・」
残念そうなシヌの声。
その表情は悲しげに見えた。

「ミナムが、ミニョの声を聞きたがっているよ。」
その言葉ではっとする。

「時差のこともあるし・・・手元にあったほうがなにかと都合が良いと思うんだ」
「分かりました・・・お借りします」
諭すようなシヌの言葉に、ミニョは頷くしかなかった。

「良かった・・・じゃあ手をだして?」
おずおずと差し出した掌にしっかりと載せられた、電話。

「ありがとうございます・・」
「どういたしまして・・・ミナムの番号1番目に登録していたから。」
休憩時間が終わるといって部屋を出て行こうとしたシヌだが、
不意に足を止めてこちらを振り返った。

「俺の番号・・・その次に入れたから・・俺にも声を聞かせて欲しいな」
そういって部屋を出てゆくシヌだった。


その言葉通り・・・アドレス帳を開くと・・・コ・ミナムに続いてカン・シヌの名前。
(はぁ・・・結局受けとちゃったぁ)
何となくシヌのペースに載せられたような気がしたミニョだが、やはりミナムと話をしたいという気持ちが強かったのである。

早速登録されているその番号をプッシュした。

『rrrrrrrr』
しばらく続くコール音。
(まだ寝てる?)
掛けなおそうかと思っていたその時

『あ・・・シヌヒョン?』
寝ぼけ交じりの声だけど、確かにミナムの声

「あの・・・オッパ?」
恐る恐るミニョが話を始めると、電話口で息を呑む音が聞こえたのだ。

『え?ミニョ!!本当にミニョ!!大丈夫か?オッパのこと分かるんだよな』
どこか必死なミナムの声。

「うん・・・しばらく入院するけど・・・平気だよ」
『良かった・・・ミニョのことはシヌヒョンに教えてもらったけど、心配でたまらなかったんだぞ』
涙汲んでいるミナムの声に、ミニョもつられて涙が出てきた。

思わず会いたいとミナムに漏らすミニョ。
簡単な距離ではないと分かっているが、妹として兄に甘えたかったのかもしれない。

『ごめん・・・今どうしても仕事が立て込んでいて・・・あっそうだミニョオレさ!歌手になったんだ!!』
「え?本当?」
予想もしないミナムの言葉に、思わず聞き返すミニョ。

a.n.Jellという、大人気グループに加入しているのだという。
兄の夢がかなったことがうれしくて仕方がない。
だが、そこでふと気付くのだ。

ミナムの仕事仲間というシヌの存在を・・

「あのオッパ聞きたいの・・・カン・シヌさんて?」
『ああ・・・シヌヒョンのこと覚えてないんだって?…あの人は本当に頼りになるひとで。オレも大好きなヒョンだから、困ったことがあったら相談しろよ』
シヌのことを熱く語るミナム。
育った環境ゆえか他人に対して冷めていたミナムが、こんなにも信頼を寄せているカン・シヌという人物。
蟠りが少しだけなくなる感覚。

話の中でシヌも同じグループということを知り、anチャンネルという動画サイトも教えてもらった。


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ROULETTE 3




「え?ミニョ・・・冗談は止せ…この俺のことがわからないって!!」


「あ・・・その・・・私」
至近距離ギリギリまで迫るが、ミニョは困惑している。
いや寧ろ脅えているといったほうが良いだろう。
自分に対してこんな表情をミニョは初めてだった。

「まさか・・・そんな」
聞きたくても、シヌはそれ以上言葉を繋げなかった。
いや・・・言葉にしてしまうのが怖かったのかもしれない。

そんなシヌの思いを知ってか知らずか、ドクターの次の質問はミニョの年齢。
迷わず出たミニョの答えは、実年齢よりも2歳若いものだった。
話を続けようとしたドクターだが、完全に覚醒してなかったミニョは再び眠ってしまった。


「ちょっと良いかな?外で」
「はい・・・ですが」
ドクターに促されるシヌだが、今はこの場を離れがたい。
そんなシヌを見てカイルが、ミニョを見ていると言ってくれたのだ。
他の男なら簡単には承諾しないシヌも、ジェルミと重なるカイルにはどこか安心感を覚えて頼むことにしたのだった。


Dr.ムーアのプライベートルームに連れて来られたシヌは、改めてミニョの現状を聞かされる。

「患者は、この2年程の記憶が抜け落ちているようだ」
先刻のミニョの様子でシヌも気付いたのだが、Dr.ムーアにはっきりと告げられるとやはり辛い。


「記憶は・・・戻りますか?」
不安げに尋ねるシヌに対して、Dr.ムーアの表情は堅い。
何かのきっかけで戻る場合もあれば、そのままの可能性もあるのだ。

「だが無理強いは禁物だ・・・かえって心を閉ざしかねないので」
「そう・・・ですか」
Dr.ムーアの言葉に力なく頷くしかない。
ドラマや小説でよくあるシチュエーションが、まさか自分の身近で起きるとは思いも寄らなかったのだ。
Dr.ムーアからは、ミニョの体調を最優先にするように言い渡される。
もちろんシヌも、それに依存は無い。


部屋を出たシヌは携帯を掴むと、連絡を待ちわびているであろうミナムへ・・・
タップする指が・・・やけに重く感じた。

『もしもし・・・シヌヒョン・・・え?そんな・・・嘘だろう?』
記憶障害のことをにわかに信じられないミナム。

「俺も・・耳を疑ったよ・・・だけど事実なんだ・・・それでもお前のことは分かるから安心しろ」
ミニョの記憶は抜けているのは、ちょうど身代わりとして加入した頃から現在までということも付け加える。

『そう・・・シヌヒョンこんな状況で申し訳ないけど・・・頼みます。」
「もちろんだ・・・落ち着いたらミニョの声も聞かせるからな」
ミナムは電話の向こうのミナム悲痛な声に心を痛めつつも、はっきりと告げたのだった。


通話を終えてミニョの病室に戻ると・・・
「あ・・・お帰り・・・あれからずっと眠っているよ・・・あんまり気持ちよさそうだからオレもつられて・・・ふわぁ・・・」
カイルから漏れる欠伸。

「悪いな・・あとは俺がついてるから、帰っていいぞ」
その言葉に素直に従ったカイルは静かに病室を後にした。


尚も眠る続けるその寝顔は、ミナムだった頃を思い出させ笑みが零れてしまうほど。

あの頃もっと早く行動を起こしていれば・・・

遅すぎた告白・・・

何度後悔したか分からない。

「ミニョ・・・本当に俺のことを忘れたのか?」
愛しいその名を呼びながら、何度も頭を撫でた。

その後面会時間を過ぎてしまい退出を言い渡されたシヌは、後ろ髪を惹かれる思いで病室を後にする。


当然自分の部屋に戻っても、眠れるはずもない。
その時・・・

【シヌ・・・起きてたら開けて】
ノックの音に続いて聞こえてきたカイルの声。

仕方なく開けると・・・
抱えきれないほどのお菓子や飲み物を手に、当たり前のように入ってくる。

「お前・・・夜だって言うのにそれか?」
「だってコンビニで新発売のお菓子見つけてたんだよねー選びきれなくってこんなになったんだよー」
こんな姿もやっぱりジェルミと重なるのだ。

「全く・・・食べるなら一つだけにしとけ」
「わかってるよー残りはシヌのとこに置いておくよ。オレんちだと我慢できないしね」
カイルはチェストの引き出しを開けると、その菓子類を放り込んでしまったのだ。
その行動に半ば呆れつつも、何故か憎めないカイル。

あっという間にスナック菓子を一袋開けて、満足そうである。

「ねぇ・・・あの子のことだけどさ?」
不意にカイルからミニョのことを尋ねられたので、とりあえず同じグループのメンバーの妹であることを伝える。

「それだけじゃないくせに・・・アレクやリタだって今日のシヌの動揺っぷりを見たからオレと同じように思ってるよ」
どうやら誤魔化しはきかないようだ。

それにシヌ自身この思いを誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
身代わりをしていたことを伏せつつ、ミニョとの出会いからこれまでのことを話し始める。

「・・・・ということだ・・・きっぱり振られたというのに・・・今でも忘れられない。情けないだろう?」
「そんなことない。本気だったら簡単に忘れられるわけ無いよ」
自嘲気味に呟くシヌを見て、カイルは必死にフォローしようとしている。

ミニョの恋人の顔を見たいというので、A.N.JELLの写真のテギョンを示したのだが
「ひぇ・・・目力すごい人だね・・・もし睨まれたら俺うごけないかも」
冗談めかしならが、テギョンの写真をしばらく眺めて尚もブツブツと呟いていたのだった。


翌日・・・ミニョの病室を訪ねようとするとやっぱりカイルが着いてくる。
曰くシヌとミニョが会話につまったときのためらしい。
扉の近づくと、聞こえてきたのはDr.ムーアの声。

「やあ・・・気分はどうですか?」
「あ・・・昨日より良いみたいです」
そう答えるとおり、ミニョの声は少し明るい。

「それは良かった・・・実はミニョさんに話しておくことがあるんだよ・・・」
Dr.ムーアはミニョの抜け落ちた記憶について触れていた。

「え・・・?そんな」
「まぁ・・・そのうち思い出すかもしれないし・・・あまり深く考えないようにね」
困惑するミニョに対して、Dr.ムーアはニコニコ笑っている。

《ねぇ・・・入ろうよ》
《もう少し待て・・・》
入り口でのそんなやり取りを続けていると、中からドアが開く
「なんだ・・・気にせず入ってきても良かったのに」
意味ありげにシヌを見るDr.ムーア。

軽く会釈をすると、シヌはミニョにゆっくりと近づいてゆく。
「昨日はごめんね。怖がらせてしまった」
「あ・・・そんな・・・」
消え入りそうな声で返事をしたミニョは俯いたまま。

(はぁ・・仕方ないよな)
今のミニョの症状を思えば、無理も無いのだ。

「俺の名前はカン・シヌ。君の兄さんのミナムとは仕事仲間なんだ。」
「カン・シヌさん?オッパの?」
自己紹介の後、ミナムの名前を挙げるとミニョの緊張は少し薄れたように見えた。

「うん・・・覚えておいてくれる?」
無くした記憶は、新たに覚えてもらえばいい。

「ねぇねぇ・・・シヌ、オレも紹介してよ」
シヌの手を引っ張るカイル。
まあこの場所にいるのに無視することも出来ないから、希望は聞いてやる。

「では、私は失礼する。あとはよろしく」
ミニョとシヌの顔を交互に見ながら、Dr.ムーアは病室を出てゆくのだった。


翌日はシヌの撮影が夜まで続き、面会時間が過ぎてしまう。
ミニョの様子が気になるが、身内でもない自分では時間外の面会は認められないのだ。

だが・・・
何故かその日一足早く撮影を終えたカイルは、ひそかに病棟を訪れていたのである。
彼の目的はミニョの見舞いではなかったのだ

「ニールセン教授!じゃなかったDr.ムーア!!相談があります」
「アポ無しでくるとはいい根性しているな?相談て何かね?」
物怖じしないカイルの態度にDr.ムーアは苦笑してしまう。

カイルの相談というのは、この病棟にあるVIP用の病室の便宜を図ってもらうことだ。
そこはホテルの宿泊施設ばりにバスルームが完備されていて、付き添い用のベッドも簡易タイプではなく通常タイプなのである。

「全く・・・あの部屋のことはあまり知られてないはずなのにな。」
「フフッオレのリサーチ力すごいでしょ?」
呆れるDr.ムーアに、カイルは自慢げだ。

「だが付き添いは、家族あるいはそれに準ずるものだが」
「あっそれは大丈夫・・・だってシヌは・・・」
カイルの話を聞いたDr.ムーアは、特例として認めてくれることになった。


その夜、撮影終わりのシヌの部屋に行くとすぐにこの話しをシヌに伝えた。

「え?特別室」
「うん・・・今の病室より高いけどさ、広いし日当たりも良いんだよ。入院長くなりそうだし少しでも快適な部屋のほうが良いと思ってさ。
オレ達ちょっとずつ顔売れてきてるんだろ?あの場所は目立つじゃないか?」

部屋の存在自体初耳だが・・・カイルの話も一理ある。
自分のせいでミニョをメディアに晒すような事ことは、絶対に避けなければならないのだ。
だが・・・勝手に決めてよいものかと考え込むシヌ

「実は、もうお願いしちゃったんだよね。他の人に使われたらやだし。」
「おっおい・・カイル」
勇み足カイルの行動を咎めようとするが、どこ吹く風だ。

「あの部屋付き添いの人だったら、いつでも面会できるってさ。今日みたいな日でもね♪」
茶目っ気たっぷりに話すカイルの言葉で、シヌははっとした。
(俺のためか・・・?)
傍若無人なように見えて、実は思慮深い奴かもしれないかもしれない。

「あぁ楽しみだな。楽しみだな?特別室って入るの初めてだし」
「おい、それが目的か?」」
子供のようにはしゃぐカイルに呆れながら、それでもその行為をありがたく思うシヌ。


だがDr.ムーアに便宜を図ってもらうため、咄嗟にでたカイルの言葉をシヌが知るのはしばらく後のことだった。



========================================= 


記憶の無いミニョちゃんと、新しい関係を築こうとするシヌです。


カイル君はシヌの思いを聞かれたので、彼なりに考えたことなのですが・・・
いずれ大砲に絡んでくると思います。シヌ単独だと中々動けませんので

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ROULETTE 2




「ミニョ・・・ミニョ!!」



「何をやってる君・・・患者から離れなさい。急いでるんだ!!」
担架を揺するシヌに対し、救急隊員は厳しく諌める。

自分の行動を反省したシヌは、カイルに頭を冷やすと言っていったんその場を離れた。

残された3人は日頃冷静なシヌがこれほど動揺することを思えば、驚きを隠せない。


「誰だろう知り合いかな?」
「ただの知り合いじゃない無いだろう?どう見たってあれは・・」
「そうよ・・・きっと大切な・・・」
シヌにとって特別な存在には間違いないと誰もが思ったのである。


一方シヌの頭の中は、しばらくの間混乱が続いていた。
本来ならシヌとほぼ入れ違いで帰国していると思っていたミニョが自分の目の前に現れたのだ。
寄りによってあんな傷だらけで・・・
他人の空似だったらどれだけ良かったか・・・一瞬そんな考えが過ぎったほど。
だがあれは間違いなくミニョ。

逃げたのは自分なのに、ミニョに会うと否が応でも思い知らされる。
消したくても消せないこの思いを・・・

どれくらいそうしていたのか・・・

「シヌ・・・」
心配そうなカイルの声が頭上から降ってきた。
自分を探しに来たのだろう。

「悪い・・・」
腰を上げようとしたシヌに、カイルの言葉は続く

「あのさ・・・さっきの女の子だけど、緊急手術になるみたい。でっでもきっと大丈夫だよ!!」
必死で笑顔を作るカイル。
シヌはその明るさに救われる思いで 、ミニョの手術室の前へと急ぐのだった。

終わりを待つ間やけに長く感じられる時間。
長いすに腰掛けると、静かに目を閉じる。

「そういえば・・看護士にあの子の家族のこと聞かれたけど」
「え?あ・・・そうだな」
混乱していてすっかり忘れていたミナムへの連絡。

ここでの通話を躊躇しつつも、ミニョの近くから離れ難いシヌは携帯の通話ボタンを押した。
仕事中なら伝言を入れればよいから。

果たして・・・ミナムへは数回のコールで繋がる。

『あっシヌヒョン・・・久しぶり・・・だね・・・良かった元気そうで』
「ああ・・・悪いな。忙しくて中々連絡できなかったんだ・・それよりもミニョ・・・」
『え?ミニョ?ミニョに会ったのシヌヒョン!!どこで!!』

いいかけたシヌを遮ったミナムの声は、切羽詰っていた。
やはり・・・何か事情がありそうだと気付いたシヌは、ミナムに対して落ち着くように諭すと
今の状況説明を出来るだけ淡々とはじめた。

「・・・・ということで、まだ手術中だ。終わり次第すぐに連絡する」
『そう・・・わかった・・・シヌヒョンが傍にいてくれるなら安心だよ』
電話越しのミナムの大きな息遣い。事情が許せばすぐにでもこっちへ来たいだろうに。
だがミナムが今の仕事を選んでなければ、ミニョと出会えることもなかったのも事実だ。

通話を終えると、隣から感じるカイルの視線。
「撮影終わっていて良かったね・・・きっと心配で仕事にならなかっただろう?」
「・・・かもな・・・めったなことで動じない自身はあるけど」
そう・・・だがそれはミニョが絡まない限定なのだが。

それからしばらくすると、手術中のランプが消えた。

「ドクター!!」
思わず執刀医に駆け寄るシヌ。

「おや・・・君は」
不意に声を掛けられたシヌが不思議におもってその顔を確かめようとすると・・・

「あーー!!ニールセン教授」
先にその姿に気付いたカイルが思わず役名で呼んでしまう。
今回のドラマに特別ゲスト出演した人物だったのである。

マスクを外すと確かに・・・その人ジョセフ・ムーア教授だ。

「失礼しました・・・ところでミニョの容態は?」
深く頭を下げたシヌだが、逸る思いで尋ねる。

「大丈夫だ・・・軽い火傷と・・・足を骨折・・・あれだけの事故にしては不幸中の幸いだよ」
「火傷・・・ですか?それはあの・・・」
火傷と聞いて真っ先に過ぎった思い。
だが、その心配はドクターにお見通しだったらしい。痕は残らないから心配ないといわれた。

「あっそうですか?ありがとうございます」ただそれよりも少し心配なことがある」
安堵するシヌに水をさすようなドクターの話が続く。

「爆風の勢いで、頭を強く打ったようなんだ。CTでは異常は見られないが・・・しばらく注意して欲しい・・・まあ私が言うまでも無いだろうがね」
そういってシヌの肩に手をそっと置くと自分の部屋へと戻って行くのだった。

「良かった・・・」
小さく呟いたシヌは、再びミナムへ連絡。
さっきとは声のトーンが違ったのだろう・・・

『もしもし・・・良かった・・無事に終わって』
「ああ・・・まだ麻酔から醒めてないが…ところで聞きたいことがあるんだ。ミニョのことで」
シヌの言わんとしていることは、瞬時にミナムに理解できたのだろう。

『うん・・・実は』
シヌがこの国へ来てから間もなくして、ミニョから電話があったというのだ。
彼女が所属していた団体の幹部の一人が、運営資金の半分を持ち逃げしたらしい。
予想以上のショックを受けたミニョだが、責任感の強さから活動を全うしようと決心したようだ。

『だけどさ・・・ヒョンが・・・』
いい淀むミナムの言葉を聞いて、シヌに緊張が走った。
元々ミニョがこういう活動をすることに難色を示していたテギョン。

『本音は自分の傍にいて欲しいからだけど、ああいう性格じゃん』
当初予定していた帰国が遅れるということを知って、ミニョを責める言い方をしたのだと。

【世間知らずで事故ばかり起こす奴・・・こうなるのはある意味当然だな。とっとと帰って来い】
その言葉は信頼していたリーダーに裏切られて傷心のミニョに追い討ちを掛けてしまう。

【私達が行くのを待っていてくれる人たちがいるんだよ・・・それが終わるまでは帰らないってテギョンさんに伝えて】
涙ながらのミニョの言葉。
ミナムはそれ以上何も言えず、ただただ無事に帰ってくることを願っていたのだ。

『そんなことでその活動がようやく終わって、帰国するって言う連絡がきたのが3日前だったんだ』
帰国便の時間を聞き、空港へ迎えにいったのはテギョン。
ミニョに対しての発言を彼なりに反省したのだろう・・・仲直りをしたかったのかもしれない。

だが…飛行機が到着しても肝心のミニョは現れなかった。
1時間・・・2時間待っても・・・現れない。
乗り遅れの可能性を考え、乗客名簿を確認してもらったところ

コ・ミニョの名前は確かにあった。
それを知ったテギョンは、ミニョが敢えて自分を避けたと判断する。

【俺に会いたくなかっただろう・・・こんな嫌味な行動をする女だとは思わなかった!!】
そう吐き捨てると、不機嫌MAXの状態で仕事に向かってしまう。
そして宿舎へは戻ってこないという。


『もうさ・・・ジェルミはミニョが帰ってこないっていじけるし、参ってたんだよ』
ジェルミのことだミニョを迎えるパーティーの準備をはりきってやっていたのだろう。

「そうか・・・乗客名簿はともかく・・・この場所にいるのはミニョに間違いない」
はっきりと告げたシヌ。
ミニョが目覚めて話せる状態なら、事情を聞くつもりだったシヌ。

直ちに連絡すると伝えて通話を終えたのだった。

その後ミニョが眠る部屋へと静かに入ってゆくシヌのあとを、何故かカイルも着いてきたが好きにさせておくことにした。
いや・・・今はカイルの存在がシヌにはありがたいのかもしれない

ベッド下のスツールを2つ取り出すと、無言でカイルの前に置く。

「ありがとう・・・あのさ・・・聞いてもいいかな・・・この子はシヌの・・・」
「あ・・・ミニョは・・・俺と・・・」
カイルの問いに答えようとしたシヌだったが、不意に視線を感じてしまう。

(え・・・?)
その視線の先にいたのはミニョ。

「ミニョ・・・目が覚めたのか?」
慌ててスツールから降りて咄嗟にミニョの顔を覗き込むシヌ。

確かにしっかり目が開いている。

「良かった・・・気がついて」
思わず毛布から出ているミニョの手を両手でそっと掴んでしまう。

「あの・・・手」
「ごめんドクター呼ばないとな」
困惑気味のミニョに気付いたシヌは、すぐにナースコールを押した。

10分後ドクターがやってくると、シヌのほうをちらりと見ながら穏やかな表情でミニョに話しかける

「良かったですね・・・気がついて・・・」
「はい・・・あの私・・・どうして?ここに」
事故にあったからおそらく混乱しているに違いない。

そんなミニョにドクターは、状況を説明しつつ韓国語で質問を始めた。

「先ず初めに・・・あなたの名前は?」
「コ・ミニョです」
はっきりと答えたミニョに、シヌはほっと胸をなでおろす。

「次に家族構成です」
「はい・・両親は幼い頃他界しました。双子の兄がいます。」
質問に対してのミニョの受け答えはなんらおかしな点は無い。
だが・・・この次にミニョが発した言葉に耳を疑う

「そうですか?お兄さんと二人きり・・・苦労しましたね?そのお兄さんは今何処に?」
「それが・・・しばらく音沙汰無くて・・・歌手志望の兄だから武者修行にでも言ってるのかもしれません」
ミナムはミニョと3日前に話したといっていたのだ。
(それに・・・武者修行って?)

ミナムはシヌと同じトップアイドルA.N.JELLのメンバーである。
謙遜して答えたつもりなのか・・・

「ミニョ・・・何を言ってるんだ」
思わず声を上げてしまったシヌ。

だがミニョから返ってきたのは到底信じられない言葉だった。
「あの…すみません・・・どなたですか?・・・」

=========================================
事故のショックでミニョちゃんが・・・
頭を打ったことで懸念していたシヌですが、ドクターに対してはっきりと答えるミニョちゃんに安堵していたことでしょう。

だからこそ・・・ミニョちゃんからのwho are youに驚愕です。
ついに手を出してしまった、記憶喪失の話。ある意味最終兵器なのかもしれないのですが・・・

この続きは…どうなるか・・・相変わらずのノープランです。


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ROULETTE 1




運命は再び動き出した。



俺はどちらの道を選ぶべきなのか・・・


シヌに海外ドラマ出演のオファーが舞い込む。
ある大学病院を舞台に、医学を志す若者の群像劇。
3番手だが、異例の大抜擢だった。

だが、約1年に及ぶ撮影。
その間グループとしての活動は休止せざるを得ない。

「なぁ・・・シヌ、これはBIGチャンスだと思うがどうだ・・・?」
シヌの演技の才能に早くから注目していたアン社長は、熱心にこの仕事を進める。

迷いつつもシヌはこの話を受けることにしたのだ。

「えーシヌヒョン。1年も向こうなのぉ。やだよー」
「そんなこというなよ。シヌヒョンが決めたことなんだからオレ達は応援しないとだめだろう」
嘆くジェルミを宥めるのはミナム。
以前は自分の役目だったが、もう任せて大丈夫だろう

「身体に気をつけていって来い。まあお前のことだ心配はないと思うが」
テギョンらしい一言。

(心配ないか・・・お前はよく体調を心配されていたからな)
何気ないテギョンの言葉に、シヌは思い出す。
今でも自分の心に済み続ける一人の女の子のことを


シヌが決心した一番の理由

それは来月海外協力隊としての活動を終えて、再びこの宿舎に戻ってくるであろう
ミニョの存在。

テギョンがプロポーズをするということには、何となく気付いていた。
当人は隠しているつもりだろうが・・・
(本当に隠したら、絶対に気付かれないのに)

だからこそ・・・
自分の目の前で他の男に飛びっきりの笑顔を見せるミニョを見ることに耐えられそうもなかった。

(馬鹿な男じゃなくて・・・臆病な男)

だが、幸いにもこのポーカーフェースはそんな本心を見事に覆ってくれるのだ。

そして・・・シヌは海を渡った。


ドラマの舞台となったクリスフォード大学は、世界のランキングでも常にTOPの常連の名門である。

監督が理事長と旧友ということで、ロケの許可を得ることが出来たらしい。
もちろんメインロケは、塔続きの旧校舎であったが。

初日は、先ず顔合わせからだ。

主演のアレクとリタ。
同年代だがさすがに主演の二人は、オーラが違う。
テギョンが持つそれと良く似ているようだ。

「はぁ・・・オレこれが初めてだから緊張するな」
オーバーなため息をつきながら視線をよこしてきたのは、母が日本人というカイル。

「フルネーム知りたい?もっと仲良くなったら教えてあげるね?シヌ」
初対面だというのに、妙に懐くその姿にジェルミを思い出して笑みがこぼれた。


次に渡されたのは、白衣。
「「「 It looks great on you!」」」
シヌが袖を通すと、3人から声が上がった。
「うんうん、見た目だけなら一番医者っぽいね」
カイルのそれを褒め言葉と受け取っておくことにする。

そしていよいよ撮影開始となった。
緊張していたシヌだが、NGは一番少ない。
反対に多かったのは、言うまでもないだろう。

子供のころから健康には自信があったため、病院には見舞い意外では殆ど来た記憶がないシヌ。
だが演技とはいえ医療の現場に携わることで、病気の人の苦しみや辛さを少しだけ理解できるような気がした。


「シヌ帰ろう!!」
「いちいちくっつくな」
撮影が終わると絡み付いてくるカイル。
スキンシンップ過剰なところもジェルミとよく似ているようだ。

「細かいこと言わないの!!隣同士だろ」
アレクとリタは自宅からここへ通うが、シヌはそうは行かない。

撮影場所の近くに部屋を借りるという選択肢ももちろんあったが、
シヌが選んだのは大学の寮の空室。
普段の性格も含めての役作りのため。

『じゃあオレもそうしようっかな?』
何故かカイルも、スタッフに話をつけてシヌの隣の部屋をGETしたのであった。

台詞の練習につき合わされ、料理が苦手だといい食材を持って押しかけてくるカイル。
一人の時間を過ごすというシヌの思惑は、大きく外れることになったのだ。


そして撮影から1ヶ月が過ぎた頃。
早朝ロケを終えたシヌたちが院内を通りかかると、妙に騒がしい。


「ちょっとオレ探ってくるよ」
カイルが学生を捕まえて話をきいている。

「ヤバイらしいよ。数キロ先の廃工場で原因不明の爆発があって・・・工場自体は無人だったんだけど・・・アジア人の女の子が巻き込まれたって・・・」
「まぁ女の子ですって・・・それは可愛そうだわ」
カイルの話にリタの表情は歪む。

(アジア人の女の子?)
シヌのの脳裏に一瞬過ぎった考え。
だが、すぐに頭を振る。
そんなことはありえない・・・ここにいるはずなど無いのだ。

だが・・・
皮肉にもシヌの考えは的中した

担架に乗せられたその女性の姿は・・・
よもや見間違うはずが無い。

「ミニョ!!」
我を忘れて思わず担架に駆け寄った。

========================================
シヌに白衣を着せたくて、病院を舞台にしたドラマに出演させることにしました。

愛するミニョちゃんとの思いがけない再会。
次からお話は大きく動きます・・・多分。妄想の神降臨求む。(切望


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