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GOAL


ミナムがアメリカから戻ってきて、ようやくグループに加入となった。


双子だが、こうも性格が違うのかとある意味感心してしまう。


 


あのテギョンを前にしても動じない肝の据わった様。


見ているこっちがヒヤヒヤしたが、案外うまくやれている。


有限実行のタイプなんだろう…


 


ジェルミとは、スキンシップの過剰さに辟易していたが


すっかりなれて、よくじゃれ合っている。


 


そしてシヌはといえば…


ミニョが去ってから、心にぽっかり穴が空いた気持ちだ。


ついつい、そっくりなミナムを見つめてしまう。


 


オフの日の早朝のこと、


いきなり部屋に入ってきたミナムに、紙片を渡される。


『はい…ミニョの電話番号だよ。もう毎日俺の顔を見るたび溜息を疲れるのは勘弁して欲しいからね。』


こっちの気持ちなんて見透かされているのだろう。


 


だけど、いきなり電話なんかしてどう思うだろうか…


そんなことを考えてしまうんだ。


 


『あ~あ!!もうじれったいなぁ…電話借りるよ』


半ば強引にシヌの電話を掴む。


そしてその電話はもう、ミニョへと繋がっている。


ミナムといえば、用は済んだとばかりにドアへと向かう。


振り向きざまに、ファイティンポーズを残して…


 


「はい…コ・ミニョです」


ああミニョの声だ。


女の子として聞く初めての可愛い声。


 


『あ…カン・シヌです』


第一声をどうしようと思ったが、なんの捻りも無く名乗るだけ。


電話の向こうのミニョは、無言だ。


いきなり電話して、迷惑だったんだろうか。


 


『シヌヒョン?本当にシヌヒョンですか?お久しぶりです。すみません挨拶もそこそこで宿舎を出てしまいました。皆さんときちんとお別れできなかったこと心残りだったんです』


ミニョは申し訳なそうに話している。


こっちの都合で振り回されたのはミニョだというのに。


 


「いや…皆わかってるから気にするな。それよりも元気だったか?ごめんないきなり電話して。驚いたか?」


ミナム時代とは違うんだと自分に言い聞かせて言葉を選ぶシヌ。


 


『はいっ、TVでシヌヒョンを見てたのです。その本人から電話が来たんですから…もうびっくりです


ミニョの声は、ミナムの時と違って少し高い。


 


TVって?」


『あっあっ…その昨日の歌番組を…』


何故だか焦るミニョ。


やっぱりテギョンのことが気になっているのか?


シヌの頭の中に蘇る二人の姿。


だけど、今はそれは気にしないことにする。


折角ミナムがくれたチャンスなのだから…


 


「ミニョ…今日この後何か予定入っているか?」


『え?特に…』


こんな簡単な質問でも、シヌの心臓の音はかなり煩い。


幸運なことにミニョも今日はフリーのようだ。


 


思い切って会う約束を取り付ける。


場所はミニョがミナム時代に撮影で使用した高校のグラウンド。


 


ミナムには言えなかったけど、ミニョに言いたい言葉があるんだ。


『あの場所ですか?…はいわかりました』


電話の向こうのミニョは怪訝な声だが、OKを貰う。


 


 


ところが、いざ出かけようとしたら


 


『シヌヒョン!!どこ行くの?』


目ざとく出かけるシヌを見つけたのはジェルミ。


 


「ああ…ちょっとな」


ミニョに会うといえば絶対についてくるであろうジェルミ。


だけど…今日は…二人きり出会いたい。


 


そんなシヌの気持ちを知ってか知らずか、自分もひまだから一緒に来たいと言ってきたのだ。


いよいよ困り果てていると…


 


「ジェルミ…オレもヒマなんだ!!この辺よく知らないから遊びに連れて行ってよ!!」


「えーもう仕方ないなあ。付き合ってやるよ」


助け舟を出してくれるミナム。


ジェルミは頼られて悪い気はせず、すぐに出かける支度を始める


 


それにしてもミナムはずいぶん気が利く奴だ。


 


車を飛ばして、高校へと向かう。


駐車場から全力でグラウンドまで走っても、5分の遅刻だった。


 


自分から呼び出して遅れるなんて、だけどミニョは気を使ってくれるんだ。


わざわざこの場所を選んだ理由…それは


 


思い切り息を吸い込んだシヌの下に、転がってきたのはサッカーボール。


 


(そういえば…撮影のときは1度も決まらなかったな)


スーパーストライカーの設定だったシヌ。


だが、いくら運動神経抜群でも入らないときはあるのだ。


シヌとしては入るまで取り直しをして欲しかったが、結局タイムオーバーでCG処理。


 


だけど…今日は絶対に決めてやるという強い決意が生まれていたのである。


 


そんなシヌにボールの女神が微笑んでくれたのだろうか?


シヌの蹴ったサッカーボールは、大きなカーブを描き吸い込まれるようにゴールポストへと…


 


「すごい!!入った」


背中に聞こえるミニョの興奮した声。


 


シヌも思わずガッツポーズ。


いつも覚めていたと思っていた自分だけど、こんな一面があったことに驚く。


 


このゴールに後押しされて、ミニョの前に立った。


カッコなんかつけなくて良い…ただ素直に自分も気持ちを伝えるために。


 


当たって砕けることも覚悟していた…


だけど…ミニョからでた思いがけない言葉。


それって…そういう意味なのか?


 


「俺のこと好きか?」


結構恥ずかしいけど、思い切って言ってみた。


 


「はいっ大好きです!!」


こっちを真っ直ぐに見て、そう答えてくれたミニョ。


 


可愛くて


愛おしくて


自分だけのものにしたくて


胸の中へと閉じ込めてしまった。


 


「シッシヌヒョン…苦しい…です」


「ごめんな…嬉しくってつい」


ミニョの声にはっとしたシヌ。


考えてみれば場所も場所。


「行こうか?」


ミニョの手をしっかりと握り歩き出す。


 


「どこへ?」


小首を傾けてきいてくるその表情に、シヌの心臓はいくつあっても足りない。


 


「初デートは遊園地でいい…かな?」


「もちろんです!!」


シヌの言葉にミニョの表情は、ぱあっと明るくなる。


 


ずっとミニョと行きたかった場所…ようやく叶うんだね。 



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