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ミナムの一番長い日 後編


「あっヒョン来たんだ?」
ドアを勢い良く開けて入ってきたのはテギョンである。


「何だ?その言い草は?」
「べつにー意味はないよ」
グループでの活動時と違い強気な口調のミナムだが、テギョンは特に気に止めてはいないようだ。


つかつかと部屋の中に入ってくるなり、ミニョの姿を上から下まで品定めをするような視線を送る。
「フン!!流石はプロのテクニックだな、お前でもまともな花嫁に見えるぞ」
「もー!!相変わらず私には厳しいことばかり言うんですね」
出会った頃と変わらないテギョンの物言いに、ミニョは少しばかり頬を膨らませて反論していた。


「褒め言葉なら散々聞き飽きただろうが。このオレ様が敢えて苦言を呈してやるんだありがたいだろう?」
「はいはい・・分かってますよ。テギョンさんいえオッパは素直じゃないって」
今度はくすくす笑い出すミニョ。


その二人の姿にミナムはもちろん、ジェルミも不思議そうに見守っている。
付き合っていた頃でさえテギョンに遠慮をしていたミニョが、こんな風に軽口を交わすのである。


「躓かずに歩けよ、これで転んだら後々までの語り草だからな。まあネタを提供してもらうのも愉快だけど」
「大丈夫ですーローヒールだしドレスも引き摺らない丈ですから」
このドレスの元々の持ち主も、ミニョと同様ちょっぴりドジな人だからほとんど補正無しで着用することが出来たのである。


「そう…か?まああいつが着いているんだから抜かりはないな」
「はいっ」
テギョンの言葉に、今日一番の笑顔で答えるミニョ。


今日の式にあたっては、誰よりもミニョを理解しているシヌがアドバイスをしてくれたのだった。


「じゃ…後で…くれぐれも事故を起こすなよ!!」
そういって、後ろでに手を振りドアを静かに閉めて出て行ったのであった。


暫くして…


「やっぱりオレ…一言言いたい!!」
ジェルミが何か呟くと、あわただしくテギョンの後を追いかけた。


「全く・・・」
仕方がないので、ミナムもその後を追おうとするのだが…


「待って!!オッパ」
ミナムの腕をつかむのは、自分より少し小さいミニョの手。


「どうしたミニョ?」
「あのね…ここに座ってくれる?」
ミナムが優しく問いかけると、ミニョの表情は堅い


(まっまさか…この期に及んでマリッジブルーなんじゃ…)
ミナムが真っ先に浮かんだことだ。


ミニョが進める椅子に腰掛けると、ミニョはドレスの裾を軽く持ちあげてミナムの足元に腰を落とす。


「オッパ…今までずっと私を守ってくれてありがとうございます。私オッパの妹で本当に良かった。」
嫁ぐ妹から兄への思いが語られる。


「ミニョ…オレなんて全然兄貴らしいことできなかったじゃんか?挙句にはオレの身代わりをさせることになってさ…」
無菌室のようなところにいたミニョが、全く別の世界に放り込まれてしまったのだ。
感謝どころか、抗議されても当然なのだ。


「ううん…歌手になるオッパの夢のお手伝いが出来たんだよ…それに皆に…シヌヒョンに会えたし」
シヌの名を出したときは、顔を赤らめている。


「そうか…まっ結果オーライってことだよな」
確かにあのまま修道院にいればいずれはシスターになり、アイドルのシヌとは出会うこともなかっただろう。
身代わりを強要したマ室長にも今となっては、一応感謝かもしれない。調子に乗るから本人の前では言わないが…


そうしてミナムは椅子から降りると、ミニョと同じ目線になった。


「ミニョ…ここからは兄としての言葉だ…」
「はいオッパ」
いきなり真面目モードのミナムに、ミニョも緊張の面持ちになる。


「ミニョは小さい頃から我慢ばかりしてたよな。いつだって回りに遠慮してばかりで。
だけどシヌヒョンには遠慮なんかしちゃダメだ。あの人は、ミニョのちょっとした変化でも気がつくんだから。オレにいえないことでもちゃんと言うんだよ。もしそれでケンカになっても、二人ならすぐに仲直りできるだろう。
まぁ、あんまり見せ付けられるのもちょっと複雑だけどさ。でも、オレの望みはミニョが幸せになってくれることだけだよ」


「オッオッパ…」
ミニョの目にうっすらと涙が滲んでいる


「あーもう、せっかく綺麗にメークしてもらってるってのに、崩れたらどうするんだ。ヌナ!!お願い!!」
奥にいるモディを呼びにゆく。


「じゃあ、後で!!」
そうミニョに告げると、急いでジェルミを探しにゆくのだった。


(あいつ・・・どこにいるんだよ)
控え室に行ったが、姿は見当たらない。


少しあせりながら、ホテルの周りを探す。
すると…チャペル側とホテルの連絡通路の影からその姿を捉えることが出来た。


「ジェルミ…」
呼びかけたが、彼からの返事はない。
ただ、じぃっとテギョンを見つめている…いや睨んでいるといったほうが正しいのか。


「何だ…さっきからオレに言いたいことがあるならハッキリ言えば良いだろう?」
テギョンの問いかけに、ジェルミは思いっきり息を吸い込んで一気に吐き出した。


「じゃあいわせてもらうけどさー!!どうしてミニョとバージンロードを歩くのがヒョンなんだよ!!ミナムなら当然だけど…ずるいよ!!」
ジェルミとしては、到底納得できないことなのだ。


「ほぉ?やっぱりそういうことか?」
ジェルミの考えなど、テギョンにはお見通しのようである。


「お前、いつも言ってるよな?ミニョはミナムの妹でもあるけれどグループ皆の妹だって…」
「いってるけど…それがどうしたんだよ!?」
ムキになってジェルミは言い返す。


「本来一緒に歩くべきミニョの父親は他界している」
「……」


「このグループの長兄は誰だ?」
「あっ…!」
テギョンの言葉にジェルミは、はっと気づく


「一番年上なのは…テギョンヒョン…です」
「分かったか?まっそういうことだ…長男のオレが父親代わりをすることにミナムは不満か?」
いきなり話を振られたミナムは、少しあせりながらもテギョンに視線を移す。


「う…ん…良いか悪いかって言われたら…ハッキリいって不満だよ。だけどミニョがヒョンに頼みたいって思ったんだから、オレから何も言うことはないよ」
自分が異議を唱えても、変わることはないのだ。


「そうか?お前は物分りがいい…そろそろオレも自分の支度があるから戻ってるからな」
そういって足早にその場からテギョンは立ち去ってゆくのだった。


「あーもう口惜しい!!ヒョンのばかぁぁー」
テギョンの姿が見えなると、いきなり大声を上げるジェルミ。


「全く・・・いいかげんに…おい、ジェルミどうしたんだよ?」
叫んだと思ったら、すぐに俯くと来た。
(本当に喜怒哀楽の激しいやつだよな)
そう思って、ジェルミを覗き込もうとしたところ


ポタポタと落ちてくるものに気づいてしまった…それは紛れもなくジェルミの涙


「わ・・わかってるんだ…ヒョンの気持ち…だけど…だけど・・・オレだって…オレだって・・・ぐす」
「こら?こんな日に泣くなよ…ほんという泣きたいのはオレのほうなんだからな」
ミニョに本気で恋してたジェルミの思い…
今は良い友達として接しているけれど、人の気持ちなんて簡単じゃない。


「お願いミナム…先に行っててよ…オレ後でちゃんとといくからさ」
「うん…待ってるからな」
中途半端な慰めの言葉なんて虚しいだけ…だから一言だけ伝えた。


(ミニョのモテ期は、健在だな)
心の中でそんなことを考えていると…ついに真打の登場だ。


「シヌヒョン…すっげぇカッコ良いじゃん…イケメン度増してるね」
白いタキシードが癪に障るほど似合ってるのだ。


「ありがとう…やっぱり仕事で着るのとは違うな」
緊張するといいながらも、ミナムからみたら余裕綽々の姿。


「ミニョを幸せにしてあげて…だけど嫉妬はほどほどにね」
兄として改めて頼む。


「初めの言葉はもちろんそのつもりだけど、もうひとつのほうは一応耳に入れておく」
そんな風にしれっと言ってのける。ミニョへの溺愛は留まることがないのだろう。


「これからもよろしくお願いします…ミナム義兄さん」
シヌ深く頭を下げてきたのには、参った。


「もう!!やめてよシヌヒョン…はずいから」
こんなすごい人が弟なんて、ありえないだろう?


だからこそ、間違いない。大切な妹を任せる相手としてね。


だけど…つくづく思うんだ。


自分の子供は男の子が良いと…
こんな寂しい思いをするのは一度で良いから・・・・


                                              fin
======================================
駆け足気味ですが、これで完結です。
何故かミニョちゃんとシヌの結婚式までにはいたっておりません。
どうかお許しを…


いつか、そのシーンが書ければいいなと考えております。

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ミナムの一番長い日



冬にしては暖かいその日



 


ANJELLの宿舎では、早朝からけたたましい声が響き渡った。


 


「っもーどうしてだよーどうしてテギョンヒョンなんだよー!!」


ソファにおいてあったお気に入りのクッションを投げつけるその人物はジェルミである。


 


「っるせーよ!!それはオレがいう台詞だろうがー!!」


ジェルミに負けず劣らずの大声のミナム。


 


今日は、ミナムのたった一人の妹のミニョの結婚式なのである。


だが、この喜ばしい日にジェルミとミナムは何故か溜息の連発。



 


『ごめんね…オッパ』


『いいんだ…ミニョが決めたことだもんな』


ミニョからこのことを聞かされたときは、はっきり言ってショックだったが


異論を唱えることも出来ず、納得するしかなかったのだ。


ミニョなりに考えた末のことに違いないだろうから…


 


(シヌヒョンはどう思ってるんだろう)


ミニョに聞いたところ、特に変わった様子はないといっていたが…


 


いつまでもこうして二人でいるわけにも行かず、とりあえず朝食をすませることにした。


 


しばらくして…宿舎のチャイムがなる。


 


「おはようございます…ジェルミさん、ミナムさん」


ドアの向こうにいたのは、ジュナ。



 


「あっジュナ!!あれ?一人?モリョンは??」


「ああ…モリョンはソンジェがちょっと…話は車の中で」


二人一緒じゃないことを尋ねられるとジュナは軽く溜息をつきつつ二人を促した。



 


「ねぇねぇもしかしてソンジェも、ショックだったの?ミニョのこと?」


後部座席のジェルミが身を乗り出しながらジュナに話しかけると、ルームミラー越しに頷くジュナの姿が映る。


 


「ソンジェのやつ…親友が一番ミニョさんと近い存在だと思い込んでいて、違うと分かったら大泣きしたようです。しまいには今日の式も出ないって言い出して。


ring bearerだっていうのに」


困り果てたモリョンがミニョに相談したところ、どうやって説得してくれたか分からないがソンジェの機嫌は直ったらしい。


 


「ふぅん…随分切り替え早いんだな…やっぱり子供だからかな?」


かつてミニョに失恋したジェルミは、怪訝な様子だ。


 


「ジュナはさ…あのミニョのこと…」


ミナムがさりげなく尋ねてきたのだ。


 


「そうですね…卒業よろしく…花嫁を略奪しようかなと」


「「ええー!!だめだよそれは!!」」


ジュナの言葉に、ジェルミとミナムの声がみごとにハモッた。


 


「冗談ですよ…ミニョさんのお相手に殺されるのはごめんですからね」


そういってクスクス笑い出すジュナをみて、安堵の声を上げたのだった。


 


 


その後式場につくまでは、互いの近況を話し合う。


ジュナがグループを抜けてしばらく経ったが、友人としての付き合いは続いていた。


いや…寧ろ今のほうが気楽に付き合っているのかもしれない。


 


やがて車は、ホテルに併設されたチャペルへと到着する。


 


「ねぇねぇ、ミニョに会いに行こうよ!!」


「おいっ待てよ!!」


車を降りた途端に駆け出すジェルミの後を追いかけようとするミナムだが、ふと足を止めた。


 


「ごめんジュナ…ありがとう」


「いえいえ…ほら急いで下さい!!ジェルミさんよりも先にミニョさんの花嫁姿をご覧になりたいでしょう?」


相変わらず気が利くジュナに感心しつつ、ミナムも全速力で走ったのだった。


 


そしてミニョのいる控え室の手前でジェルミを追い越す。



「ハァハァ…オレが先にゆく!!」「えー一緒に入ろうよ」


「いーや!!お前は数分後だ」「ケチ!!」


 



入り口での小競り合いが、部屋の中に響いたのだろうか。


 


「ちょっと何やってるのよ、こんな大事な日に揉めるのやめなさい!!」


ドアを開けたモディの呆れた声。


 


「ごめんヌナ…ミニョは支度出来てるの?」


そういって部屋の奥へと進むと…


 


「オッパ…どうかな?」


くるりと振り向いたミニョ。


 


「あ…うん…」わー!!ミニョすっごく綺麗だよー」


言葉が出ないミナムに代わって、賞賛の嵐のジェルミ。



 


「ホント?ジェルミ?」


「うん!!お姫様みたいだよ…ミナムってばミニョがあんまり綺麗だから何もいえないみたいだね」


口惜しいけど図星だ。



 


「オレとおんなじ顔なんだから綺麗なのは当たり前だろう!!」


ミニョの隣に立ち、iphoneでパチリ。


 


「あーずるい!!オレもミニョと撮る!!」


「だめだ!!兄貴の特権だよ」


ミニョの前ではすっかりお約束のやりとりだけど、今日はジェルミに感謝してるんだ。


 


だって…寂しい顔をミニョに見られずに済むからね。


 


小さな頃から苦労ばかりしてきたミニョ。


自分の身代わりで、いきなりアイドルバンドで活動もしいてしまった。


まあ、その代わり兄が嫉妬するくらいにいい男に溺愛されまくってるけどね。


 


「ミニョ…旦那に泣かされたら、いつでもいえよ!!」


ちょっと強気に兄らしい発言をすると・・・


 


「その心配は無用だ!!」


もう一人の主役のお出ましだ


 


=====================================

シヌミニョですが、肝心のシヌが出てきません。
お許しくださいませ…続きは、妄想できればがんばります。 


 


 


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