忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ROULETTE 20



逃げるように去っていた看護士。


 


フィアンセという言葉―決して聞き間違いなどではない。


にわかに信じがたい話だが、改めて考えると思い当たることは多い。


 


手術後、病院で目覚めたときのシヌの反応。


あれほど忙しいシヌが、殆ど欠かさず会いに来ること


ましてや今回は、地方ロケが終わった足でだった。


 


そして意味深な兄ミナムの言葉・・・


ミニョ自身、シヌが傍にいると不思議と安心できたこと


 


さっきシヌに聞きたかった質問の答えが、ここにあったのだ。


この病院で目覚めてからのことが、次々と蘇ってきた


 


“ミニョ俺のことがわからないのか!!”


(シヌオッパ…)


 


“君のお兄さんの仕事仲間だよ”


(シヌオッパ…)


 


“カン・シヌ覚えてくれる?”


(シヌオッパ…)


 


“見られたくなければ、俺が隠してやるから”


(シヌオッパ…)


 


“変わってないな…ミニョ”


(シヌオッパ…!!)


 


記憶をなくした自分をどんな思いで見てたのだろう?


もし自分がシヌの立場だったら、耐えられなかったに違いないのだ。


時折見せる翳りのある表情の理由もこれでわかった。


 


「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・シヌオッパ・・・」


あんなに優しいシヌを忘れてしまったこと


ひたすら謝罪の言葉を繰り返すミニョ。


シーツを握り締めた手の甲に、ポタポタと落ちる涙の滴。


泣いたって仕方がないとわかっている。


もし涙が枯れるくらい泣いて思い出せるならどんなにか良いだろう?


 


その時、ノックもそこそこに病室に入ってきたのはいつもの看護士。


その表情はかなり焦っていた。


 


そしてミニョのベッドの傍まで来ると、いきなり信じられない行動をとった。


「申し訳ありません!!ついさっき聞きました。うちのものが軽率な発言をしてしまったことを」


そういって土下座をしているのだ。


 


「あっあの・・・頭を上げてください・・・貴女は何も悪くないじゃないですか!!」


慌ててその行為を止めるミニョだが、看護士は指導係である自分の責任だといって聞かない。


 


「聞いたときは、びっくりしました。今でも信じられません。だけど少し感謝してるんです。私の疑問が解けたのだ」


「え?どういうことですか?」


ミニョの言葉を受けてゆっくりと頭を上げる看護士は、意外そうな表情をしている。


 


そしてミニョは、うまく伝わらないと思いながらもいまの自分の気持ちを看護士へと伝えた。


「……ということなんです。彼が何故あんなに私に優しいのか不思議で仕方なかったので」


その言葉で看護士の表情は少しは和らいだように見えたため、改めて看護士が知っていることを教えてくれるようミニョは頼んだ。


 


尤も当の看護士にしても、詳しいことは知らないようだ。


この病棟に時間外でも自由にでいる出来るのは、家族あるいはそれに殉ずる者だと言う事。


担当医から、シヌがミニョの婚約者だと聞かされたこと。


 


ミニョを思うあまりシヌが強引な行為に走ることを懸念して、なるべく気にかけていたこと。ただその心配は全く杞憂であるとすぐに気付いたという。


そして記憶をなくしているのに、シヌに打ち解けてゆくミニョの姿をみて安心してたこと。


 


「でも…私思い出せなくて…申し訳ないんです」


「無理に思いなすんじゃなくて…ねえ?前世の恋人と生まれ変わって再会したと思えば良いでしょう?彼に前世の記憶があってあなたにはなかった。だけど彼にひかれた。同じ相手を2度好きになるなんて、なんだか得した気持ちにならないかしら?」


ミニョの葛藤に対し看護士は考え方を少し変えてみるのだという。


だがそれよりも、ミニョは看護士の言葉で目をまん丸に見開いてしまった。


 


「好きって…私が?シヌオッパを好きなんですか?」


「え?疑問系?ってまさか、気付いていなかったの?これまでずっと恥ずかしがっているからって思ってたのに。そうよ。きっとあなた以外の世界中の人が気付くと思うわ」


断言しようとした看護士は、すぐ前言撤回する。


 


「あっもう一人…肝心の彼もあなたの気持ちに気付いてないみたいね。まあ彼の場合は慎重になっているからある意味仕方がないけど…今朝だって二人のやり取りは恋人にしかみえないわ…だから言い訳になるけど…」


さっきの看護士の勇み足のような発言に繋がったのだと。


 


「好き…好き…」


呪文のようにその言葉を唱えだすミニョ。


混乱する頭で、必死に自分の気持ちを整理しようとする。


そんなミニョに向かって、看護士の言葉は続く。


深く考えずに、今ミニョが傍にいて欲しい人を思い浮かべるのだと。


 


答えは、すぐに出た。


異国で兄のミナムにも会えない日々の中、こうして心穏やかにすごせていたのは


シヌが傍にいてくれたから。


だからリタの存在に心を痛めてしまった…所謂嫉妬という感情だったことも。


 


気持ちを自覚できたら、一気に心が軽くなった。


昔のことはわからないが、今のミニョは確かにシヌを好きなのだと


 


ミニョのその様子を見て、看護士もまた安心したようだ。


この後戻ってきたシヌに、すぐにでも気持ちを伝えるように進められる。


 


だが…


泣いたばかりのこの顔で言いたくないのだ。


 


できれば…


きちんとお洒落をしてメイクもして…


今より少しでも可愛くなった自分で…この溢れる思いを伝えたいって思うのは


当然のことだったのかもしれない。


 


シヌ本人が全く知らない“フィアンセ”という言葉は、こうして完全に一人歩きを初めてしまったのだった。


===============================


ミナムが仕事へ行って寂しがるだろうミニョちゃんを気遣うシヌです。


ミニョちゃんの寂しさはもちろんですが、隣のシヌにドキドキです。


(自覚したら、恥ずかしいですから)


シヌのフィアンセという事実は、衝撃的でしたがこれまでのシヌの言動から


疑うことなく受け入れたミニョちゃん。


もしすぐにシヌに告白していたら、どうなっていたのでしょうね。 


 

拍手[37回]

PR
<< ROULETTE 21 895 |  894 |  893 |  892 |  891 |  890 |  889 |  888 |  887 |  886 |  885 |  ROULETTE 19 >>
HOME
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
[09/25 まゆ]
[09/24 ゆぅぺん]
[07/06 まゆ]
[07/05 まるちゃん]
[06/01 まゆ]
最新記事
(05/11)
(02/12)
(02/12)
(12/28)
(12/28)
(12/04)
(11/15)
(11/02)
(11/02)
(10/21)
プロフィール
HN:
まゆ
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
忍者カウンター
忍者アナライズ
フリーエリア
◆ Powered by Ninja Blog ◆ Template by カニコ
忍者ブログ [PR]