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ROULETTE 35



「わからないって、どういうことだ!!」


電話越しに声を荒げるのは、テギョン。


 


“申し訳ありません…必死で調べているのですか…その”


「言い訳はやめろ!!こっちはそれなりのいや!それ以上の報酬を払っているんだぞ。わかったもういい」


担当者の言葉を遮り、通話を終えたテギョンは怒りに任せて電話を投げつけた。


 


(全く…役立たずものが)


チッと舌打ちをして、ベッドに横たわるテギョン。


 


あの日…


ジェルミから聞いたミニョのケガのこと。


LA入りしてからひそかに探偵を雇い、入院先を見つけてもらおうとしていたのである。


 


ジェルミの番組のロケ場所とホテルは、聞き出していたので


そこから車で1時間以内で行ける入院施設のある病院を、片っ端から調べてもらっていたのだが…


 


正直高を括っていたのかもしれない.


容易に判明すると…


 


休暇は2週間だというのに、何も収穫がないままその半分が過ぎようとしている。


今回特別に長い休みを社長はくれたが、そうあるものではない。


 


探偵を使わずに、いっそ自力でとおもうが


自国でも迷うほどの方向音痴のテギョンが、異国で行動を起こすのは無謀すぎる。


 


(ミニョ…同じ町にいるはずなのに…会えないのか)


落胆しきったテギョン。


 


その時、床に放り投げたスマホが着信を告げた。


 


表示されているのは、先刻の探偵事務所の番号。


そのまま無視するつもりだったが、コール音があまりに続くので


手に取るテギョン。


このタイミングでかけてくるとは余程神経が図太い奴なのかと思うテギョン


ダメ押しでもう一度怒鳴ってやろうと、通話を選んだその時だった


 


「なんの用」情報…あるにはあるんです!!」


テギョンの声にかぶさる担当者の声。


 


「何!!どういうことだ?さっきわからないと言われたばかりなんだぞ」


“それは…上からの指示でそういいました。だけど、私が個人的にお耳に入れたいことがあるんです”


あまりに必死になっている担当者に、とりあえず話だけは聞いてやることにしたのだ。


 


“実はある大学病院の別棟にVIP用の入院施設があるようなんですが、特にセキュリティが厳重のため情報を得ることができいのです。”


“患者として入り込むことも考えましたが、腹痛程度では簡単な診察で終わってしまいました。かといって入院をするようなケガもできませんし”


“どちらにしても緊急を要する場合でないと大学病院は難しいです、しかもそんな無茶をして、空振りの可能性もあるわけで…”


 


担当者の話を聞き終えたテギョンは、さっきまでの剣幕が想像できないほど


穏やかな声色に変わった。


 


「いろいろ、ありがとう」


“あっいえ、とんでもありません”


「さっきは失礼な言い方をして申し訳なかった。その大学病院だが場所を教えてくれないだろうか?俺は地理に疎くてね」


“それなら、私がお連れしますか?”


 


担当者が自ら申し出てくれたので、手間が省けたとテギョンは心の底でほくそ笑むのであった。


 


翌日の早朝、宿泊先のホテルの隣の遊戯施設前で迎えの車を待っていると


やってきたのは、思いのほか若い男。


 


「こんな朝から、申し訳ない…」


「平気です。気にしないでください」


そんなやり取りののちテギョンがお礼だと言って紙幣の入った封筒を男に渡すと、中身を見たとたん、固まってしまう。


 


それは最初に事務所にはあった手付金の3倍の金額だったからに違いない。


 


「こんな…大金…オっオレ…いただくわけにはいきません」


「これはオレの感謝の気持ちだ。君の情報はこの金額に値する有益なものだったから、どうか受け取ってほしい。」


一度は固辞した担当者だが、テギョンがすすめると案外あっさりとポケットに納めたのだった。


 


しばらくすると、目当ての大学病院の正門前の付近へと車を止める。


 


「あっ!!あの一般病棟から出てきた女性は、看護士ですよ?オレが診察中に、院内で見かけましたから、夜勤明けですかね」


視力がよいと自慢しながら、教えてくれる男。


 


行動を起こすなら、病院の関係者の目に留まった方がよい。


男にお礼を告げた後、車から降りた。


 


そしてポケットに入れていた、スナック菓子を頬張りお茶で一気に胃の中に流し込む。


小さいころから自分のアレルギー体質が苦痛で仕方なかったが、


皮肉にも、今は最大限に役立つとは…。


 


リアルタイムで、症状が現れたようだ。


呼吸が次第に乱れ…


立っていることができなくなる。


 


そして…足元から崩れ落ちたとき


 


「大丈夫ですか?しっかりしてください」


遠くなる意識の中、ぼんやりと聞こえたのだった。


 


 


次に目を覚ました時、消毒薬の匂いを感じたテギョン。


 


「ここは?」


「ああ気が付かれたんですね?良かった。ここは大学病院です。貴方は正門のそばで倒れられて…通りかかった私が勤務しているこちらへ運んでもらいました」


テギョンが視線先にいたのはここの看護士で、どうやら第一関門は突破したようだ。


 


「申し訳ありません…ご迷惑をかけて」


起き上がろうとする身体は、医師によって止められた。


 


「意識を失うほどのアレルゲンのものを摂取してしまったようです。成分が完全に身体から抜けるまで2日間ほど入院するのが望ましいと思います」


テギョンの思惑通り、病院に入り込むことには成功した。


そして入院と、順調に事が運ぶ。


 


だが、医師が病室から出て行った後あえてテギョンは浮かない表情を見せたのだ。


 


旅行者なので入院と言われて戸惑っていることを伝えると、看護士の女が必要なものをそろえてくれるという。


 


「そんな見ず知らずの貴女に甘えることは出来ない。それに貴女の仕事に差し障りが」


「ご心配なく…夜勤明けです…それにもう見ず知らずではないです」


テギョンが期待した答えをくれる、看護士の女性。


 


「本当にありがとう…貴方は命の恩人だ」


看護士の目を見つめて感謝の気持ちをつげると、心なしか顔を赤らめているのだ。


 


(きっと、彼女は使える)


=====================================


ミニョちゃん捜索に必死なテギョンさん。


探偵を雇って、金に糸目はつけませんね?


でも、なかなか見つからずにいらだちを隠せません。


そんなテギョンさんに一筋の光が!!


アレルギー体質を最大限に生かして、病院に潜入です。


この後の展開はベタになると思いますが、おつき合いいただけると嬉しいです。


 


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