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ROULETTE 39
一方
翌日一足先にリタの屋敷を出ることになったミナムとジェルミ。
朝食後ミナムは、皆の前で深々と頭を下げた。
「また皆さんにご迷惑をお掛けして申し訳ありませんが、もうしばらく妹のことどうかよろしくお願いします。」
「もうっ、そんな固いこと言わないの!!ミニョを迷惑だなんて思ったことないわよ。」
ミナム言葉にリタは少しばかり不満な様子だ。
「ミナム、リタのいう通りだよ。遠慮しないでおれ達にミニョを預けてくれないかな?」
「ありがとうございます。」
アレクの言葉に、ミナムは少し目を潤ませる。
たった一人の妹と離れて暮らさなけばならない寂しさは、シヌには計り知れない。
「ミナム!!大丈夫だよ!!ガンガン視聴率上げてまたこっちのロケに来るからさ」
こともなげにそんなことを言うジェルミ。
自信満々な様子に苦笑するが、すぐに実現するかもしれないと思う。
その証拠にミニョもジェルミの言葉に、目を輝かせているのだから
「本当に仲良しだよね?」
「ああ…ミナムは知らないかもしれないが記憶を失う前も二人はあんな感じだったかな」
少し離れたところでふたりを見ていたミナムが呟くと、隣にいたシヌも同調する。
「シヌヒョン…さっきみんなの前で言ったけどさ、ミニョのこと本当に頼むね。
しっかり捕まえて何があっても絶対に逃がさないでよ」
「おいおい、兄がそんな事を言っていいのか?俺としてはミナム公認は願ったりだけど
これから先ミニョの記憶が戻ったら…このままではいられないかもしれない」
ミナムに発言に嬉しさを覚えながらも、シヌに付き纏う不安。
今のこの記憶が、取り戻した記憶に書き換えられる可能性は捨てきれないのだ。
「シヌヒョンはミニョのことになると、いつも不安げだよね?オレは先輩としてだけじゃじゃなく別の意味でもヒョンて呼びたいって思ってるんだ。今からミニョに約束取り付けておけば?」
「いくら何でも、それはまだ早すぎだ?何よりもまだミニョは入院中の身体だしな」
思いがけないミナムの言葉に戸惑うシヌ。
長い間の思いがようやく実ったというのに、その先を考えるには少々ハードルが高い。
「そんなの気にすることないのに。オレはいつでも大歓迎だよ」
「ありがとう…その時になって撤回するなよ!!」
ミナムの目がいつになく真剣だったこと。あとから考えれば深い意味があったはずなのに
この時のシヌはそれを推し量ることは出来なかった。
「ミナム!!もう行くよ!!」
「ああっわかった」
ジェルミに促されたミナムはリタが用意した車に乗り込むと、なぜか運転席にはカイルがいた。
カップル二組のイチャコラを見せつけられるのはごめんだと笑いながらハンドルを握る。
昨日まで何かといがみ合っていた二人なのに、この変貌ぶりがミナムには不思議だったので訳を聞くとすぐに納得したのだった。
それからは3人で大いに盛り上がり、ロケ現場まであっという間に到着する。
「それじゃあ、頑張って♪」
「待って!!カイル」
車を走らせようとしたカイルをなぜかジェルミが引き留めた
「この後予定ないならロケを見学していく?」
「え?良いの?シヌのとこでちらっと見たとき面白そうだって思ったから、嬉しいな」
ジェルミの誘いを二つ返事で受けるカイル。
その後番組スタッフがカイルの存在にいち早く気付き、急きょスペシャルゲストとして出編することになるとは予想できなかったのだが…
その後は4人でゲームを楽しむことになる。
施設を出た後はシスター修行の日々だったミニョ。
普通の若者のように遊んだ記憶はほとんどないようだ。
「あっこれやってみたかったんです」
ミニョが目を輝かせたのは、所謂UFOキャッチャー。
目当ては、ぬいぐるみのクマがギターを持っているもの。
「あーもう少しなのに…」
なかなか上手につかめなくて、落すたびに小さなため息を漏らす。
「ミニョったら、そんなに欲しいなら鍵を開けてもらいましょうか?」
「せっかくですが、自分で取りたいんです」
見かねたリタの申し出だが、ミニョは固辞する。
そんなミニョの姿を見て、シヌは隣に立ってアドバイスをすることにした。
「もう少し右…あっ行き過ぎだよ…今だ!!」
確実に取れる位置を見極めたシヌ。
「はいっ!!あっ…取れました…シヌオッパみたいにカッコいいくまさんです」
取り出し口のぬいぐるみを両手でしっかり持つと、子供のように喜ぶ。
「ミニョにそんな風に言ってもらえると嬉しいよ。じゃあオレもちょっと狙ってみようかな」
ミニョに続いてプレイをしたシヌは、華やかなドレスを来たクマを取り出した。
「ほら可愛いだろ?ミニョには負けるけど」
「えっやだ!!シヌオッパたら冗談ばかり」
シヌが本心で言ってるというのに、ミニョは恥ずかしそうに顔を赤らめている。
「「ああバカップル~」」
リタとアレクが呆れて呟いていたことなど、シヌの耳からは簡単に通り抜けだのだった。
「シヌ、あれで勝負しようぜ!!」
アレクが指さしたのは、エアーホッケー。
彼曰くこれまで負けたことがないという。
「俺じゃ力不足かもしれないけど…」
学生の頃は時々やったが、この数年は全くやっていない。
ポイントをアレクに続けて先取されてしまった。
だけど…
「シヌオッパ頑張ってください!!」
ミニョが両手をしっかり握りしめてのエール。
いつの間にか追いつき、逆転を決める。
「わぁ!!すごいすごいシヌオッパ」
「ミニョの声援のおかげだよ…ありがとう」
自分のことのように喜ぶミニョを、そっと抱きしめるシヌ。
「ああ…今のシヌには何をやっても負ける気がするよ」
「仕方ないわ…最強の女神が付いてるんですものね」
苦笑するアレクを、リタが珍しく慰めていたようだった。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎて、就寝時間が近づいてきた。
「ミニョ…今日は私と一緒に寝ましょう!!」
「はいっリタオンニ…」
ガールズトークで盛り上がるに違いない。
シヌはほんの少しの落胆を感じつつ、ミニョの後姿を見送る。
「俺たちも、一緒に寝るか?」
「遠慮するよ…じゃあお休み」
アレクの誘いをやんわりと断ったシヌは、昨夜と同じ部屋へと向かった。
それから数時間が過ぎた真夜中…
“コッコッ”
控えめなノックの音に、浅い眠りのシヌはすぐに目を覚ました。
椅子に掛けてあったシャツを急いで着ると、戸口へと向かう。
「はい…」
ドアを静かに開けると、目の前に立っていたのはミニョ。
「あのっごっごめんなさい…起こしましたよね?」
「いや…ちょっとうとうとしただけだけだよ…入って」
ミニョの手を静かに引き、部屋の中へと誘う。
深夜に来るなんて、何かあったのだろうか?
椅子をすすめた後、飲み物を用意しようとしたシヌは
何故かシャツの裾をミニョに掴まれてしまった。
「私喉が渇いていません…あの…こんなこと言ったらシヌオッパ困るかもしれないけど…私どうしても…聞いてほしくて…」
「ミニョ…どうした?大丈夫落ち着いて?大丈夫なんでも話していいからね」
どこか切羽詰まったミニョの様子を見て、シヌも動揺を覚えたが必死で平静を装う。
「私のこと好きですか?」
「うん?もちろんだよ!!」
どこか不安げな声で尋ねるミニョに、シヌは腰を落して優しくそして力強く答える。
「なら…どうして何もしてくれないんですか?シヌオッパはすごくいつだって優しいけど…でっでもここにキスさえしてくれたことないんですよ」
ミニョが触れたのは唇。
「ミニョ…それは…!!」
正直言ってミニョの言葉は予想にしていなかったことだ。
シヌの思いはずっと変わらなかったが、ミニョから気持ちを聞かれたのは一昨日である。
「シヌオッパは、ドラマでもかっこよくてギターを弾いているときはキラキラ眩しいです。
だから…私の手の届かない人になっちゃうんじゃないかっんん…」
シヌに縋りついた形になったミニョの言葉はそれ以上繋ぐことはなかった。
出会ってからどれほど焦がれただろう…
薄い夜着を通して伝わるミニョの身体。
ゆっくりと唇を話したシヌは、自嘲気味につぶやいた。
「オレがどんな思いでずっとミニョを見てきたかわかるか?一度は諦めたんだよ…
でも、ようやく叶ったんだ。一歩ずつゆっくりと進んでゆきたかったのに…もう手遅れだよ」
椅子からミニョを抱き上げると、ベッドへと運んだ。
そっと横たえると、シャツを脱ぎ捨ててミニョを見下ろす。
心も体もミニョを求めていたシヌだが、最後の理性はギリギリで残っていたので
ミニョに問う。
「いやなら、止めるからね。」
「いやじゃない…好きシヌオッパ」
ミニョのその言葉を合図に、ゆっくりと覆いかぶさった。
するすると滑り落ちる、夜着。
無我夢中だった。
だが…無意識なミニョの身体の反応に複雑な思いが何度も過る。
誰の所以なのか、わかりすぎるほどだったから。
「私の初め…ては…っぱりシヌオッパで幸せです」
「オレも幸せだよ」
ミニョの言葉に、相槌を打つシヌ。
途切れ途切れでよく聞こえなかったが、あえて聞き返すことはなかった。
そして胸の中にミニョをしっかり閉じ込めると、そっとキスを落すのだった。
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テギョンさんに居場所を突き止められたからかは疑問ですが、
シヌとミニョちゃんは結ばれてしまいました。
ミニョちゃんから迫ったのは、きっと事情があるはずです。普段のミニョちゃんではありえないでしょうから。
シヌは当然戸惑ったでしょうが、恋い焦がれたミニョちゃんを前にやっぱり理性をふっとばしてしまいました。
ミニョちゃんの身体の反応に見える、あの方の存在。
もちろんミニョちゃんはそれがシヌのものだと疑いません。
そうして、このずれがまた波紋を呼ぶことになるのかもしれません。