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LITTLE WING 6
「さて面倒なことが終わったから…これからが本題だシヌ」
「何?だって対談はおわっただろう?本題って何のことだ」
長い手をもてあましながらぐるぐる回すロンに、シヌは困惑する。
全く話が見えないのだ。
「お前、このオレが対談をするためだけにここに呼んだと思ってたのか?」
「ああ…相手がお前だし?誕生日だといって拉致られたこともあったしな」
もちろん普通ならそこまでしないだろうが、目の前にいるのはただの男じゃないことを
過去の経験からシヌは悟っている。
「ったくぅそんな昔のことをネチネチと性格悪いぞ…傷つくなぁ…ねぇミニョちゃんこれどう思う?」
「えっあ…あの…」
都合が悪くなるとすぐにこうしてミニョに助けを求めようとするのは、常套手段なのか?
急に話を振られたミニョは、ちょっと困ってる。
そしてそんなミニョの反応をロンは楽しんでいるように見えるのだ。
「ハイハイ…お二人ともそのくらいにして置いてください・・時間が勿体無いですよ」
手打ち式のように、その場を収めたのはハルカである
「やれやれ…うちの最年少のくせにすっかり生意気になってしまったな」
わざとオーバーアクションでお手上げポーズをするが、本心ではないだろう。
その証拠に目が笑っている。
紆余曲折があった後任ギタリストだが、すっかりメンバーとして定着している。
(もう俺の出る幕はなさそうだな)
安心しつつも、こころのどこかで僅かだが寂しさを感じてしまうシヌ。
「さん…さん…シヌさん!!」
「あっすまない…ハルカどうした?」
しばし感傷的になったシヌだが、ハルカの声で我に返った。
「これ…見て欲しいんですけど」
シヌの目の前に渡されたのは、譜面である。
「え?この曲?」
それは、天才ギタリストとして誰もが知っている人物が作曲したもの。
当時斬新だった彼のプレイスタイルは、いまでは当たり前になっているほどだ。
「オレなりにアレンジしたんですよ。どっかの誰かさんがどうしてもシヌさんのギターで歌いたいってゴネましてね。まったく子供よりタチがわるくて参りました。」
「黙れハルカ!いいから早くしろよ。」
嬉々として話すハルカをロンが遮る。これ以上余計なことを話すなといわんばかりに。
シヌが少し前に感じた思いなんて、あっという間にどこかへ消えてゆく。
「やれやれ…ロンは相変わらずだな…だけどオレのギターは…」
愛用のレスポールは宿舎に置いている。
もちろん他のギターで弾けないというわけではないのだが…モチベーションが違ってくるのだ。
「心配すんな、ちょっと待ってろ」
そういって部屋を出てゆくロン。
そして言葉通りすぐに戻ってきた彼の手には、見覚えのあるレスポールが…
「これ…いつの間に」
「お前が風邪で寝込んでいる間にちょっとな。いやぁ親切なリーダーが居てよかったなぁ」
驚くシヌに、しれっとした表情のロン。
(テギョンか…)
あのテギョンがロンのいうことを素直に聞くのが信じられないが、目の前の男の行動力はや強引さはシヌが誰よりも知っている。
KEIFERのギタリストとして、アジア人のシヌが受け入れられたのもロンの存在なくしてはありえなかった。
『お前のプレイで、オーディエンスをKOしろ!!』
一昔ほどではないにしろ、ロックは西洋のものだと言う固定観念は残っている雰囲気の中
初ステージでは、その言葉で吹っ切れたのである。
あの時…少なくとも
もがき苦しんでいたミニョへの思いを一瞬でも忘れられるほどだった。
そして今・・・
シヌの隣で微笑むミニョ・・・
この幸せがあるのは、やはりあの日のロンの強引さがあってこそ。
「さっシヌさん・・・向こうで合わせましょうよ…ロンのところには負けるけど、その辺のスタジオよりはクオリティ高いですからね」
ハルカに促されてるシヌ。
「わかった・・・じゃあミニョも一緒に…おいで」
「いいんですか?私が居てじゃまになりませんか?」
ミニョに視線を移すと、彼女はいつものように気を使うことを言う。
邪魔どころか居てもらわないと困るというのに。
だが・・このときばかりはシヌの願いは叶わなかった。
「悪いな、ミニョちゃんはオレが借りる」
そういって二人の間に割りったロン。
軽くミニョの肩に手を乗せただけなのに、抱き寄せたように見えてしまう。
「借りるって・・・どうして!!」
「こわっ・・・おいおいそんな嫉妬の塊の顔をするな」
できるだけ平静を装ったつもりだが、ロンには通じない。
「ロンさん…あの・・・私」
ロンの手がそのまま乗った状態のミニョは、この状況に困惑しているのか
下を向いたままである。
「もうミニョちゃんまでどうしたんだよーオ・シ・ゴ・トだよ」
「「え?」」
ロンの言葉に、ミニョはもちろんシヌもはっとする。
「あ~あ二人とも忘れているのか?ミニョちゃんはうちのホテルのイメージキャラクターだってことを」
はぁっと天を仰ぐロン。
確かに言われてみればそうだ。
ロンの父親が宿舎にわざわざ宿舎へ尋ねてきた日のことを思い出す。
「という事でこっちの事情はわかっただろう?…というわけでいこうかミニョちゃん」
ヒラヒラと後ろ手に手を振ったロンの後を着いてゆくミニョ。
途中振り返ったので・・・エールを送る
“ファイティン”
“はいっシヌヒョンも”
声に出さないが、お互いの気持ちは通じていると思えた。
そしてそのまま奥の部屋へと二人の姿が見えなくなるまで、見つめていた。
「もうっシヌさんは心配性ですか?」
「え?いや…その…ミニョは普通の女の子だから緊張しているじゃないかって思ってさ」
ハルカに呆れられたシヌは、とっさにそういって誤魔化す。
一緒にいる相手はロンだ。
誰よりもミニョとのことを応援してくれた男なのに、どうしてこんな気持ちになるのだろうか・・
「大丈夫ですよ!!ロンはミニョさんには特別優しいから」
「ああ…わかった!!」
そうだ・・・何も心配することなのないのだ・・・
自分自身に言い聞かせるように、シヌもまたハルカの後を着いてゆくのだった。
ドアを開けてそこに広がる景色は、はっきりって普段自分たちが使用している
スタジオよりも広いかもしれない。
ハルカが言ったことは、オーバー発言ではなかったようだ。
サウンドもダイレクトに伝わってきて、やはり音楽を愛するものとしては
喜ばしいことだ。
シヌのリードを聞きながら、笑顔で続くハルカ。
「本当に弾きやすいなぁシヌさんは、ロンに感謝だね」
その言葉は、そのままハルカに返そうと思うシヌ。
ANJELLとは違ったサウンドは、シヌには良い刺激になるのだ。
ふと気が付けば・・・あれほど気がかりだったミニョのことを忘れてしまうほど
のめり込んでいたのかもしれない。
『ミニョちゃん・・・その服・・・いで』
『ロンさん・・・なッなにを言ってるんですか』
別室で交わされている二人の会話など、想像すらできなかったのであった。
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わざわざシヌを呼びつけたロンの思惑は、やっぱりこういうことでしたね?
目の前でハルカに暴露されてしまったロンは、ちょっと恥ずかしいのかもしれません。
ハルカ君はすっかり余裕の男の子になり、頼もしい限りです。
最後なにやら不穏な空気を流しておりますが、ここはご安心くださいと断言します。
シヌミニョは絶対なので!!
久々に続きをUPしたため、テンポがいまひとつ悪いです。
お許しを…