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ROULETTE 12


「あ・・・ジェルミ帰ったんだ?ミニョって何の話だよ?」
今の電話を聞かれたようだが、ミナムは何食わぬ顔を装うとした。


「ごまかすつもり?じゃあ電話貸してよ・・・確かめるから!!」
ジェルミの言葉に観念したミナムは、電話の相手がミニョであることを認めた。


「ミニョどこにいるの?どうして帰ってこなかったの?どうして今まで隠してたんだよ!!オレずっと心配してたのに・・・」
これまでずっと押さえていたのか、ジェルミの言葉はとまらない。


「ごめん・・・悪かったよ・・・でも隠していたのは訳があるんだ・・・」
目の前のジェルミに事情を話し始めた。


「そんな・・・うそだろう・・・向こうで事故に巻き込まれて…記憶障害なんて・・・オレの事忘れているなんて」
ミナムの告白を聞き、ジェルミは予想以上にショックを受けている。


「うそじゃない・・・事実だ・・・あとさ、あの日ミニョが帰国しなかった理由はわからないからな」
動揺するジェルミに対し、あえて淡々とミナムは語った。
そしてドラマでの大学病院のロケで、偶然居合わせたシヌが傍についていることも。


「え?シヌヒョンが?だってミニョはシヌヒョンのことも覚えてないんでしょう?」
「ああ・・・ミニョが目覚めたときの反応は、かなりショックだったと思うよ。だけど・・・その後の行動はやっぱりシヌヒョンらしくてさ」
記憶の無いミニョには、ミナムのバンド仲間と自己紹介をしたらしい。
無理に思い出させるではない・・・初めから覚えて貰えばということなのだと。
その甲斐あって、記憶がない状況でもミニョは明るくリハビリに励んでいるということも付け加える。


「そうか・・・シヌヒョンがいるなら安心した。きっと甲斐甲斐しく世話をやいているんだろうね?」
「わかるのか?」
表情が落ち着いてきたジェルミに、ミナムは不思議そうに尋ねる。


「うん・・・だってミナムとしてここで過ごしていたとき誰よりも面倒をみていたのは、シヌヒョンだったんだよ。今だから言っちゃうけど…最初加入したばかりの頃・・・ちょっと意地悪しちゃったんだ・・・だけどその時だってシヌヒョンが庇ってた」
大好きなシヌが新入りのミナムに取られたとヤキモチを焼いていたころのことを懐かしそうに語った。
ジェルミから語られる話はミニョのそれよりも詳細で、如何にシヌがミニョを気遣っていたかがわかるエピソードだ。
更に、ジェルミの話は続く


「ミニョに振られたときは、すっごくショックだったな。シヌヒョンならともかくテギョンヒョンを好きだって言われてさ・・・何で?って思うだろう?」
それでも二人の仲がうまく行かなくなったときは、結局サポートしたジェルミである。
大好きなミニョが幸せでいてくれるならという思いだったと。


「そうか・・・隠していて本当に悪かったよ・・・」
「ううん・・・オレこそ怒鳴ってごめんね・・・」
あっという間に仲直りをした二人。
加えてこのことはまだテギョンには伏せて欲しいと伝えると、ジェルミは無言で頷く。
だが次にジェルミの口から出た言葉は、思いかげないものだった。
二人でミニョに会いに行こうと言い出したのだから


「一緒にって・・・お前仕事あるだろう?」
レギュラー番組を持つジェルミは、かなり多忙なことをミナムは知っている。
が、なぜかジェルミは余裕綽々の様子なのだ。


「実は、次回はスペシャルで海外ロケなんだよ」
場所の希望を聞かれたとき、どうせならシヌの近くがいいとスタッフに伝えていたらしい。
そして番組にミナムがゲストとして参加をすれば視聴率もUPするだろうし、テギョンに怪しまれずにすむだろう。
アン社長には事前に話をつけて、ロケの後の数日オフを貰っていることも。


「はぁ・・・ロケの話もっと早くに教えろよ。オレにだって都合ってものがあるのに」
「えー!!だってミナムずっと仕事セーブしていてずるいって思ったからさ。付き合ってもらおうってね」
少々不満な表情にミナムに対し、ジェルミはどこ吹く風だ。


だが・・・ジェルミに話せたことで、ミナムは心が少し軽くなったように思ったのだった。


一方ロケ地のシヌたちといえば―


「じゃあシヌ・・・これを」
監督から渡されたギターを手に取るシヌ。


「はぁ…アレク…お前のお陰で面倒なことになっただろう」
「ごめん…でも決めたのはプロデューサーたちじゃないか?」
あの日シヌの弾き語りに感動した彼らは、急遽シナリオに手を加えたようだ。


「すごいよね。そのためにシヌの役柄を本当はミュージシャンになりたかったのに、家庭の事情で医者を目指したっていうエピソードを入れたんだから」


「ああ・・・なんだか無理やりって感じで一番俺が驚いたよ・・・」
それでもこうして歌うことになったのだから、精一杯の思いをこめて歌い始めた。


彼女が俺のものになったらって・・・夢を見てる


一線を超えて・・・
優しく抱きしめるんだ


実現できればって夢を見てる。


君のためにしてあげたいことが、たくさんあるよ
そのチャンスを俺にくれさえすれば


「カーット!!シヌ流石だな!前に聞いたときより更に気持ちがこもっているじゃないか?」
「いえいえまだまだ未熟ですみません・・・ボーカルは専門じゃないので緊張しました。」
プロデューサーからの賞賛の言葉に淡々と答えるシヌ。


「あら?シヌそれは謙遜というものよ。ねえアレク?」
「ああ・・・確かに・・・妙に来るものがあるな」
リタの言葉に、素直に同調するアレク。


「うん!この前聞いたときも思ったけど、なんだかシヌの歌みたいだ。ドラマOA後の反響すごいだろうね」
「そんなことないよ。さらっと流されて終わりだろう?」
すっかりミュージシャンとしてのシヌに魅了されたカイルが熱く語るが、シヌは苦笑しながら答えた。


「フフッ皆がこんなに褒めているのに・・・ホントにクールなのねシヌって。」
揶揄するリタにも、表情を変えないシヌ。


だがこのシーンの撮影後にようやく戻れると監督から聞かされたときは、
自分では気付かないくらいに、笑顔だったと後々カイルに聞かされることになるのだが・・・


その日の深夜・・・
シヌはアパートに戻るために、車を走らせていた。


次の日がオフになったためゆっくり帰ればよかったのだが、少しでも早くミニョの顔を見たいシヌは、一人だけ先に帰宅を決める。


“えーシヌ先に帰っちゃうのー?じゃあオレも一緒に乗せてって♪”
シヌの返事を聞く前に、カイルはちゃっかりと車に乗り込んでいたのである。


カイルはあわただしく帰宅する理由はないはず、やんわりとシヌが指摘をする


「だって・・・オレがいたらお邪魔虫になるだろう?このロケでアレクってばシヌにジェラ気味だったじゃないか?あっちに戻ってから気持ちよく仕事が出来るように、イチャイチャしておけば良いよ」
恋人同士のアレクとリタのため、気を利かせたらしい。
もちろん彼らは、それとは気付かせないように・・・


見かけよりしっかりしている奴だと改めて思う。
助手席に眠る寝顔は、まだまだ子供だが・・・


それから2時間ほど過ぎたころ、カイルが目を覚ました。


「あースッキリした。」
「まだしばらく着かないから、寝てても良いぞ」
背筋を伸ばし手首を回すカイルを見て、促すシヌ。
だが、カイルから意外な言葉が返ってきた。


「運転代るよ・・・シヌ」
「え?ああ大丈夫だ・・・このまま俺が運転する」
カイルの言葉だけ受けとっておくつもりだった。


「もうっ疲れているのに寝ないで運転して隈でも出来たらどうするのさ、
『シヌさん・・・大丈夫ですか』って心配されちゃうだろう?」
「だから、その物真似全然似てないって・・・」
相変わらずのクオリティの低さに、溜息をつくシヌ。


「運転なら大丈夫だよ?こう見えても運転歴はシヌより長いと思うしね。」
見せられた免許証の取得年齢を見ると、その通りだった。


「わかった。じゃあ頼む」
折角の好意に甘えることにした。


カイルが運転する車に乗るのは初めてだが、その心地よさにシヌはいつの間にか眠ってしまったのだった


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ついにジェルミにばれてしまいました。
ミニョちゃんが帰国しなかったときは、すごガッカリのジェルミです。
その後もテギョンさんの手前もあって、聞きたくても聞けない状況があったのだと思います。


ミナムなミナムで、ミニョちゃんのことを知ったらジェルミはショックを受けるだろうと心配していたのです。


でも、ジェルミだってミナムの時代をささえていた一人ですし、隠されたのは悲しいですよね。
それでも、ミニョちゃんの事情を知ってわかってくれた優しいジェルミです。


シヌが着いていることで、安心したようですね。
ミナムはずっとミニョちゃんの様子が気になったいたから、仕事がらみとはいえようやく会いに行けそうです。
(シヌ好きのジェルミに感謝!!)


一方シヌは、ようやくロケを終えて帰途につけそうです。

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