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「では、改めて自己紹介します!!僕はa.n.jellの魅惑ドラマーのジェルミです。」
つい先刻大泣きしたのがウソのようないつものジェルミだ。
「おいっこの場所でそれをいうのは恥ずかしくないのか?同じくボーカルとキーボード担当のコ・ミナムです。皆さんには妹が大変お世話になっているだけでなく、このような場所に部外者であるにも関わらず妹共々参加させて頂くことに心から感謝いたします。」
ジェルミに軽く突っ込みを入れつつもミニョの兄としてしっかりとした挨拶の後、深く頭を下げる。
「そんな畏まることないわよ。ゲストは多い方が楽しいもの」
「そうそう!!こんな飛び入りなら歓迎するよ。」
それぞれが初対面であろうリタとアレクもそれぞれの自己紹介をすませた。
ほどなくして、外が冷えてきたことと少し早めの夕食の準備が整ったということで屋敷の中へと戻った。ミニョの車椅子を押す役目はここは兄貴に譲ることにする。
「オレも…押してあげたいのにな」
「今はそれはミナムが最優先だろう?」
二人の後姿を見つめながらぽつりと呟くジェルミの肩に、軽く手を乗せるシヌ。
「ミニョの兄貴ってしっかりしてるんだね?それに比べて恥ずかしげもなく自分で魅惑とか言ってる約一名。超寒いんですけど」
例によってジェルミを弄るカイルは、ブルブルと大げさなリアクションをするのだ。
「フン!!自分が言えないからってジェラシーかよ?」
「まさか?オレの場合は言わなくても周りが知ってるもん。照れるよなー」
シヌを挟んで、口撃戦いを繰り広げている。
(やれやれ…頼むから仲良くしてくれよ)
似た者同士の兄弟げんかに見えなくもないとシヌは思うのだ。
だがそんな二人の小競り合いは、ダイニングルームに近づくにしたがっていったん休戦を迎えた。
「「わぁ…何だが美味しそうな匂い」」
見事にハモッったのである。
そしてダイニングルームでは、座席はリタによって決められる。
ミニョの両隣はシヌとミナムだったが、ミナムがその場所をジェルミに譲る。
思いがけないことだが、ジェルミは大喜びだ。
ミナムはカイルの隣へと座る。
ジェルミに対して好戦的なカイルも、ミナムの前にすると態度が違う。
その様子を見たジェルミが、何か言いたげだったのだが。
この日の夕食は、ビュッフェスタイルだという。
堅苦しいコース料理の気分じゃないというリタの言葉を一度はそのまま受け取ったが、
ミニョのことを思ってだということを、後で知った。
「ミニョ?何食べたい?」
「シヌヒョン!!ミニョの分はオレが持ってくる」
ミニョより先に返事をしたジェルミが、トレイにたくさんの料理を乗せてミニョの前に置くと、彼女は小さく声を上げた。
「あ?ごめん嫌いな物あったかな?」
不安げなジェルミの表情に、あわててかぶりを振るミニョ。
「いいえ!!好きなものばかりでちょっとびっくりしちゃって」
「うん!ミニョのことは、食べ物に関してならちょっと…ううん!!かなり自信があるんだぁ」
記憶のないミニョにとってはミナムからの情報だと思ったのかもしれないが、ミナムとして過ごした日々の記憶はジェルミの中でも忘れられないものなのである。
ビュッフェスタイルとは言え、コース料理としても十分通用するクオリティに驚くばかりだった。
飛び入り参加に拘らず、すっかりこの場に溶け込んでいるジェルミ。
「へぇ?ジェルミ君の実家はプランタジネット家の流れをくむ貴族だって?」
「一応そうらしいでけど。オレにはその威厳らしきものは皆無ですよ。あっアレクさん?良かったらジェルミって気軽に呼んでください。」
カリスマ性のあるアレクだが、テギョンのように人を寄せ付けない空気はないので
結構楽しく盛り上がっている。
「わかった。ジェルミそれならオレのこともシヌのように兄貴って呼んでくれるかい?あっもちろんミナム…もね」
「「はいっアレクヒョン」」
ジェルミとミナムの声が綺麗に重なったのだった。
そんなマンネたちの様子を遠巻きにミニョと見ていたら、いきなりリタがやってきて
ミニョを連れて行ってしまった。
ミニョの双子の兄貴のミナムも交えて、話をしたいようだ。
“あら?ミニョって小さいころそうだったの”
“はいっ結構大変でした”
“もうっ言わないでよ。オッパのいじわる”
3人が韓国語で盛り上がっている。
「オレも言葉覚えようかな」
話の輪の中に入れないアレクのつぶやきは少し笑えた。
そんなアレク今の話し相手はカイル。
そしてシヌのそばには自然とジェルミがいたのだった。
「シヌヒョン、見て?ミニョこの前病室であったときよりすごく元気そうだね」
「ああ…ミナムに会えてさらに…だ。ありがとうな」
ジェルミの強引さはたまに閉口するが、今は素直に感謝である。
「ところでさ…オレずっと気になってたとこあるんだ。シヌヒョンてばミニョと…」
ジェルミの言わんとすることはすぐに理解できた。
かつてシヌと同様にミニョに恋心を抱いたジェルミだから隠さずに打ち明けようと決心したが、最初に出たのは謝罪の言葉だった。
「ごめん…」
「え!?何言ってるの?いきなりさー」
シヌの言葉が予想外だったジェルミは、困惑している。
「俺…ミニョが好きなんだ…あの頃から変わらず…こっちに来たら忘れることができるかもしれないって思ったけど…やっぱり無理だった」
「もうっシヌヒョンそんな落ち込んだ顔しないでよ!!オレ責めてるわけじゃないよ。
それにミニョも同じ気持ちなんでしょ?さっきの食事の時の二人の様子でよくわかったもん」
くすくす笑いながら、指摘された先刻のこと。
“ミニョたくさんあるんだから、欲張って口に入れない”
“はいっ”
“ほら?スープ飲むか”
“ありがとうございます”
“ミニョ?しっかり噛まないと消化に悪いよ”
“もうっシヌオッパたら、あんまり子ども扱いしないでください”
“ごめん悪かったよ、怒った”
“怒って…ませんけど…もう”
「隣で聞かされた俺は赤面ものだよ。まあ思い起こせばシヌヒョンはミニョがミナムだったころから一番良く面倒をみてたものね。ミニョもシヌヒョンには自然に甘えていたし。
今の状況は、案外落ち着くべきところに落ち着いたって思えるんだ。シヌオッパなんて甘えちゃってさ。お似合いの二人だよ。ただね?そのヒョンのことなんだけど…オレ…その」
「テギョンがどうかしたのか?言ってみろ」
これまで饒舌に語っていたはずのジェルミは、テギョンの話題になるとやけに歯切れが悪い。
「ごめん…オレミニョのこと話しちゃったんだ。だってあんまり落ち込んでいるし。事故にあって入院してるって。面倒を見ているのはミナムの知り合いだから心配しないようにって。あっ記憶喪失のことは言ってないよ、ヒョンは絶対無茶しそうだし」
「そうか…いろいろ気を使わせて悪いな」
あのテギョンに問い詰められた時を想像すると、最低限の話で切り抜けたのはある意味すごいことだと思う。
ミナムがテギョンに対して憤りを感じている以上、ジェルミを頼るしかないのだから。
ミニョとのことがあってほとんど休みなしの仕事人間だったテギョンは、アン社長の命令で舞台鑑賞の指令が下ったという。社長の苦肉の策なのだろう。
「劇場はどこなんだ?」
「っとね?…」ジェルミ!おれたちそろそろ帰るぞ」
ジェルミの言葉を遮ったのは、ミナムだ。
「えー!!もう少しいいじゃん?」
「だめだ…わがまま言うなよな。明日はロケだしホテルに戻らないとだめだろう」
このままだといつまでも滞在しそうな勢いのジェルミをミナムが制する。
「あら?でもそれならここからのほうが近いわ。良かったら二人泊っていったら?お部屋はあるし」
ロケ場所を知ったリタからの提案がでる
「そんな図々しいことは」わぁ!!良かったねミナム。ほらほらせっかくの好意だから甘えようよ」
恐縮するミナムとは真逆で、すっかりここに泊まる気満々のジェルミ。
あまりのストレートな感情の表現に、ミニョは呆気に取られているようだ。
「ジェルがすっかりその気だし、ミナムもそうしなよ。」
「すみません…何から何まで甘えてしまって」
アレクに促され、ミナムも首を縦に振った。
その後リタによって部屋割りが決められた。
リタとアレクは当然同室。
そしてミニョは積もる話があるということで、ミナムと同室。
残るは…
「はいっオレシヌと一緒」
「何言ってるんだよ!!シヌヒョンはオレと一緒だよ…」
カイルとジェルミのシヌ争奪戦が始まった。
どちらもムキになって譲らない。
「はぁ…」
「あらぁ…シヌったらこっちにもモテモテなのね?それならベッドをもう一つ入れるから、二人ともそんな子供っぽいケンカしちゃだめよ?」
シヌから出るため息に、面白がって傍観していたリタからでた妥協案。
「仕方ないよね…今日だけ我慢してあげるよ」
「それはこっちのセリフだよ!!」
「「フン!!」」
いつかのように互いにそっぽを向いたが、とりあえずはこの場は収まったことに安堵した。
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穏やかな時間が続きます
ジェルミはミニョちゃんと遊びに行ったこともあるし、好みも知っていると思います。
記憶のないミニョちゃんは、きっと不思議に思ったでしょうね?
ジェルミから聞かされるテギョンさんのこと、その存在がシヌの幸せにどんな影響を及ぼすのか?
嵐が来るのは、できるだけ後にしたいのですが…