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BITTER&SWEET 最終話


「ミニョを呼んでパーティをしようよ」
バレンタインデーを数日に控えた日、いきなりのジェルミの提案


テギョンとのことは当然ジェルミも知っているわけで、ミニョが寂しく思わないようにとの気遣いなのかもしれない。


『そんなに深く考えてないだろう?シヌヒョンじゃあるまいし』
ミナムが笑いながら一蹴する。


ミニョを誘うとき何らかの理由付けをと構えるシヌにとって、ジェルミのストレートな表現はうらやましい。
あの屈託ない明るさはミニョの懐に易々と入っていけるのだろうから。
不自然にならないようにと、精一杯さりげなさを装う自分を思うと苦笑するしかない。
鈍いミニョ・・・だけどどこかで気持ちに気付いてもらえるかもしれないというほのかな期待もあったんだ。


『相手のことを考えすぎるのは、場合によりけりだよ』
恋に関してはどうやらミナムの方が、一枚上手。


それならいっそその特別日に、スイーツに自分の気持ちを託す事にする。


洋酒に漬け込んだ苺・チェリー・ラズベリー・クランベリーを使ってフルーツを焼くことにした。
これなら日持ちがする。


クグロフ型に入れた生地が焼きあがると、早速甘い匂いつられたジェルミがやって来た。


「美味しそうーオレの分は?」
「ちゃんとあるぞ・・・ミナムと二人で分けろ」
パウンド型で先に焼いておいたケーキを渡す。


「「おいしーシヌヒョンパティシエに慣れるんじゃない?」」
お世辞かもしれないが、ほめられるのはやっぱり嬉しい。


「ミニョが言ってたよ、シヌヒョンはなんでも出来るって」
感心したようなミナムの言葉にシヌは複雑な気持ちになる。
見えないところで、努力もしているのだ。
ミニョのことを良く気づくと思われていたのも、初めからミニョをずっと見つめていたから。


今年のバレンタインデーはテギョンが不在のため、当日の仕事はシヌが雑誌の取材が入っているだけ。


「飾りつけはオレがやるよ♪」
大張り切りのジェルミ。
ミニョの迎えはミナムの役目だ。
出来ればシヌがその役目を担いたかったが、今回は兄に譲ることにしたのだった。


部屋のディスプレイが殆ど完了したころ、ミナムがミニョに電話をかける


そして・・・
(あれ?ミニョ電話に出ないな?)
怪訝な表情をしながらコール音が鳴り響く電話を見つめるミナム。


とりあえずはアパートへと向かうことにした。
チャイムを何度か押すが、反応はない。


(どこ行ったんだよ…ミニョの奴)
電話に出ないということは、おいたまま外出しているのだろうか。


仕方ないので、合鍵で入ることにする。
だが・・・鍵を回すとロックがかかってしまった。
(おいおい・・・無用心だな・・・誰かさんが知ったらものすごく心配するぞ)


ため息をつきながら部屋の中へと入ると。


「すげぇ・・・何だチョコレートの匂い!?」
甘い匂いが部屋中に漂っているのだ。


キッチンの上のバットには、卵の殻のような形のチョコが溢れている。
(これ・・・全部失敗作なのかな)
これだけ多いと圧巻である。


テーブルの上に突っ伏しているミニョ。
綺麗な卵型のチョコが2個、エッグスタンドに立ててあるのだ
ミニョはきっと寝ないでこれを作っていたに違いない。
傍には書きかけのカードには、こんなに一生懸命に作ったチョコを渡す相手の名が記されている。


当人は、ミニョからもらえるなんて夢にも思ってないだろう。
(あのポーカーフェースがどう変化するだろうか。見ものだね)


「ミニョ・・・ミニョ」
何度か呼びかけても、完全に夢の中のミニョ。
仕方がないから少し強めに揺する事にした。


「あ・・・オッパ?どうして?」
ゆっくり目を開けたミニョは、寝ぼけ眼である。


「どうしてって・・・パーティがあるからって言っただろう?迎えに来たんだよ」
ミナムの言葉ではっとするミニョ。


「あっチョコ!!」
小さく叫んで自分の目の前のそれを見て、安堵する。


「すごいな・・・作るの大変だっただろう?」
「うん・・・私って不器用だから、たくさん失敗したよ」
労をねぎらうミナムに、ミニョは自嘲気味に呟く。


「だけど、諦めずに完成させたんだからエライエライ」
そういってミナムはミニョの頭をポンポン。


失敗作で作ったホットチョコレートで、ほっと一息。
その時・・・ふと思い出した。


ミニョからのチョコを切望するもう1名の存在を。
去年に続いて今年ももらえないと知ったら、また拗ねるかもしれない。


「とにかく1つ大急ぎで作るぞ!!」
以前番組の企画でやったことが役に立つと思いながら、作業を始めるミナム。


(やれやれ・・・ヤローに渡すためのチョコを作ることになるとわね)
だけど受け取った後のジェルミの反応を思うと、笑みが零れてきたのだった。


「ところでこのクッキーの形変わってるね?なんかの暗号?」
アメリカにいたミナムは英語はそれなりに堪能だが、日本語は会話はともかく読むとなるとなかなか手ごわい。


「あっその・・・良いのこれは」
慌ててそれらをビンにつめるミニョ。


「ふうん・・・まあいいか・・・じゃあ着替えて来いよ待ってるから」
深く追求しないミナムに、ほっと胸をなでおろすミニョ。
兄とはいえ、やっぱり恥ずかしいと思ったのだ。


ミニョをつれて宿舎に戻ると、一足早くシヌが帰ってきている。


「ミニョ・・・よく来たな」
「あ・・・シヌヒョン・・・ご無沙汰してます」
こうして言葉を交わすのはあの日依頼の二人。


「なんだよ・・・そんな他人行儀な挨拶?俺達の仲だろう?」
そういってふわりと撫でられた頭。
これまで何度もされた行為のはずなのに、今日のミニョはやたらと恥ずかしがっているように見えた。


そのままリビングへ行くと・・・
「ミニョー!!久しぶり会いたかったよー」


相変わらずのハイテンションのジェルミが、ミニョに抱きついてきた。
すっかりお約束になったジェルミのハグ。


「私もだよージェルミ」
ミニョも慣れたものである。


そんな二人を見るシヌの表情は、どこか寂しそう。
(まあ・・・あんな切なそうな顔を見るのも今のうちか・・・)
一人ほくそ笑むミナムであった。


食べて飲んではしゃいで、楽しい時間は瞬く間に過ぎてゆく。


パーティも終わりに差し掛かったときだった。
「ミニョ!!今年はチョコもらえるんでしょ?」
ジェルミからの催促。


「うん・・・あまり上手に出来なかったけど」
そういって渡すミニョは、チラッとミナムの顔を見る。
やはり用意しておいて正解だった。


「わーい!!ミニョからのチョコ♪」
大喜びで、ラッピングをはがしてゆくジェルミ。
ハートのチョコレートに大喜びだった。


(殆どオレが作ったんだけどな・・・)
もちろんそんなことは口が裂けてもいえない。


ふと気になったシヌの反応。
だが、淡々と後片付けをしているようだ。


「シヌヒョン・・・手伝います」
「良いよ・・・ミニョはお客さんなんだし」
ミニョの申し出を一度は固辞するシヌだが、二人でやったほうが早く終わるというミニョの言葉に
心なしか嬉しそうだった。


「じゃぁ・・・悪いけど後よろしくね。」
後ろ手でヒラヒラさせながら、部屋へ引き上げるミナム。
もちろんジェルミも一緒だ。
(二人ともがんばってよね~)
心の中でエールを送ったのだった。


ミニョの申告どおり二人でやった後片付けは、思ったより早く終わる。


「助かったよ。ミニョずいぶん手際が良くなったな?」
「エヘヘ・・・あの頃はダメダメでしたから」
シヌの褒め言葉が嬉しいが、少し照れてしまう。


「じゃあ、成長したミニョにNYで買ってきたお茶を入れてやるか!」
「はぃ!!」
シヌノ言葉に即答するミニョ。


「「テラスで!!」」
二人の声が重なると、顔を見合わせてくすり。


ティーポットとカップを載せたトレイを運ぶシヌから、遅れること5分…
ミニョもテラスへとやって来た。


だが…何故かミニョは立ったままである。


「どうした座れよ」
「あっいえ・・・その」
手を後ろに回したまま、ぎこちない動きのミニョ。


すると
「はぁー!!」
大きく息を吐いたミニョが不意に


「シヌヒョン!!すみません手を出してくれますか」
「わかった・・・これで良いか」
シヌの手にそっと乗せられたリボンのついた箱。


「ハッピーバレンタインです!!」
そういってうつむくミニョ。


「ありがとう・・ミニョ・・・実はさ、さっきジェルミのを見てオレにはないのかって思ってたんだ」
例え義理でもミニョからもらえるのは幸せだというと、ミニョはぶんぶんと頭をふった。


「違います・・・そういうんじゃなくて・・・ジェルミのとは違うんです!!」
何故かミニョは怒ってる?
シヌはミニョの態度に戸惑いつつも、中身が気になって
許可を貰い目の前で開けた。
中から出てきたのは、卵形のチョコレートが二つ。


「良かったー割れてないです」
チョコを眺めながら安堵の表情のミニョ。


「作るの大変だっただろう・・・嬉しいよありがとうミニョ」
ジェルミだったらきっと思い切り抱きつけるだろけど・・・


すぐにパチリ。
そして再び箱にしまおうとした。
勿体無くて食べることなんてしばらく出来そうもないから。


そんなシヌ行動に気付いたミニョから出た言葉。
「あの・・・そのチョコの中にまだ入っているものがあるんです・・・だからチョコ食べてください」


「ん?そうか・・・お楽しみがもう一つあったんだな」
そのチョコを手にとって軽く振ると、確かに音がする。


出来るだけその形を崩さないように、そっと歯を立てた。
残りも同様に・・・


そして中から取り出したクッキーをしげしげと並べた時。
一瞬何かと思ってしまう。
だけど・・・よくよくみたら気付いた。


「あの・・・それじゃあ私帰ります」
「待て・・・」
踵を返すミニョの手を強く掴んでそのままミニョを壁際に追い詰めてしまった。


「あの言葉・・・日本語だよな・・・そのままの言葉だと思って良いか」
「はい・・・あの・・・そうです」
シヌが問いかけに、消え入りそうな声で答えたミニョ。


『ス』『キ』
たった二文字の言葉が、これほど幸せな気持ちにしてくれるのだ。


だから、シヌも飾らない言葉ではっきりと伝えた。


「ミニョ・・・好き・・・大好きだ」
ようやく言葉にすることが出来た。


「私もシヌヒョンが・・・好き・・・」
ああ・・これが夢ならさめないでほしい・・・そんなことをぼんやり考えながら
ミニョを思い切り抱きしめた。


チョコレートには魔法の力があるというミニョ。
それならこんな甘い香りがするミニョは、間違いなく魔法使いだろう。


だって一度は諦めた俺の恋を叶えてくれたから。


とびっきりの甘い魔法でね。


===========================================
ということで、この話は完結です。
いつも以上に大砲乱射でしたが、お見逃しを


だけど回収できてないエピがあるので、番外編を書こうと思います。
シヌはスイーツをミニョちゃんに渡してませんでしたので。

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