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ROULETTE 33
それからほどなくして、部屋の用意が整ったらしくそれぞれの部屋に向かうのだった。
「はぁ…すごいなこんな部屋がいくつのあるなんて、本当に超がつくお嬢様なんだな。
ミニョの病院の特別室といい勝負だ」
「うん…私もびっくり」
部屋に足を踏み入れて開口一番のミナムに、ミニョも同調する
ただ寝るだけの部屋だと思っていたら、予想を大きく裏切るオリティなのである。
普通にお金を払って泊ったとしたら、どれだけ高額なのだろうか?。
「ミニョ…リタさんにすごく可愛がられてるんだな。?」
「うん、綺麗で凛としてそれに優しいし、いろいろと良くしてくれるよ」
ミニョからいろいろと話には聞いていたが、さっきの短い時間でよくわかる。
ミニョも、本当の姉のように慕っているらしい。
「そうか…良かったな…ところでさ?本音のところはオッパじゃなくて別の人とこの部屋に
泊りたかったんじゃないのか?」
「えっいやだ…なっ何のこと?」
この屋敷に到着してから、とっくに気づいていた“二人”の空気感。
ちょっと揺さぶりをかけただけで、素直な妹は堕ちてしまうのだ。
「あのね…シヌオッパに気持ち伝えたの。昔の記憶はなくてもまた好きになったって」
ミニョの告白をシヌは本当に喜んだだろう…引っかかりのあるワードをスルーしてしまうくらいに違いない
夕食時の甲斐甲斐しく世話を焼く様子を目の当たりにしてよくわかった。
ミニョを愛おしそうに見つめるシヌ、そんなシヌの視線に気づくと顔を赤らめながらも
目を合わせるミニョ。
見ているこっちが恥ずかしくなるほどだ。
「ねぇ?シヌオッパに訊いた方がいいのかな?婚約のこと」
「え!?それはまだやめておいた方がいいよ。シヌヒョンだってきっとミニョのことを思って
何も言わなかったんだろうし」
元々だれが流した情報なのかわからないが、すっかりミニョはこのことを事実だと思い込んでいる。
記憶をなくしたミニョが優しいシヌに惹かれていったのは事実だが、大きなきっかけは将来を約束した相手だと聞かされたことが大きいと思う。
「そうだよね…早く思い出したいな…だってシヌオッパと過ごした記憶が全然ないんだもん。」
「過去のことなんて気にすんな!!今のシヌヒョンだけを見つけていればいいんだよっな。二人でこれからたくさん思い出作ってさ。」
ミニョの気持ちを思えばもどかしいのだろうが、本音はこのまま思い出さなければと良いと思うのだ。長い人生の中のわずか2年間だからさほど重要じゃない。
そしてミナムはさりげなく話題を変えることにする。
「ミニョせっかく久々に会えたのにシヌヒョンのことばっかりだとオッパはさびしいなあ。ああ兄貴より彼氏かぁ…うっうっ」
「ごっごめん…オッパだって大切だよ。そうだ!!今夜はちょっと夜更かししておしゃべりしようよ」
ミナムの態度に焦ったミニョが必死でフォロー。
電話では語り切れなかったここ最近の近況を話すと、ミニョは目をキラキラ輝かせている。
話題の中には頻繁にジェルミも登場させた。
ミニョの記憶がないことで、彼なりにかなり気を使ってるのが分かった。
矛盾しているが。ジェルミとの記憶だけ思い出せないか・・と本気で思ったりもしたのだった。
「でさ…ミニョ…ふっ寝ちゃったな。」
幼いころと同じような無邪気な寝顔に笑みがこぼれるミニョ。
両親を亡くしてから苦労してきた妹が、やっと幸せをつかもうとしている。
遠くない未来に本当にシヌと婚約すればいいのだ。
だから、今はこのまま…自分の胸の内に。
その時下した判断が、ミニョそしてシヌをも苦しめることになるとは予想だにしなかったのだった。
いろいろと考え込んでいるせいか、ミナムはなかなか寝付けそうもない。
部屋から階段で続くテラスがあると聞いていたので、気分転換に行ってみることにする。
少し重たいドアを開けて、足を踏み入れると…
「「あっ」」
隣のドアから入ってきた人物と出くわすのだった。
一方別の部屋では――
「ねぇシヌヒョン…この間のアリーナライブさぁ」
ジェルミがグループのことで、熱心にシヌに話しかけている。
はっきり言ってカイルには、ついていけない話題だ。
それを知ってのことなのだろうけど…
するとカイルもつい対抗心を燃やしてしまう。
「シヌ、この前のあのシーンだけど…」
今度はジェルミが話に加われないので、ちょっと悔しそうな表情だ。
そうして内輪ネタで何度も互いを蚊帳の外状態にすることが続いたためか、ついに穏やかなシヌがキレてしまった。
「いい加減にしろ二人とも」
滅多に怒らないシヌだから、静かだけど余計に身体が震える。
それに妙に迫力があるのだ…
(ヤバ…怒ってるよ)
俯きつつジェルミの様子をこっそり盗み見ると、同じようにうなだれていた
「カイル!!ドラムを叩きながら歌うジェルミがカッコ良かったって俺に伝言頼んだよな?
本人が目の前にいるんだから言えよ」
「シヌヒョン!!それホント?こいつが言ったの」
「うっうるさいな…もう…ああ…そそうだよ!!オレ音痴だし、それにドラムって難しん
だろう?すっげえなってさ」
まさかこの場で暴露されるなどとは思いもしないカイルは、ジェルミに対しやけ気味で言い放つ。
「あっありがと…カイルは…ドラマでの演技すごいじゃない?オレそっちは苦手だから
羨ましいよ。アレクヒョンと堂々と渡り合うシーンなんて釘付けでさ。動画サイトに
UPされるのが楽しみなんだけど…」
「そ…そなんだ…ども」
今度はジェルミがこっちを褒めるのだ。
いがみ合う時と違って、妙に照れるというか不思議な気持ちになる。
ジェルミも同じように感じているのかぎごちなさが続いていたが、あるCMモデルの映像にテンションが上がった。
「この子のファンなの?オレ前に一緒に仕事したよ」
「えー!!いいなあ。」
うらやましそうなジェルミを横目に、無言でスマートフォンを取り出した。
話しの途中での行為にジェルミは顔を少し歪めているのは気づいたが、今はこっちが優先なのである。
「ねぇ…ジェルミ?こっちの仕事はいつまで」
「え?うん順調にいけば、あと5日くらいだけど」
「そう…わかった」
再びスマホとにらめっこのカイル。
「もうっ何なんだよぅ。さっきからスマホばかりで」
「ごめん!!あの子とやり取りしてたんだ。連絡先交換してたしね。もしかしたら会えるかもしれないよ。」
ついに不機嫌になったジェルミに、カイルは朗報を持ち出す。
「えっほっほんと?」
「うん…一応オレも同席するけど…あっでも時間とれるかな?」
「とれる!ってか絶対とる!!ありがとうカイルぅ。良い奴だなぁ」
テンションMAXで、ジェルミはカイルに抱き着く。
「ちょっと!何その手のひら返しの態度は?」
「ごめんねーこの通りだよ」
あきれ顔のカイルに、ジェルミが可愛く手を合わせるポーズをする。
(何だよ…憎めないなあ)
シヌが可愛がる気持ちが、わかる気がしたのだった。