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Shoot


「ミニョ!!ごめん待ったか」


「シヌヒョンどうしたんですか?いいえ私も少し前に来たばかりです」


少し緊張の面持ちのシヌがミニョを呼び出した場所は、


彼女がミナムとしてPV撮影を行った高校のグラウンドである。


どうしてわざわざここに?


ミニョは少し戸惑っていた。


 


PVは日本のサッカー漫画を題材にしたもので、ミナムとテギョンがクラスメートの設定で、当時テギョンと噂のあったアイドルのユ・ヘイも出演していたもの。


 


ミナムの正体を早い段階で知ったヘイは、何かとミナムに辛く当たる。


演技も経験はOのミナムは、何度もやり直しのテイクがかかった。


そんなミナムを一瞥したヘイは、ミナムを放置してテギョンに送るように強要していたのだ。


不本意ながら従うしかなかったテギョン。


ミナムの秘密は絶対に守らなければならなかったから。


 


そんなとき、たまたま撮影場所を通りかかったシヌ。


思うような演技が出来なくて落ち込むミナムを優しく励ますシヌの姿を見ていた監督が、


インスピレーションを感じて、シヌに出演交渉を始める。


 


頼まれたら断れないシヌは承諾せざるを得なかったが…


そこで問題が生じた。


 


『ずるい!!みんな出るなんて!!オレもでたい!!』


ごり押しで勝ち取ったミナムの友人役。


 


結局A.N.JELL総出演のPVということで、かなりの話題となったのだった。


 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夕暮れ時の誰も居ないグランドで、ひたすらシュートの練習をする侵入部員のミナム。


だが全く入らないことですっかりやる気をなくしてしまったとき、それに気付いた


キャプテンのシヌが声を掛けた。


自分には才能がないと嘆くミナムを見て、一言だけ問うのだ。


 


“ミナム…サッカー好きか?”


“はい”


好きな気持ちさえあればいいというシヌの言葉で吹っ切れたミナムは、再びボールを蹴り続ける。


 


いつか憧れのシヌのようなプレイヤーになることを夢見て。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 


 


「あのな…俺ミニョに伝えたいことがあって…っと」


言いかけたシヌの足元に転がってきたのは、サッカーボール。


 


「その前にこのボールを入れてくるかな?」


軽いドリブルの後、足を止めたシヌ。


 


(え?ここから蹴るの?)


ミニョが驚くのも無理は無い。


ゴールポストからかなり離れているのだ。


 


「あの時は、CG処理したけど今日は決めるから」


自分に言い聞かせるように呟きながら、蹴ったシヌのボールは大きなカーブを描き


ゴールポストへと吸い込まれていった。


 


「すごい入った」


思わず叫ぶミニョ


 


「やった!!」


シヌにしては珍しいガッツポーズ。


 


その後、練習中の部員にお礼を告げると


ミニョの元へと戻ってきた。


 


「ミニョ…俺ずっと思ってたんだ…ミナムが戻ってきたら気持ちを伝えようって。聞いてくれるか?」


ミニョを真っ直ぐ見目つめるシヌの表情は、いつもの優しいそれだけじゃなく


切なさも含んでいるように見える。


 


「はい…」


もちろんミニョは断れるはずも無い。


 


「ミニョ…好きだよ?」


「え…?えーー」


不意打ちのようなシヌの告白に戸惑うミニョ。


 


「ゴメン驚いたか?俺はずっと好きだった。だけど男としてがんばっているミナムを応援したい気持ちもあって、ずっと見守ってきたんだ。そしてようやく本当のミナムが戻ってきたからやっと伝えることが出来る。ミナムにとっては良い兄貴だったかもしれないけどそれはいやなんだ…もちろん友達にもなりたくない。俺はミニョの恋人になりたい!!」真っ直ぐなシヌの告白に戸惑いつつも、ミニョは静かに聞いていた。


 


最初にミニョが心惹かれたのはテギョンだった。


だが、彼はユ・ヘイを選んでしまう。


もちろんそれは、ミナムの秘密を守るためだという事情を後で知ったのだが。


 


初めてのPV撮影。


慣れない環境の中唯一頼れる存在であるはずのテギョンは、ミナムよりヘイを優先する。


 


あの時孤独感にさいなまれたミナムを救ってくれたのは、シヌ。


だからシヌが急遽撮影に参加すると知って、本当に嬉しかったのだ。


 


演技に関してのアドバイスに、宿舎へ戻ってからのティータイム。


いつの間にかシヌと一緒の時間が、かけがえの無いものになっていたのだ。


 


だが、シヌのやさしさはあくまでも同じメンバーとして


そう思い込んでいたミナムは、本来のミニョに戻ったとき…自分とは住む世界が違う人だと…無理やり心に言い聞かせるしかなかった。


 


そんなときのシヌの告白。


自分の思いが許されるなら、伝えたいとミニョは思った。


 


「シヌヒョン…あのPVの台詞をサッカーを私の名前に変えて言って下さいますか?」


恥ずかしそうに顔を赤らめながらのお願い。


シヌは一瞬目を丸くしたが、すぐに気付いてくれたようだ。


「ミニョ…俺のこと好きか?」


「はいっ大好きです!!」


嬉しそうに聞いてくるシヌに、はっきりと答えるミニョ。


 


その瞬間、ミニョの身体は吸い込まれるようにシヌの腕の中へと。


 


ドラマのワンシーンのような二人に、サッカー少年たちは練習も忘れて


ただただ二人の姿に釘付けだった。


 


その後…シヌが入れた場所からシュートが決まると恋が成就するという伝説が広がったという。 


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