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ROULETTE 38
「そう言えば、何見てたの?」
マリアンヌがリモコンを操作すると、ドラマの続きがやっていた。
「ああ…これ面白いんだよね?特にこのヒョンス役の彼?リアルでドクターできそうな雰囲気!!。素顔もこんなにいい人なのかな?」
「皆そう言うが、実際は俺より腹黒だぞ?」
シヌを褒めることがなんとなく面白くなくて、うっかり漏らしてしまったテギョン。
「もう!そんなのわからないでしょう」
「それがわかるんだ。長い付き合いだからな…」
「どういうこと?」
「百聞は一見に如かずだ。まあこれを見ろ」
タブレットに映るANELLの姿。
「うそ!!ヒョンスそれに、Mr.ファン?どういうこと!!」
彼女のあまりの驚きは、本当に自分たちのことを知らなかったことを再認識させられた。
「まあ、見ての通りだ。向こうではそれなりに有名だけどな」
「ごめん…私そっち系疎いんだ。それにあまりTV見ないし。ってゆうか持ってないの」
テレビを持っていない彼女は、休みの日に友人のところで録画してもらったものを纏めて視聴するようだ。
ドラマ効果でシヌの名はそれなりに認知されたが、バンドとしてはまだまだだと思っていたが、マリアンヌに関してはそれ以前である。
バッグから取り出したもう一つのタブレット。
「じゃあこれをやる。暇なときに見ればいい。」
「はっ?何言ってるの?気軽にもらえる品物じゃないでしょう」
「オレは、こっちで無名に近いことでプライドが傷ついてるんだ。それで少しは勉強しろ。
命令だぞ!!」
すんなり受け取るはずもないと思っていたから、有無の言わさぬ言葉を言い放つテギョン。
気の強いマリアンヌも圧倒されているように見える。
「わかったわ…でも良いの?これ高いんでしょう?あっでもこんなホテルに泊まってんだからお金持ちかぁ」
「ここは、親父のコネだからオレ個人じゃさすがに難しいぞ」
会って間もないマリアンヌと会話が弾むことが不思議なテギョン。
まるで古くからの友人のような錯覚を覚える。
そんな彼女には小細工などせずストレートに話し手も良いのだろうか?
だが、彼女の立場上受け入れがたいことかもしれない。
テギョンの中で葛藤が続いた。
「何か言いたいことあるの?さっきから独り言がただ漏れだよ?」
マリアンヌに声を掛けられて、はっと気づくテギョン。
こんな失態をさらすなんて普段のテギョンではありえないことだが、
やはりマリアンヌには不思議な力なあるのかもしれない。
「実は頼みがあるんだ。ただ無理なことはわかっているから断っても気に病むことはない」
「話す前からネガティブ思考でどうするの?早く言ってみて?」
深刻なテギョンを姿を揶揄するマリアンヌ。
テギョンはゆっくりと語り始めた。
ボランティア活動をしていて事故に巻き込まれた知人を探していること。
調査会社を使ってこの街の病院を探したが、該当するものがないこと。
そんな中、セキュリティが厳重な大学病院の特別病棟の存在を知ったこと。
仕事でこの街に来たテギョンは、自分でもどうにか調べられないかと焦っていたこと。
その矢先に、病院の前で倒れてしまったこと。
マリアンヌはテギョンの話に真剣に耳を傾けていたが、患者の情報を外部に漏らす行為は
職務規定に違反するのだという。さらに彼女は特別病棟の全部の部屋を把握できるわけではない。職員といえども…まさに不可侵領域に近い…さらに准教授クラスの許可がないと入れないと言われるところだという。
そんな場所になぜミニョが?と後から考えれば疑問がわくのだろうが、その時のテギョンは余裕がない。やはり無理だったという落胆の気持ちが心を占めていたのだから。
「ねえ、聞いていい?知り合いってミニョって人?」
「どうしてそれを!!」
不意に出たマリアンヌの言葉に、テギョンは激しく動揺した。
「やっぱり…意識を失う直前その名前が聞こえたのよ。それから譫言でも何度も呼んでいたわ。“ミニョ…ミアネ”って苦しそうに何度も…ただの知り合いじゃないわね?もしかして恋人?」
射貫くようなマリアンヌン視線に、テギョンは静かに頷いた。
そして身代わり時代以外のミニョとの関係を簡単に話す。
同じグループのメンバーの妹と恋人関係になったこと。
だが自分の我の強い性格が災いして。愛しているのに気持ちを理解せず傷つけるような言動をとってしまったことを。
電話越しのケンカの後、帰国しなかったことで勝手に腹を立てていたが
最近になって事故に巻き込まれた事実を知った。
許してもらえないかもしれないが、あって謝りたい気持ちがあること。
「ちょっと待って?ミニョさんのお兄さんに訊けば済むことでしょう?」
マリアンヌは尤もな疑問を投げかけてきた。
こんな回りくどいやり方をする必要なないのだから。
「ふっそれが出来たら良かったな」
自嘲気味のテギョンは、ミナムに訊けない事情を吐露した。
全ては自業自得であることを。
「そう…つらいね?」
ぽつりと呟いたマリアンヌはそのあとしばらく無言になり、何やら考え込んでいるように見える。
テギョンの頼みごとが負担になったのだろう、もうあきらめかけたその時だった。
「わかった…特別病棟には親しい先輩がいるの。ミニョさんの情報を聞けるかもしれない」
「本当か!?」
切望しかけたテギョンへ一筋の希望の光が見えた。
「でも…条件があるわ。聞いてもらえる?」
「ああ…オレにできることことなら」
ミニョの為なら、犯罪以外ならなんだってできると思ってしまってテギョン。
だが…マリアンヌの条件は思いもかけぬものだった。
テギョンに立ち上がるように促したマリアンヌ。
次の瞬間胸に軽い衝撃を覚得たかと思うと、背中にしっかりと回された手の感触。
「君…何を?」
「条件は…私を抱いてほしいの」
テギョンの頭の中は一瞬真っ白になった。
「悪い冗談で驚かせるな」
「本気よ!!好きなんだもの」
テギョンにしがみ付きながら、思いつめた声のマリアンヌ。
「大学病院の前で偶然助けたときから、あなたに惹かれたの。私を担当に指名してくれた時は本当に嬉しくて…今夜のことだって誘われた時は夢みたいだったわ。ここに来た時は期待した!!」
堰を切ったように語られたその思いを知り、テギョンは動揺してしまう。
出会いは作為的なものだったというのに…
「とにかく、少し落ち着いて」
マリアンヌの身体を押し戻して宥めようとするが、強い力でさらに身体を密着させてくる。
「代わりでいいの…だから」
「…っ!!」
テギョンは心では必死に自制をしていたが、男としての反応は情けないが確かにしている。
(ただの交換条件だ…だから)
そう自分自身に言い聞かせたとき、マリアンヌの身体をそっと抱きしめて
耳元で囁いた。
「わかったいう通りにしよう」
「本当?キャッ下して…重いわよ」
テギョンがお姫様抱っこをしたのでマリアンヌは焦っているようだが、全く重さは感じない。
そうしてマリアンヌをベッドに横たえると、ゆっくりと覆いかぶさる。
背中に手を回して、ワンピースのファスナーを下し下着姿にした。
次の段階に差し掛かった時、マリアンヌから出た“待った”の言葉。
土壇場で気が変わったのだと思っていたが、そうではなかった。
「見られると恥ずかしいから、暗くして」
「良いけど、俺は夜盲症だから限度があるぞ」
マリアンヌの希望を受け、照明の明度を下げてゆくテギョン。
「だめ…もっと」
結局ぎりぎり輪郭がわかる程度まで、下げることになった。
「もう…いいな」
「うん…」
マリアンヌを生まれたままの姿にしたテギョン。
薄闇で顔が良く見えない。
そのため、心の中で錯覚した。
自分が抱いているのは、ミニョなのだと。
初めて身体を重ねた日を思い出す。
苦痛に耐えながら、幸せだと微笑んでくれた次の日の朝。
ぎこちないキス・・・すべてが愛おしかった・・・
だからこそ…目の前の現実に気づくことができなかったのかもしれない
マリアンヌもミニョと同じように、耐えていたことに.
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前々回の流れから、鬼畜MAXのテギョンさんも考えたのですが
騙されたマリアンヌさんが不憫になりすぎて…
せめて彼女から求めたという、例によっての大砲使用でございます。
テギョンさんに惹かれた彼女は、身代わりとしてでも求められることを望みました。