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ROULETTE 10


ドラマが回を重ねるにつれて、予想以上の人気が出たのがシヌ演じる医大生だ。


ドラマサイトへの書き込みも、シヌに関することが一番多い。


 


「あ~あ・・・主役食われそうだよ」


「仕方がないわよ…ドラマのシヌって本当にイケメンだし…それに白衣姿はスタッフの中でも評判よ」


冗談めかしてぼやくアレクに対して、追い討ちを掛けるようなリタの言葉。


 


「おい彼女なら・・・少しはフォローしろよ」


「何よ!!本当のことでしょう?男のジェラシーはみっともないわ」


いつの間にか痴話げんかに発展した二人のやり取り。


 


「アハハ!ほらシヌ?あの二人まただよ。まあ見ていて飽きないけどさ」


「え?ああ・・・そうだな」


カイルの言葉に頷きながらも、シヌは上の空だ。


 


理由はわかっている。


ここ5日ほどのロケのため、ミニョに会いに行けなかったのだ。


先日聞いたリハビリのことや体調のこと、気になることはいろいろある。


ミニョは強がりだから、無理をしていないだろうか?


 


せめて声だけでもと思っても、これまで直接会いに行ってたので


いざとなったら躊躇してしまう。


こんなにミニョを求めているのは、自分だけなのかもしれない。


 


そんなことを考えて溜息をつくと、ポケットの中の携帯が振動する。


手にとって思わず落としそうになった。


 


慌ててタップして、第一声は自分でも驚くほど弾んでいたに違いない。


「はい、カンシヌです」


『あの・・・ミニョです・・・すみません忙しいのに電話なんかして』


「そんなことない電話嬉しいよ・・・あっちょっと良いかな場所変えるから」


ミニョの可愛い声が良く聞こえるようにと、周りに声をかけた後少し離れた木陰へと移動した。


 


『あの・・・明日からリハビリが始まるんです・・・報告って言うか・・・その』


「そうか!!いよいよなんだね・・・ミニョはブランクがあるんだから無理は禁物だよ」


ミニョからの電話で舞い上がってしまいそうになるが、何とか平静を保つ。


電話越しに心臓の音が聞こえるのではないだろうかと思うほど。


ミナムとしてではなくミニョとして電話越しで話すのは初めてかもしれない。


報告のためとはいえ、ミニョから電話を貰ったことがこんなに嬉しいなんて。


当然ミナムにも報告しているのだろうけど、何気なく話題をだしてみたら


意外な言葉が返ってきた。


 


『オッパには、まだなんです。その時差とかもあるし・・・』


「そんなこと気にしなくて良いよ。ミニョからの電話を待ってる」


なんと言ってもたった二人の兄と妹なのだ。


 


『わかりました…この電話の後でそうします』


「うん・・・きっと大喜びだ…」


ミナムには申し訳ないと思いつつも、ちょっとした優越感に浸るシヌ。


ミニョと出会って、自分を優先してくれたことなんて初めてなんじゃないのか?


折角のミニョからの電話だから、もっといろいろと話したいと思ったのに・・・


 


どうやらカイルが呼びにきた。


撮影再開のようだ。


 


『じゃ・・・お仕事がんばってください』


「うん・・・ありがとう・・・そうだ明日リハビリ終わった後、また電話してもらっても良いかな?」


こっちに気を使って早々に通話を終えようとするミニョに、さりげなく伝えた。


ただ声が聞きたいだけなのに、リハビリを口実にしている。


ミニョは疑うこともなく承諾してくれた。


 


話を終えた後、


 


「ごめん・・・邪魔した?」


「ああ・・・そうだな」


カイルの言葉に思わず出た本音。


 


「もうひどい言われようー!ゆっくりゆっくり歩いて呼びに来たって言うのにぃ」


ミニョからの電話だとわかっていたから、一応気を使ってくれたようだ。


「ああ・・・悪かった・・・冗談だから」


そう言って頭に軽く手を乗せると、子供みたいだといいつつカイルは嬉しそうに首をすくめた。


 


 


現場に戻ると、さっきまでケンカをした筈のアレクとリタからの追求が始まる。


「わざわざ場所を移動する必要ないだろう?どうせオレ達にはシヌの国の言葉はわからないんだから」


「アレクの言うとおりよ!!それにしてもシヌのあんな甘ったるい声初めて聞いたわ。あのときの女の子よね?帰ったら会わせてくれるでしょ」


ミニョが運ばれてきたときに居合わせた彼らも、ずっと気になっていたようだ。


 


「ああ・・・そうだな・・・じゃあ皆で行こう・・・ミニョも喜ぶ」


一番喜ぶのは、アレクの大ファンだというミニョの担当の看護師だろうけど・・・・



 
翌日の撮影が当初の予定よりかなり早く終わった為、ドラマ出演者とスタッフで


クラブに行くことになってしまう。


リハビリを終えたミニョが電話をくれるはず


もしすぐに電話に出られなかったから、きっとミニョは気を使ってしまうだろう。


 


シヌは胸ポケットの携帯を気にしつつ、周りのスタッフにも失礼のないように振舞う。


アレクと違って無名の新人だったシヌは、注目度も高いのだ。


 


そんななか、ドラマの音楽プロデューサに話しかけられる。


演技について「シヌ「シヌは、自国では大人気バンドのギタリストなんだってな?」


「いえ・・・まだまだ未熟です」


ワールドワイドで活躍していない自分たちにとっては、当然の返答である。


 


そんなときだった。


「シヌー助けて!!王様ゲームで歌うことになってさ・・・オレ破壊的オンチでなんだ。


ずっと隠してきたのに・・・明日から恥ずかしくて生きていけないよ」


「オーバーな奴だな。堂々としてれば案外気付かれないぞ」


必死の形相で、縋ってきたカイルを宥めるシヌ。


だがカイルは子供のころ合唱の練習で、音程を大きく外していたことを指摘されてから


トラウマになってしまい、以来ずっと口パクの日々だったという。


 


「ねっお願い!!シヌが代りに歌ってよ。今日がオレの命日にならないようにさ」


「わかった。わかった。そんなことしなくても良いから」


土下座をしようとするカイルを制し,シヌはステージへと上がる。


 


「僭越ながら、カイルに成り代わって僕が歌います・・・」


歌うだけでは手持ち無沙汰になるという思いから、アコースティックギターの弾き語りで


シヌは歌いだした。


 


これ以上俺に何ができる  


試していない事はもう何にもない 


だけど、彼女は俺に気づきそうもない


彼女だけ真っ直ぐに見てたのに・・・


言い残した言葉はもうない


もし、俺のことを見てくれたら


 


彼女は俺を知らない


俺を見ないし、気にもしてない。


俺の声だって聞こえない。


 


俺を助けてくれない。その気もない。


彼女は俺を求めてない。


僕が彼女を手に入れるためには、伝えなければいけない


「好きだ・・・」


彼女は俺の名前すら知らないんだ。


 


 


オリジナルより少しだけスローアレンジで歌うシヌ。


 


「驚いたわ・・・シヌってシンガーだったの?」


「ああ・・・バンドのギタリストだって聞いてたけど・・・」


シヌの歌声に、驚くリタとアレク。


 


「良かったね・・・シヌはバンドでもラップ担当だからめったに歌わないんだって。


オレのお陰でここにいるみんな得したよ♪」


歌うことから解放されて、カイルは饒舌に語った。


もちろんその場にいたスタッフも聞き入っていて、中には泣き出す女性スタッフもいたのだった。


 


そんななか、同じようにシヌの歌に感銘を受けた音楽プロデューサは、監督となにやら相談を始めた。


そして脚本家も呼び寄せると、急用だといって慌しく店を出ていってしまった。


 
=========================================================
シヌが歌ったのはBONJOVIの初期の名曲です。


HRが苦手な友人がこの曲だけは妙に気に入って、遊びに来るたびに


聞かせて欲しいと言っていたことを思い出します。


日本でも人気でしたが、当のジョンはオリジナルじゃないので


やりたくなかったという話もあった気がしますが・・・



 


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