忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ROULETTE 6


愛しいミニョの寝顔を見つめていたシヌは、しばらくすると静かに病室をでてゆく


 


自分の部屋に戻っても、ミニョのあの泣き顔が頭に焼き付いて離れないのだ。


 


記憶をなくしていると言うのに、やはりあの歌はミニョにとって特別なものなのか。


ベッドに寝転びながら、静かに目を閉じるといつかの日の光景が瞬時に蘇ってきた。


 


『思いが溢れて仕方がないんです』


『誰にも見られたくない』


テギョンへの思いをどうしたいいかわからずに、苦しんでいたミニョ。


 


『隠してやる』


本当はミニョからその思いを消し去ってしまいたかった。


俺のほうがずっと愛しているのに・・・どうして気付いてくれない・・!!


 


良い兄貴になんてなりたくなかった・・・のに。


 


だけどミニョにこの気持ちをぶつけて苦しめることなど、シヌに出来るはずも無く・・・。


今はミニョの笑顔が見られるだけで良い・・・その思いだけで、彼女の病室へと通う日々。


 


少しづつ打ち解けてきたミニョは、子供のころの話を聞かせてくれるようになった。


ミナムとしてではなく、ミニョ本人のエピソード。


 


「その頃のミニョにも会いたかったな?きっと可愛い女の子だっただろう?


あっだけどミナムのガードが硬くて近づけなかったか・・・」


「もっもう・・・からかわないで下さい・・・カン・シヌさん」


大真面目なシヌの言葉に、ミニョは恥ずかしそうに頬を染める。


 


あの頃のミニョは、こんな表情を見せてくれたことは無い。


記憶をなくしたことで、意識してくれたのだとしたら皮肉なものだ。


 


一方ミニョからも、グループに加入してからのミナムの話を教えて欲しいと頼まれてしまう。


気になるのは当然だろう・・・


 


だが・・・身代わりの話は出来ない。


そこでシヌのとった方法は・・・


 


「ミナムはさ、加入そうそう酔っ払って潔癖症のリーダーに・・・・」


「まっオッパったら・・・そんなことを・・・あの怖そうな方なら怒られたでしょうね」


シヌの言葉を効いて目を丸くするミニョ。


 


「ああ・・・怖いって良くわかるな」


テギョンのことを覚えていないミニョがどうして・・・?


シヌは自分の動揺が悟られないように、できるだけ平静を装う。


 


「だって・・・動画サイトで見ると・・・こんな目をしてます」


そういってつり目を作るミニョ。


 


「プッ・・・すごいそっくりだ」


ミニョの顔真似がつぼに入ったのと、安堵からかシヌはしばらく笑いが止まらない。


 


「シヌさん!!笑いすぎです」


ミニョがふくれっ面で抗議をするが、怒った顔も可愛い。


 


そうしてミニョが寝入るのを待って病室を出てゆくのだが・・・


ふと開きかけの雑誌に目が留まった。


 


 


(ミニョ・・・変わってないな)


雑誌のとあるページの花丸をみて笑みが零れる。


できればその希望を叶えてあげたいが・・・


 


翌日も早朝からの撮影に臨むシヌ。


ドラマの初回O.A.が数日に迫り、いよいよ大詰めである。


 


「良いぞ、シヌ!!言葉はなくても秘めた思いが伝わってくる」


シヌの感情をギリギリまで抑えた演技は、監督や演出家から評価が高い。


 


本国では大人気のアイドルでも、こっちではほぼ無名だったシヌ。


クランクイン当初はそれほど期待はされていなかったのだが、撮影が進むにつれて


周りの空気は変わってきたのをシヌ本人以外は敏感に感じ取っていた。


 


NGを殆ど出さないシヌの撮影は予定よりもかなり早く終わる。


 


(これなら、間に合うかもしれない)


シヌは逸る思いで大学病院の近くにあるスイーツカフェへ向かう。


 


そうミニョが食べたがっているであろう限定のスイーツを買うために。


 


だが・・・


到着と同時に完売の紙が貼られてしまったのだ。


(遅かったか)


 


落胆するが、折角来たので店内に入ろうとしたところ


 


「やりぃ限定スイーツGET!!」


年内から満面の笑みで出てきたのは・・・今日は別の場所の撮影だったカイルだ。


浮かれているのか?シヌに気付かずそのまま通り過ぎてしまう。


 


(限定って言ったよな)


慌ててカイルの後を追ったシヌは、思わずその手を掴んでしまった


 


「待て!!」


「何だよいきなり!!っとシヌ?」


不快そうな声で振り返ったカイルだが、すぐにその表情は変わる。


 


「悪いな、驚かせたか?」


「っもうっ・・・一瞬襲われるんじゃないかとおもってビビッたよー♪」


シヌの姿を捉えると、はぁっと大きく息を吐く。


 


だがシヌはカイルが一瞬見せた構えを見逃さなかった。


フワフワとした見かけとは違い、侮れない奴かもしれない。


 


そんなカイルに、紙袋の中のスイーツを譲ってほしいとシヌは頭を下げた。


当然良い返事はもらえない。


スイーツ好きなカイルがようやく買えたのだ。


 


「頼む!!ミニョに食べさせたいんだ」


再びシヌが頭を下げると・・・カイルは態度を軟化させたようだ。


 


「わかったいいよ」


「ありが」その代わりオレも一緒に行っていいでしょ?」


いたずらな笑みを浮かべるカイル。


何度か着いてきたいと言われていたが、ミニョの体調を思って首を縦に振らなかったシヌ。


 


「全く・・・良いけど・・煩くするなよ」


不本意ながら足元を見られているシヌは、しぶしぶ承諾した。


尤もあの部屋はカイルの働きかけによるものだからむげには出来ないのだが。


 


【コッコッ】


「はぁい」


ノックをすると中からミニョの可愛い声が聞こえてきた。


拍手[34回]

PR
<< ROULETTE 7 879 |  878 |  877 |  876 |  875 |  874 |  873 |  872 |  869 |  871 |  870 |  ROULETTE 5 >>
HOME
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
[09/25 まゆ]
[09/24 ゆぅぺん]
[07/06 まゆ]
[07/05 まるちゃん]
[06/01 まゆ]
最新記事
(05/11)
(02/12)
(02/12)
(12/28)
(12/28)
(12/04)
(11/15)
(11/02)
(11/02)
(10/21)
プロフィール
HN:
まゆ
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
忍者カウンター
忍者アナライズ
フリーエリア
◆ Powered by Ninja Blog ◆ Template by カニコ
忍者ブログ [PR]