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ROULETTE 15


「シヌさん・・・もしもし・・」
会話の途中でシヌの声が途切れて驚くミニョだが、程なくシヌは息を切らしてやってきた。
自分の言動でシヌを振り回してしまったのかもしれない。


撮影後の疲れた身体で会いにきてくれたのに…ミニョのとった態度は決して褒められたものじゃなかったのだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コッコッ


「ミニョおひさー・・」
ノックに続いて入ってきたのはカイル。


やたらと欠伸をしているが、寝不足だろうか?
二人のやり取りの内容は全部は聞き取れないが、兄弟のように仲がいい。


(いいなぁ・・・オッパに会いたくなっちゃった)
穏やかな気持ちを二人を見ていたミニョだが、次に病室に入ってきた女性をみて表情は曇った。


(きれいな人・・・誰だろう・・・どこかで見たことが・・・あっ)
ミニョが思い出したと同時にシヌが“リタ”と呼ぶ。


ドラマの共演者だ。
だけど、何故ここにいるんだろう。


「シヌさん・・・あの」
「あっごめんね・・・・突然来て驚いているよね?覚えているかな?前に電話で話しただろうミニョに会いたいっていう」
思い切ってミニョが尋ねると、優しく教えてくれるシヌ。
そういつだってシヌはミニョに優しい。


だが・・・
なんだろう・・・


リタという女性には、少し声を荒げているのだ。
不機嫌そうな顔で話したり、ミニョの前ではあまり見ないシヌの顔。


こうして感情をさらけ出すというのは、心を許しているからではないだろうか?
それにカッコイイシヌと美人のリタは、よくお似合いだ。
二人ともTVの向こうの人で、自分とはすむ世界が違う。


これ以上二人の姿を見ていたくなかったミニョは、一つのうそをついてしまった。


リハビリで疲れたからとそっけない言葉。
だがシヌは疑いもせず、眠るように促してくれる。


自分の身体が疲れていたというのは本当のことだったらしく、目を閉じたミニョはいつのまにか深い眠りについてしまった。
やがて目を覚ましたミニョは、ベッドからゆっくり起き上がる。


「リタさんて本当に綺麗だったな。私なんか比べ物にならないくらい。あっ比べるなんて図々しいかな?」
手鏡に映った自分に話しかけたあと、はぁっと溜息を漏らしてしまう。


「そう?あんなの分厚いメイクで化けてるんだよー」
「え?」
自分のほかには誰もいない筈なのに、何故かカイルがいる。
更にミニョには驚くべきことがあった


「スッピンなら、絶対ミニョのほうが上だよ・・・肌もこんなにきれいだしね♪」
ニカっと笑ってミニョを見るカイル。


「カイルさん・・・あの話せるんですか?」
そう・・・さっきからカイルは流暢な韓国語を話しているのだ。


「うん・・実はそうなんだ・・・だけどナイショだよ・・・シヌだって知らない」
生まれてすぐに韓国に来て、小学校の低学年まで暮らしていたらしい。
伏せているのは何か事情があるのかもしれない。


「何か忘れ物したんですか?」
「うん、これ渡すの忘れてたんだ」
そういって渡された紙袋の中には入っていたのはDVDのトールケース。
中身を見ると、シヌたちが出ているドラマのディスクなのである。


「字幕入れてるよ…もちろんOFFにも出来るけど」
「え・・・あっあのありがとうございます・・」
ドラマの台詞は難しいニュアンスも多く、まだまだ把握できないミニョにとってはカイルの好意は本当に嬉しかった。
だがカイルだって撮影は大変だったはずそのことを伝えると、シヌと違って出演シーンは多くないと笑っている。


「あとね、ミニョに教えてあげたい面白い話あるんだよー」
それは撮影中のシヌのこと。


「本番中は集中してるけど、それ以外は心ここにあらず状態でさ・・・だけど1本の電話でだ~い変身だったんだよ。撮影再開で呼びにいったら、露骨に嫌な顔されだ。ひどいでしょう?」
カイルの話を聞いて、ミニョは勇気を出して掛けた電話の事を思い出していた。


「口には出さないけど、シヌは帰りたくて仕方なかったと思うよ。だからオレだっても今日は遠慮したのに・・リタがさー全く彼氏とケンカしたからってこっちに当たらないでほしいよなー」
爆睡していたのに、無理やりたたき起こされたとぼやくカイル。


(彼氏って・・・じゃシヌさんとは?)
さっきの二人のやり取りで近しい関係だと思い込んだミニョにとって、カイルの言葉は少し意外だった。


「まっ、さっきその彼から電話来たからすぐに仲直りできると思う。全く人騒がせなお嬢様だよーごめんねー色々邪魔しちゃってさー♪」
終始明るい口調のカイルに、ミニョの気持ちは和んできた。


「ありがとうございます・・・カイルさん」
「えー!!お礼言われることしてないよー!!ところで“さん”付けって何か余所余所しいなー」
何故か呼び方に付いて指摘されてしまうが、他になんと呼べば良いというのか。


「じゃぁ・・・カイルくん!!これで決まりね!!」
「カイルくんですか?・・・そんなの」
いきなり言われて困惑するミニョ。


「うん・・・だって同い年だし・・呼んでくれたら良いもの見せてあげる♪シヌの秘蔵映像だよ」
「シヌさんの!?」
自分のスマホをミニョの目のまでチラチラさせるカイル。


「うん・・・これね?クラブでシヌが歌っているのをムービーで撮ったんだ。その場にいた皆聞き惚れちゃったんだよー♪」
シヌの歌に見せられた音楽プロデューサーが急遽ドラマの中で歌うシーンを入れるまで発展したエピソードも教えてくれた。
動画サイトでもシヌの歌は聴いた事がないミニョにとって、是非見たいし聞きたい映像だった。


「あのカイルさん・・・」
ミニョの呼びかけに、カイルは無言で頭を振る。


「カイルくん!!・・・見せてください!!」
「うんまだ言い方が硬いけど、そのうち慣れるからいいかぁ。」
ミニョから携帯を受け取ると、なにやら作業をしている。


「はぃ・・・これでいつでも見れるよ・・じゃオレは帰るからねーこんどこそ爆睡するぞー」
ヒラヒラと後ろ手を振りながらカイルは病室を出てゆくのだった。


早速シヌの動画再生を始めたミニョ。
(シヌさん・・・すごい)
歌が上手なのはもちろんだが、胸の奥がきゅぅっとするのだ。
この動画にも、カイルが訳をつけてくれたことでより歌の世界に入ってゆけたミニョ。
シヌとは違うが、その好意に心から感謝したのだった。


リタの存在が単たる共演者と知って心が軽くなったミニョ。
あんなふうに追い返した形になったシヌの声をやっぱり直接聞きたくなり、気が付いたら携帯に手を伸ばしていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


シヌは思ったより早く病室にやって来たが、息が上がっている。
走ってきたのかもしれない。


来るなりシヌの口から出たのは、さっきミニョが言いかけたことだった。
かなり気にしていると見える。


だがタイミングを逸したミニョにとっては、この質問はハードルが高い。
そこで当たり障りのない話をすることにしたのだ


「あの・・・いつも親切にしていただいいるお礼を言いたかったんです」
「良かった・・・何を言われるのかって実は緊張してたんだけど・・・そんな改まって言うことないよ。こっちが勝手にやってることだからね。ミニョこそ俺がいつも会いに来るのって、負担じゃないかい?」
安堵のダメ息を漏らした後シヌの口から出た言葉に、間違いなく自分に原因があるとミニョは気付いた。
だから必死で自分の気持ちをシヌに訴える。


シヌが会いにきてくれることを、どれだけ楽しみにしているか。
ハードなリハビリもロケから戻ってきたシヌに褒めてほしいと思ってがんばっていたことを。
ミニョらしからぬ大声に圧倒されていたシヌだが、すぐにいつもの優しい表情になる。


「それならこれからもしつこくここに通うからね。覚悟して!!」
ミニョにとって歓迎すべき言葉を言ってくれた。


「私のほうこそ来てくださるのをしつこく待ちますから!!」
そういった後すぐに恥ずかしくなって、手で顔を覆う。


「やっぱり変わってないよな・・・そういうとこ」
「シヌさんの知っている私ってどんな子でしたか?」
初対面として接してくれるシヌだが、ミナムの話によると2年前の出会いらしい。
今のシヌの気持ちを聞くのはちょっと怖いが、過去の話ならと考えたのだ。


「ミニョはね・・・ドジで鈍くて、方向音痴で・・・酒乱だったかなぁ」
「それって・・・良いとこなしです・・・」
シヌから語られる自分の話に落ち込みを隠せないミニョ。
ただ気になることは、これまでお酒に縁はなかったのにいつの間にか飲んでいたのだということだ。


「だけどね・・・いつだって一生懸命で、大変な頼みごともがんばって引き受けていたんだ。
それにミナム同様本当に歌が上手でね。ミニョが歌った賛美歌は感動したな」

「えっオッパは歌手を目指していたから上手でしたけど、私なんて全然ですよ。シヌさんの歌こそ
素敵です!!直接聞いていた皆さんがうらやましい」
思わず言った言葉に、シヌは少々驚いている。


「え?俺の歌?いつ?映像に流れたのあったのかな?」

「あっその・・・ごめんなさい・・・カッカイル君がこっこれを」
ミニョからスマホを受け取ると、動画を見て苦笑するシヌ。
本人はこの動画が気に入らなかったのだろうか・・・


「ごめんなさい・・・どうしてもシヌさんの歌が聞きたくて・・・」
「怒っていないよ・・それより俺は気になっていることがあるんだけど・・カイルくんて何?いつのまにかずいぶん親しそうだね?」


「あの同い年だから呼んで欲しいって言われて」
怒ってないといいつ声のトーンがどこか冷たく聞こえたミニョは、必死で弁明をする。
しまいには動画を見せてもらう交換条件であったことも白状したのだ。


すると深い溜息をついたシヌは、天を仰ぐ。
「そうかミニョが俺に打ち解けてくれるまで時間かかったのに…カイルとはすぐに仲良くなってちょっと妬けた。それに俺のことはずっとシヌさんだろう?カイルに負けたってちょっと落ち込むな」


「ごめんなさい・・だけどカイルくんと約束したので・・怒ってますか?」
そのカイルくん呼びにシヌが反応しているというのに彼女自身気付いていないが、シヌの表情が変わらないことで、怒らせていると感じてしまう。
(シヌさんって呼ぶのが・・・だめなの?じゃあ何て・・・)


「あの・・・シヌさんが迷惑じゃなければ・・・私シヌさんのこと・・これからシシシシシヌオッパって呼んでもいいですか!!!」
言い切った後はぁはぁと息が上がるミニョ。
シヌからは・・・反応がない・・・やっぱりオッパ呼ばわりなんて図々しいのかと思って俯いていたら頭上から声が降ってきた。


「ミニョ・・・目を開けないで顔を上げて?」
「え?・・・あっシヌさん?その顔・・・キャ」だから見るな!!」
一瞬ミニョの目の映ったシヌの顔は、見間違い?赤かったのだ。


だがそれを確かめるための視界は、シヌの手に依って遮られてしまう。
「しばらくの間そのままだからね・・・俺を動揺させたから・・・」


ようやく手が離されたミニョの目の前には、いつものシヌの顔。


「ミニョ・・・もう一度呼んで?」
「?はい、シヌオッパ」
自然に呼べるようにと、何度も言わされてしまう。
それは、検診のため医師と看護士が入ってくるまで続いていた。


医師たちの前では何事もなかったようにスマートに振舞うシヌ
ミニョのことを頼んで、シヌは談話室かどこかで時間を潰しているといって病室を離れた。


だが・・・もし・・・
このときシヌがそのまま留まっていたら・・・
ミニョはその話を聞くことはなかったのだろう・・・


検診後担当医が退室してから、看護士としばし談笑をするミニョ。
何時もの看護士は仮眠中だと聞かされた。


「何か思い出したんですか?ずいぶんよい雰囲気でしたもの・・・やっぱりフィアンセのことは
心のどこかで覚えているものなのですね」
「え?フィアンセって・・・誰が」
看護士の何気ない一言は、ミニョに衝撃を与えた。


「あっ違います・・・今のは言葉のあやで…お願い聞かなかったことにして下さい」
慌てて病室を出てゆく看護士。


「待ってください・・・お願い!!そのお話をちゃんと教えてください」
ミニョの必死な呼びかけ手も、決して振り向くことはなかったのである」


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ミニョちゃんがリタのことを気にしてると気付いたカイルくんは、早速行動します。


自分の秘密をミニョちゃんに漏らしてしまいました。
シヌとは英語で話しているので・・・


シヌに言いかけた話も、やっぱり聞かなかったミニョちゃん。
だけど昔の話を聞くことが出来ました。
シヌはどんな気持ちだったのでしょうね。


カイルくんへのヤキモチからまさかのシヌオッパへとまず1つ目の大砲です。


そして・・・ラストに・・・衝撃の事実が出てきました。
なぜこんなことになったのでしょうか?


実は・・・この話は黒シヌも想定にあったので、ここの設定は早い段階で考えておりました。
白で行くことにしたので、時間がかかりましたが。

拍手[35回]

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