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ROULETTE 4



「コ・ミニョさん、今日からお部屋を移りますよ」
診察後に看護士から言われた言葉。
昨日大掛かりなモニターが取り外されたので、自分の状況は快方に向かっているのだとミニョも思った。

おそらく大部屋に移動になるはず。

(どうしよう・・・)
人見知りにミニョにとっては気が重かった。

だが・・・予想に反して連れて来られた場所は

「嘘・・・」
ドアがあくやいやな病室のイメージとは違う空間がミニョの目の前に飛び込んできた。

子供の頃なら、さしずめ御伽噺のプリンセスの部屋。
大人になってからも、シスターとして神に仕える自分には縁の無い場所だったはず。

「あの・・・私無理です・・・こんな高そうなお部屋・・・払えません・・・戻りたいです」
看護士に必死でミニョは訴えた。

「あら?そんな心配無用よ。それとあの部屋はすでに別の患者が入ることになっているから無理ね。」
「そんな・・・」
明るい口調の看護士とは対照的に、悲観的になるミニョ。
だが、今の状態で退院することも出来ないこともわかっている。

(入院費…どうやって払えばいいんだろう)
退院したらこの病院で働かせてもらえないだろうか・・・
その前にミナムに連絡・・・だけど番号が思い出せないのだ。
ミニョの頭の中は益々混乱してしまう。

「あらあら?そんな暗い顔をしたら治るものも治らないわよ。この特別室は誰でも入れるわけじゃないわ。ムーア先生の計らいよ。、めったに無い幸運をありがたく受け取らなきゃ!!」
どうやら看護士もこの部屋に入るのは始めてらしく、ミニョの担当になってよかったと言い残して部屋を出てゆくのだった。


「はぁ・・・行っちゃった」
ベッドの上で大きなため息を漏らすミニョ。

人生の中でこんな広い場所に住んだのはおそらく初めて・・・
加えてダブルサイズのベッド・・・

そしてやけに静かだ・・・
さっきまでいた部屋は、周りの話し声が聞こえてきたというのに・・・

TVを付けてみたが、言葉が良くわからずにすぐに消してしまった。
再び静かになる病室の中で、ミニョはわけも無く心細くなる。

そのときだった・・・

ノックに続いて入ってきたのは・・・

「あ・・・カン・シヌさん・・・」
兄の知り合いだというシヌ。

「良かった。俺の名前ちゃんと覚えてくれたんだね・・・」
名前を呼んだだけなのに、なんだかとても嬉しそうだ。
目覚めたばかりのときは、ちょっと怖かったけど今はそうは思わない。
優しい語り口が、不思議と落ち着くのだ。

「どうしたの?元気が無いね」
シヌの問いにミニョは小さく首を横に振ると、ポツリと呟いた。

「この豪華な部屋は・・・・その・・私には勿体無くて」
「そんなこと無いだろう?こんな可愛い部屋を可愛いミニョが使わないで誰が使うのかな?」
ベッドの傍までやってきて、可愛いを連呼するシヌ。
改めてその顔を見ると・・・びっくりするほど端正な顔立ちであることに気付くのだ。


「かっ可愛いなんてからかわないで下さい」
「心外だな?本当にそう思っているのに・・・信じてもらえないの?」
悲しげな表情のシヌだが、急に話題を変えた。

「そうだ・・・これ古い機種だけど・・・良かったら使って・・・」
ミニョの前に差し出されたのは、携帯電話。

(え?全然古くない)
この数年の記憶が抜け落ちているミニョにとっては、ほぼ最新のモデルが目の前にあって
困惑してしまう。

「折角ですが、大丈夫です。病院の電話かりますから」
高そうな部屋に加えて携帯電話まで・・・今のミニョにとっては贅沢以外の何物でもない。
好意に甘えたほうが良いのかもしれないが・・・・

「そうか・・・」
残念そうなシヌの声。
その表情は悲しげに見えた。

「ミナムが、ミニョの声を聞きたがっているよ。」
その言葉ではっとする。

「時差のこともあるし・・・手元にあったほうがなにかと都合が良いと思うんだ」
「分かりました・・・お借りします」
諭すようなシヌの言葉に、ミニョは頷くしかなかった。

「良かった・・・じゃあ手をだして?」
おずおずと差し出した掌にしっかりと載せられた、電話。

「ありがとうございます・・」
「どういたしまして・・・ミナムの番号1番目に登録していたから。」
休憩時間が終わるといって部屋を出て行こうとしたシヌだが、
不意に足を止めてこちらを振り返った。

「俺の番号・・・その次に入れたから・・俺にも声を聞かせて欲しいな」
そういって部屋を出てゆくシヌだった。


その言葉通り・・・アドレス帳を開くと・・・コ・ミナムに続いてカン・シヌの名前。
(はぁ・・・結局受けとちゃったぁ)
何となくシヌのペースに載せられたような気がしたミニョだが、やはりミナムと話をしたいという気持ちが強かったのである。

早速登録されているその番号をプッシュした。

『rrrrrrrr』
しばらく続くコール音。
(まだ寝てる?)
掛けなおそうかと思っていたその時

『あ・・・シヌヒョン?』
寝ぼけ交じりの声だけど、確かにミナムの声

「あの・・・オッパ?」
恐る恐るミニョが話を始めると、電話口で息を呑む音が聞こえたのだ。

『え?ミニョ!!本当にミニョ!!大丈夫か?オッパのこと分かるんだよな』
どこか必死なミナムの声。

「うん・・・しばらく入院するけど・・・平気だよ」
『良かった・・・ミニョのことはシヌヒョンに教えてもらったけど、心配でたまらなかったんだぞ』
涙汲んでいるミナムの声に、ミニョもつられて涙が出てきた。

思わず会いたいとミナムに漏らすミニョ。
簡単な距離ではないと分かっているが、妹として兄に甘えたかったのかもしれない。

『ごめん・・・今どうしても仕事が立て込んでいて・・・あっそうだミニョオレさ!歌手になったんだ!!』
「え?本当?」
予想もしないミナムの言葉に、思わず聞き返すミニョ。

a.n.Jellという、大人気グループに加入しているのだという。
兄の夢がかなったことがうれしくて仕方がない。
だが、そこでふと気付くのだ。

ミナムの仕事仲間というシヌの存在を・・

「あのオッパ聞きたいの・・・カン・シヌさんて?」
『ああ・・・シヌヒョンのこと覚えてないんだって?…あの人は本当に頼りになるひとで。オレも大好きなヒョンだから、困ったことがあったら相談しろよ』
シヌのことを熱く語るミナム。
育った環境ゆえか他人に対して冷めていたミナムが、こんなにも信頼を寄せているカン・シヌという人物。
蟠りが少しだけなくなる感覚。

話の中でシヌも同じグループということを知り、anチャンネルという動画サイトも教えてもらった。


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