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ROULETTE 3




「え?ミニョ・・・冗談は止せ…この俺のことがわからないって!!」


「あ・・・その・・・私」
至近距離ギリギリまで迫るが、ミニョは困惑している。
いや寧ろ脅えているといったほうが良いだろう。
自分に対してこんな表情をミニョは初めてだった。

「まさか・・・そんな」
聞きたくても、シヌはそれ以上言葉を繋げなかった。
いや・・・言葉にしてしまうのが怖かったのかもしれない。

そんなシヌの思いを知ってか知らずか、ドクターの次の質問はミニョの年齢。
迷わず出たミニョの答えは、実年齢よりも2歳若いものだった。
話を続けようとしたドクターだが、完全に覚醒してなかったミニョは再び眠ってしまった。


「ちょっと良いかな?外で」
「はい・・・ですが」
ドクターに促されるシヌだが、今はこの場を離れがたい。
そんなシヌを見てカイルが、ミニョを見ていると言ってくれたのだ。
他の男なら簡単には承諾しないシヌも、ジェルミと重なるカイルにはどこか安心感を覚えて頼むことにしたのだった。


Dr.ムーアのプライベートルームに連れて来られたシヌは、改めてミニョの現状を聞かされる。

「患者は、この2年程の記憶が抜け落ちているようだ」
先刻のミニョの様子でシヌも気付いたのだが、Dr.ムーアにはっきりと告げられるとやはり辛い。


「記憶は・・・戻りますか?」
不安げに尋ねるシヌに対して、Dr.ムーアの表情は堅い。
何かのきっかけで戻る場合もあれば、そのままの可能性もあるのだ。

「だが無理強いは禁物だ・・・かえって心を閉ざしかねないので」
「そう・・・ですか」
Dr.ムーアの言葉に力なく頷くしかない。
ドラマや小説でよくあるシチュエーションが、まさか自分の身近で起きるとは思いも寄らなかったのだ。
Dr.ムーアからは、ミニョの体調を最優先にするように言い渡される。
もちろんシヌも、それに依存は無い。


部屋を出たシヌは携帯を掴むと、連絡を待ちわびているであろうミナムへ・・・
タップする指が・・・やけに重く感じた。

『もしもし・・・シヌヒョン・・・え?そんな・・・嘘だろう?』
記憶障害のことをにわかに信じられないミナム。

「俺も・・耳を疑ったよ・・・だけど事実なんだ・・・それでもお前のことは分かるから安心しろ」
ミニョの記憶は抜けているのは、ちょうど身代わりとして加入した頃から現在までということも付け加える。

『そう・・・シヌヒョンこんな状況で申し訳ないけど・・・頼みます。」
「もちろんだ・・・落ち着いたらミニョの声も聞かせるからな」
ミナムは電話の向こうのミナム悲痛な声に心を痛めつつも、はっきりと告げたのだった。


通話を終えてミニョの病室に戻ると・・・
「あ・・・お帰り・・・あれからずっと眠っているよ・・・あんまり気持ちよさそうだからオレもつられて・・・ふわぁ・・・」
カイルから漏れる欠伸。

「悪いな・・あとは俺がついてるから、帰っていいぞ」
その言葉に素直に従ったカイルは静かに病室を後にした。


尚も眠る続けるその寝顔は、ミナムだった頃を思い出させ笑みが零れてしまうほど。

あの頃もっと早く行動を起こしていれば・・・

遅すぎた告白・・・

何度後悔したか分からない。

「ミニョ・・・本当に俺のことを忘れたのか?」
愛しいその名を呼びながら、何度も頭を撫でた。

その後面会時間を過ぎてしまい退出を言い渡されたシヌは、後ろ髪を惹かれる思いで病室を後にする。


当然自分の部屋に戻っても、眠れるはずもない。
その時・・・

【シヌ・・・起きてたら開けて】
ノックの音に続いて聞こえてきたカイルの声。

仕方なく開けると・・・
抱えきれないほどのお菓子や飲み物を手に、当たり前のように入ってくる。

「お前・・・夜だって言うのにそれか?」
「だってコンビニで新発売のお菓子見つけてたんだよねー選びきれなくってこんなになったんだよー」
こんな姿もやっぱりジェルミと重なるのだ。

「全く・・・食べるなら一つだけにしとけ」
「わかってるよー残りはシヌのとこに置いておくよ。オレんちだと我慢できないしね」
カイルはチェストの引き出しを開けると、その菓子類を放り込んでしまったのだ。
その行動に半ば呆れつつも、何故か憎めないカイル。

あっという間にスナック菓子を一袋開けて、満足そうである。

「ねぇ・・・あの子のことだけどさ?」
不意にカイルからミニョのことを尋ねられたので、とりあえず同じグループのメンバーの妹であることを伝える。

「それだけじゃないくせに・・・アレクやリタだって今日のシヌの動揺っぷりを見たからオレと同じように思ってるよ」
どうやら誤魔化しはきかないようだ。

それにシヌ自身この思いを誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
身代わりをしていたことを伏せつつ、ミニョとの出会いからこれまでのことを話し始める。

「・・・・ということだ・・・きっぱり振られたというのに・・・今でも忘れられない。情けないだろう?」
「そんなことない。本気だったら簡単に忘れられるわけ無いよ」
自嘲気味に呟くシヌを見て、カイルは必死にフォローしようとしている。

ミニョの恋人の顔を見たいというので、A.N.JELLの写真のテギョンを示したのだが
「ひぇ・・・目力すごい人だね・・・もし睨まれたら俺うごけないかも」
冗談めかしならが、テギョンの写真をしばらく眺めて尚もブツブツと呟いていたのだった。


翌日・・・ミニョの病室を訪ねようとするとやっぱりカイルが着いてくる。
曰くシヌとミニョが会話につまったときのためらしい。
扉の近づくと、聞こえてきたのはDr.ムーアの声。

「やあ・・・気分はどうですか?」
「あ・・・昨日より良いみたいです」
そう答えるとおり、ミニョの声は少し明るい。

「それは良かった・・・実はミニョさんに話しておくことがあるんだよ・・・」
Dr.ムーアはミニョの抜け落ちた記憶について触れていた。

「え・・・?そんな」
「まぁ・・・そのうち思い出すかもしれないし・・・あまり深く考えないようにね」
困惑するミニョに対して、Dr.ムーアはニコニコ笑っている。

《ねぇ・・・入ろうよ》
《もう少し待て・・・》
入り口でのそんなやり取りを続けていると、中からドアが開く
「なんだ・・・気にせず入ってきても良かったのに」
意味ありげにシヌを見るDr.ムーア。

軽く会釈をすると、シヌはミニョにゆっくりと近づいてゆく。
「昨日はごめんね。怖がらせてしまった」
「あ・・・そんな・・・」
消え入りそうな声で返事をしたミニョは俯いたまま。

(はぁ・・仕方ないよな)
今のミニョの症状を思えば、無理も無いのだ。

「俺の名前はカン・シヌ。君の兄さんのミナムとは仕事仲間なんだ。」
「カン・シヌさん?オッパの?」
自己紹介の後、ミナムの名前を挙げるとミニョの緊張は少し薄れたように見えた。

「うん・・・覚えておいてくれる?」
無くした記憶は、新たに覚えてもらえばいい。

「ねぇねぇ・・・シヌ、オレも紹介してよ」
シヌの手を引っ張るカイル。
まあこの場所にいるのに無視することも出来ないから、希望は聞いてやる。

「では、私は失礼する。あとはよろしく」
ミニョとシヌの顔を交互に見ながら、Dr.ムーアは病室を出てゆくのだった。


翌日はシヌの撮影が夜まで続き、面会時間が過ぎてしまう。
ミニョの様子が気になるが、身内でもない自分では時間外の面会は認められないのだ。

だが・・・
何故かその日一足早く撮影を終えたカイルは、ひそかに病棟を訪れていたのである。
彼の目的はミニョの見舞いではなかったのだ

「ニールセン教授!じゃなかったDr.ムーア!!相談があります」
「アポ無しでくるとはいい根性しているな?相談て何かね?」
物怖じしないカイルの態度にDr.ムーアは苦笑してしまう。

カイルの相談というのは、この病棟にあるVIP用の病室の便宜を図ってもらうことだ。
そこはホテルの宿泊施設ばりにバスルームが完備されていて、付き添い用のベッドも簡易タイプではなく通常タイプなのである。

「全く・・・あの部屋のことはあまり知られてないはずなのにな。」
「フフッオレのリサーチ力すごいでしょ?」
呆れるDr.ムーアに、カイルは自慢げだ。

「だが付き添いは、家族あるいはそれに準ずるものだが」
「あっそれは大丈夫・・・だってシヌは・・・」
カイルの話を聞いたDr.ムーアは、特例として認めてくれることになった。


その夜、撮影終わりのシヌの部屋に行くとすぐにこの話しをシヌに伝えた。

「え?特別室」
「うん・・・今の病室より高いけどさ、広いし日当たりも良いんだよ。入院長くなりそうだし少しでも快適な部屋のほうが良いと思ってさ。
オレ達ちょっとずつ顔売れてきてるんだろ?あの場所は目立つじゃないか?」

部屋の存在自体初耳だが・・・カイルの話も一理ある。
自分のせいでミニョをメディアに晒すような事ことは、絶対に避けなければならないのだ。
だが・・・勝手に決めてよいものかと考え込むシヌ

「実は、もうお願いしちゃったんだよね。他の人に使われたらやだし。」
「おっおい・・カイル」
勇み足カイルの行動を咎めようとするが、どこ吹く風だ。

「あの部屋付き添いの人だったら、いつでも面会できるってさ。今日みたいな日でもね♪」
茶目っ気たっぷりに話すカイルの言葉で、シヌははっとした。
(俺のためか・・・?)
傍若無人なように見えて、実は思慮深い奴かもしれないかもしれない。

「あぁ楽しみだな。楽しみだな?特別室って入るの初めてだし」
「おい、それが目的か?」」
子供のようにはしゃぐカイルに呆れながら、それでもその行為をありがたく思うシヌ。


だがDr.ムーアに便宜を図ってもらうため、咄嗟にでたカイルの言葉をシヌが知るのはしばらく後のことだった。



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記憶の無いミニョちゃんと、新しい関係を築こうとするシヌです。


カイル君はシヌの思いを聞かれたので、彼なりに考えたことなのですが・・・
いずれ大砲に絡んでくると思います。シヌ単独だと中々動けませんので

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