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BITTER&SWEET 番外編


(はぁ・・・収まるところに収まってって感じだな)
二人がどうなったか、やっぱり気になり様子を窺っていたミナムは安堵した。
盗み聞きという行為は決して褒められたものじゃないが・・・


それにしてもシヌの声の甘いこと。
そしてチョコのことでジェルミにも嫉妬していたことを知って苦笑する。
(きっと悶々してたんだろうな)
自分達の前ではクールで大人なシヌを思うとおかしくて仕方ない。


(あ・・・そういえばケーキ)
ミニョから先に告白されたから、渡していないようだ。
日持ちがするといっていたから明日渡すのかと思っていたのだが・・・


【俺からもミニョに渡すものがあるんだけど・・・モアハッピー・バレンタインだよ】
ちょっと改まったシヌの声に続き、ガサゴソと箱を開ける音。


そして・・・
【わぁ・・・すごい】
感嘆するミニョの声。
スイーツ好きなミニョのこと、これ以上のサプライズはないだろう。
ケーキをぐるりと見渡すと、シヌと同様にパチリ。


【ああ・・・この匂いも残しておきたいですぅ】
すっかりミニョはハイテンションだ。
だが、やはり食べることも待ちきれない様子。


【お酒入りだから、食べ過ぎるなよ】
極端にアルコールの弱いミニョ。加入当日の夜にしでかしたことは後日ミナムも聞かされた。
まあ、ラム酒漬けのフルーツケーキだからそれほど心配もないだろうけど。


【美味しいです・・・見た目も味も・・・お店で売っているケーキみたい】
食べたミニョの素直な感想。


だが・・・急に沈黙が流れる。
(どうしたんだろう・・・)
すぐにお代わりを食べたいと言い出すのだと思っていたから、ちょっと怪訝に思う。


【ずるいです・・・シヌヒョン】
【え?何が】
(本当だよ何がだよ?)


ミニョの言葉にシヌはもちろんミナムも同じ反応をした。


【だって・・・私と違ってシヌヒョンは何でもできます。歌だってギターだって…料理まで】
あのエッグチョコを相当がんばって完成させたミニョだけど、クオリティの高いシヌのケーキにちょっとしたジェラシーかもしれない。
シヌはなんていって慰めるだろうか・・・


【それは当然だよ…俺はずっとずっとミニョだけを思ってたんだから・・・ミニョに喜んでもらえるスィーツを作れるために色々と勉強したんだよ】
シヌの言葉に、ミナムも思い当たる節があった。自分が知らないミニョの好みを何故か知っていたシヌだからこそ


【あ・・・そっそうだったんですか・・・・・私ったらシヌヒョンは器用だから簡単に作ったんじゃないかって】
申し分けなさそうな声に変わるミニョ。


【いや・・・いいんだ・・・けど・・ちょっとショックだな・・・そんな風に思ってたのか】
落ち込み気味のシヌの声に、今度はミニョがあせっている様子。


【ごめんなさい・・・本当に】
ひたすら謝るミニョ。
シヌは本気で言ってるわけじゃないことはミナムにはわかっていた。


(さて・・・すんなり許して仲直りかな?)
そんな風に思っていると、シヌの提案?が聞こえてきたのだ。


【いいよ・・・その代わり俺のお願い聞いてくれる?】
【はっはい・・・難しいことじゃなければ】
シヌは何をさせるつもりなのだろう・・・この場でいきなりなんてことはないだろう。
(どうせならベッドだよな・・・)
シヌだって男だし・・・考えることは自分と大差ないと思う。


【大丈夫簡単だから…このクッキーの言葉を10回言ってみて】
(え・・・そんなこと?)
少々拍子抜けをしながら、今度はミニョに反応を待った。


【はい・・・スキスキスキスキスキスキスキスキスキスキス・・・】
最後まで言い終わらないうちに、遮れられたミニョの言葉。


【シ・・・シヌヒョンたら・・・いきなり】
【だってミニョが・・・キス・・・って何度もいうからついね】
不意打ちのシヌのキスに、おそらくミニョが抗議をしたのだろう。


(ハハッそういうこと・・・アホらしい)
あの暗号のようなクッキー・・・の意味はわかったが・・・読み方が不明だったミナム。
ミニョのことだ・・・考えもしなかっただろう。


【そ・・・それはシヌヒョンが・・・意地悪です・・・ぐす】
恥ずかしさなのかついには泣き出したミニョ。


【ごめん・・・泣くなミニョ・・・ミニョとキスしたくて・・・ほら?ケーキもう少し食べるか】
形勢逆転か…シヌがおろおろしている。
最終的に食べ物で釣ったようだ。


(もう・・・好きにやってくれよ・・)
二人の様子にお腹いっぱいのミナムは、音を立てないように階下へと降りてゆく。


ミニョに対するシヌの態度の甘ったるさ・・・
A・N・JELLのクレバーなギタリストとしてのシヌの表情しか知らないファンがこれを見たらどう思うだろうか・・・
そんなことを思いながら部屋へ戻って行くのだった。


それから1時間あまりすぎた頃。
ノックに続いてシヌの声


「ミナム・・・良いか?」
「?どうしたの?」
ドアを開けると、シヌの腕の中にはほんのりと頬を赤くしたミニョが気持ちよさそうに眠っている。


「ケーキをちょっと食べ過ぎてしまって・・・」
いいよどむシヌをみて、ミナムは先刻のことを思い出す。
ミニョの機嫌を直すために、請われるまま食べさせてしまったのだろう。
光景が目に浮かぶが、そこはそ知らぬふりをする。


「気にしなくて良いよ・・・きっと寝不足もあったんじゃない?シヌヒョンにあげるチョコを作るためにあいつがんばってたからさ」
「そう・・か・・・あのチョコ」
ミナムの話に、シヌはなんともいえない嬉しそうな表情をする。


「ミニョも考えたよね?LOVEをチョイスしないんだから」
「ああ・・・日本語少しわかって良かったよ・・・おかげであんな可愛い告白に、すぐに気付けたからね」
部屋でクッキーを見たミナムの意味ありげな言葉に、サラリと返すシヌ。
冷やかしてやろうと思ったミナムだか、今のシヌには通じない。


「それで・・・今夜どうするのミニョ?オレのところで寝かせる?」
兄と妹だし、小さいころはいつも一緒だったミニョ。


「いや・・・このままアパートに連れて行くから・・・鍵を借りようと思ってきた」
ミナムの言葉に、シヌがほんの一瞬鋭い視線を寄越したのは気のせいだろうか?


「あ・・・そう・・・うん・・・ちょっと待って・・・」
チェストの上においてあった鍵をシヌの胸ポケットへ入れる。


「ありがとう・・・じゃあお休み」
「ううん・・・わ・・・悪いけど頼むね」
シヌの目が笑っていないような気がしたのは、きっと見間違いだと心に言い聞かせながら。


「今夜はそのまま泊まってゆくから・・・」
「えっそそれは・・・今日の今日でいきなり?早いんじゃ」
ミナムの頭の中でぐるぐる。


「フッそんな心配は要らないよ」
「そっそうだよね・・・何言ってんだオレ?」
先走った発言に、思わず反省のミナム。


「これからゆっくりと進んでゆく・・・ミナムが大切にしていた妹だから・・・俺も負けないくらいにそうしようと思ってるよ」
真顔で言ってのけるシヌ。
ああ・・・やっぱりこの人しかいない…改めてミナムは思う。


「あ・・・けーき・・・ぜ~んぶわたしのですよ」
「うん・・・わかったわかった。ちゃんと残しているよ。明日また食べような」
不意に聞こえたミニョの寝ぼけ声。
愛しそうにあやしながらシヌが何度も頬をなでるのだ。


(ああ・・・もう好きにしてくれよ!!)
感動したと思ったら、これだ。
今後シヌの溺愛振りは、エスカレートしてゆくに違いない。


(やっぱり・・・今年中に絶対に彼女作ろう!!)
ミナムは心に誓うのだった。


=========================================
ミナムから見た二人です。
シヌミニョの甘~い様子は、基本苦手なのでこれが限界です。
お許しを・・・
この次は、後書きになります。

拍手[48回]

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BITTER&SWEET 最終話


「ミニョを呼んでパーティをしようよ」
バレンタインデーを数日に控えた日、いきなりのジェルミの提案


テギョンとのことは当然ジェルミも知っているわけで、ミニョが寂しく思わないようにとの気遣いなのかもしれない。


『そんなに深く考えてないだろう?シヌヒョンじゃあるまいし』
ミナムが笑いながら一蹴する。


ミニョを誘うとき何らかの理由付けをと構えるシヌにとって、ジェルミのストレートな表現はうらやましい。
あの屈託ない明るさはミニョの懐に易々と入っていけるのだろうから。
不自然にならないようにと、精一杯さりげなさを装う自分を思うと苦笑するしかない。
鈍いミニョ・・・だけどどこかで気持ちに気付いてもらえるかもしれないというほのかな期待もあったんだ。


『相手のことを考えすぎるのは、場合によりけりだよ』
恋に関してはどうやらミナムの方が、一枚上手。


それならいっそその特別日に、スイーツに自分の気持ちを託す事にする。


洋酒に漬け込んだ苺・チェリー・ラズベリー・クランベリーを使ってフルーツを焼くことにした。
これなら日持ちがする。


クグロフ型に入れた生地が焼きあがると、早速甘い匂いつられたジェルミがやって来た。


「美味しそうーオレの分は?」
「ちゃんとあるぞ・・・ミナムと二人で分けろ」
パウンド型で先に焼いておいたケーキを渡す。


「「おいしーシヌヒョンパティシエに慣れるんじゃない?」」
お世辞かもしれないが、ほめられるのはやっぱり嬉しい。


「ミニョが言ってたよ、シヌヒョンはなんでも出来るって」
感心したようなミナムの言葉にシヌは複雑な気持ちになる。
見えないところで、努力もしているのだ。
ミニョのことを良く気づくと思われていたのも、初めからミニョをずっと見つめていたから。


今年のバレンタインデーはテギョンが不在のため、当日の仕事はシヌが雑誌の取材が入っているだけ。


「飾りつけはオレがやるよ♪」
大張り切りのジェルミ。
ミニョの迎えはミナムの役目だ。
出来ればシヌがその役目を担いたかったが、今回は兄に譲ることにしたのだった。


部屋のディスプレイが殆ど完了したころ、ミナムがミニョに電話をかける


そして・・・
(あれ?ミニョ電話に出ないな?)
怪訝な表情をしながらコール音が鳴り響く電話を見つめるミナム。


とりあえずはアパートへと向かうことにした。
チャイムを何度か押すが、反応はない。


(どこ行ったんだよ…ミニョの奴)
電話に出ないということは、おいたまま外出しているのだろうか。


仕方ないので、合鍵で入ることにする。
だが・・・鍵を回すとロックがかかってしまった。
(おいおい・・・無用心だな・・・誰かさんが知ったらものすごく心配するぞ)


ため息をつきながら部屋の中へと入ると。


「すげぇ・・・何だチョコレートの匂い!?」
甘い匂いが部屋中に漂っているのだ。


キッチンの上のバットには、卵の殻のような形のチョコが溢れている。
(これ・・・全部失敗作なのかな)
これだけ多いと圧巻である。


テーブルの上に突っ伏しているミニョ。
綺麗な卵型のチョコが2個、エッグスタンドに立ててあるのだ
ミニョはきっと寝ないでこれを作っていたに違いない。
傍には書きかけのカードには、こんなに一生懸命に作ったチョコを渡す相手の名が記されている。


当人は、ミニョからもらえるなんて夢にも思ってないだろう。
(あのポーカーフェースがどう変化するだろうか。見ものだね)


「ミニョ・・・ミニョ」
何度か呼びかけても、完全に夢の中のミニョ。
仕方がないから少し強めに揺する事にした。


「あ・・・オッパ?どうして?」
ゆっくり目を開けたミニョは、寝ぼけ眼である。


「どうしてって・・・パーティがあるからって言っただろう?迎えに来たんだよ」
ミナムの言葉ではっとするミニョ。


「あっチョコ!!」
小さく叫んで自分の目の前のそれを見て、安堵する。


「すごいな・・・作るの大変だっただろう?」
「うん・・・私って不器用だから、たくさん失敗したよ」
労をねぎらうミナムに、ミニョは自嘲気味に呟く。


「だけど、諦めずに完成させたんだからエライエライ」
そういってミナムはミニョの頭をポンポン。


失敗作で作ったホットチョコレートで、ほっと一息。
その時・・・ふと思い出した。


ミニョからのチョコを切望するもう1名の存在を。
去年に続いて今年ももらえないと知ったら、また拗ねるかもしれない。


「とにかく1つ大急ぎで作るぞ!!」
以前番組の企画でやったことが役に立つと思いながら、作業を始めるミナム。


(やれやれ・・・ヤローに渡すためのチョコを作ることになるとわね)
だけど受け取った後のジェルミの反応を思うと、笑みが零れてきたのだった。


「ところでこのクッキーの形変わってるね?なんかの暗号?」
アメリカにいたミナムは英語はそれなりに堪能だが、日本語は会話はともかく読むとなるとなかなか手ごわい。


「あっその・・・良いのこれは」
慌ててそれらをビンにつめるミニョ。


「ふうん・・・まあいいか・・・じゃあ着替えて来いよ待ってるから」
深く追求しないミナムに、ほっと胸をなでおろすミニョ。
兄とはいえ、やっぱり恥ずかしいと思ったのだ。


ミニョをつれて宿舎に戻ると、一足早くシヌが帰ってきている。


「ミニョ・・・よく来たな」
「あ・・・シヌヒョン・・・ご無沙汰してます」
こうして言葉を交わすのはあの日依頼の二人。


「なんだよ・・・そんな他人行儀な挨拶?俺達の仲だろう?」
そういってふわりと撫でられた頭。
これまで何度もされた行為のはずなのに、今日のミニョはやたらと恥ずかしがっているように見えた。


そのままリビングへ行くと・・・
「ミニョー!!久しぶり会いたかったよー」


相変わらずのハイテンションのジェルミが、ミニョに抱きついてきた。
すっかりお約束になったジェルミのハグ。


「私もだよージェルミ」
ミニョも慣れたものである。


そんな二人を見るシヌの表情は、どこか寂しそう。
(まあ・・・あんな切なそうな顔を見るのも今のうちか・・・)
一人ほくそ笑むミナムであった。


食べて飲んではしゃいで、楽しい時間は瞬く間に過ぎてゆく。


パーティも終わりに差し掛かったときだった。
「ミニョ!!今年はチョコもらえるんでしょ?」
ジェルミからの催促。


「うん・・・あまり上手に出来なかったけど」
そういって渡すミニョは、チラッとミナムの顔を見る。
やはり用意しておいて正解だった。


「わーい!!ミニョからのチョコ♪」
大喜びで、ラッピングをはがしてゆくジェルミ。
ハートのチョコレートに大喜びだった。


(殆どオレが作ったんだけどな・・・)
もちろんそんなことは口が裂けてもいえない。


ふと気になったシヌの反応。
だが、淡々と後片付けをしているようだ。


「シヌヒョン・・・手伝います」
「良いよ・・・ミニョはお客さんなんだし」
ミニョの申し出を一度は固辞するシヌだが、二人でやったほうが早く終わるというミニョの言葉に
心なしか嬉しそうだった。


「じゃぁ・・・悪いけど後よろしくね。」
後ろ手でヒラヒラさせながら、部屋へ引き上げるミナム。
もちろんジェルミも一緒だ。
(二人ともがんばってよね~)
心の中でエールを送ったのだった。


ミニョの申告どおり二人でやった後片付けは、思ったより早く終わる。


「助かったよ。ミニョずいぶん手際が良くなったな?」
「エヘヘ・・・あの頃はダメダメでしたから」
シヌの褒め言葉が嬉しいが、少し照れてしまう。


「じゃあ、成長したミニョにNYで買ってきたお茶を入れてやるか!」
「はぃ!!」
シヌノ言葉に即答するミニョ。


「「テラスで!!」」
二人の声が重なると、顔を見合わせてくすり。


ティーポットとカップを載せたトレイを運ぶシヌから、遅れること5分…
ミニョもテラスへとやって来た。


だが…何故かミニョは立ったままである。


「どうした座れよ」
「あっいえ・・・その」
手を後ろに回したまま、ぎこちない動きのミニョ。


すると
「はぁー!!」
大きく息を吐いたミニョが不意に


「シヌヒョン!!すみません手を出してくれますか」
「わかった・・・これで良いか」
シヌの手にそっと乗せられたリボンのついた箱。


「ハッピーバレンタインです!!」
そういってうつむくミニョ。


「ありがとう・・ミニョ・・・実はさ、さっきジェルミのを見てオレにはないのかって思ってたんだ」
例え義理でもミニョからもらえるのは幸せだというと、ミニョはぶんぶんと頭をふった。


「違います・・・そういうんじゃなくて・・・ジェルミのとは違うんです!!」
何故かミニョは怒ってる?
シヌはミニョの態度に戸惑いつつも、中身が気になって
許可を貰い目の前で開けた。
中から出てきたのは、卵形のチョコレートが二つ。


「良かったー割れてないです」
チョコを眺めながら安堵の表情のミニョ。


「作るの大変だっただろう・・・嬉しいよありがとうミニョ」
ジェルミだったらきっと思い切り抱きつけるだろけど・・・


すぐにパチリ。
そして再び箱にしまおうとした。
勿体無くて食べることなんてしばらく出来そうもないから。


そんなシヌ行動に気付いたミニョから出た言葉。
「あの・・・そのチョコの中にまだ入っているものがあるんです・・・だからチョコ食べてください」


「ん?そうか・・・お楽しみがもう一つあったんだな」
そのチョコを手にとって軽く振ると、確かに音がする。


出来るだけその形を崩さないように、そっと歯を立てた。
残りも同様に・・・


そして中から取り出したクッキーをしげしげと並べた時。
一瞬何かと思ってしまう。
だけど・・・よくよくみたら気付いた。


「あの・・・それじゃあ私帰ります」
「待て・・・」
踵を返すミニョの手を強く掴んでそのままミニョを壁際に追い詰めてしまった。


「あの言葉・・・日本語だよな・・・そのままの言葉だと思って良いか」
「はい・・・あの・・・そうです」
シヌが問いかけに、消え入りそうな声で答えたミニョ。


『ス』『キ』
たった二文字の言葉が、これほど幸せな気持ちにしてくれるのだ。


だから、シヌも飾らない言葉ではっきりと伝えた。


「ミニョ・・・好き・・・大好きだ」
ようやく言葉にすることが出来た。


「私もシヌヒョンが・・・好き・・・」
ああ・・これが夢ならさめないでほしい・・・そんなことをぼんやり考えながら
ミニョを思い切り抱きしめた。


チョコレートには魔法の力があるというミニョ。
それならこんな甘い香りがするミニョは、間違いなく魔法使いだろう。


だって一度は諦めた俺の恋を叶えてくれたから。


とびっきりの甘い魔法でね。


===========================================
ということで、この話は完結です。
いつも以上に大砲乱射でしたが、お見逃しを


だけど回収できてないエピがあるので、番外編を書こうと思います。
シヌはスイーツをミニョちゃんに渡してませんでしたので。

拍手[53回]


BITTER&SWEET  3


バス停に到着してしばらくすると、折り返しのバスがやってきたのでに乗り込む。
そして・・・携帯の電源を落としてしまった。


その夜・・・アパートに戻って再び電源を入れて彼に連絡をすると・・・
当然だけど、怒っていた。


『すっぽかすとはどういうつもりだ!!俺は明日からまた海外での仕事があるんだぞ!!』
『ごめんなさい。急に気分が悪くなって・・・連絡しようとしたら電源が切れてしまいました』
必死で説明した。


『分かった・・・無理するな・・・悪かったな怒鳴って。今度からは充電器もちあるけよ』
嘘ばかりの私の話を信じて、そして心配してくれる彼。


だけど・・・
私は知らなかった。
宿舎の近くにいた私の姿をジェルミが見かけてたいたことに・・・


自分はいつからこんな罪深い人間になってしまったのだろう。
彼のことが好きなはずなのに・・・
ミナムオッパの身代わりとして一緒に過ごしている時の方が、幸せだったような気がする。


彼は仕事に集中したいといって、私に連絡することは滅多にない。
少し前なら寂しくてしかたなかったけど、なんだか慣れてしまった。


そんなある日のこと、何気にTVをつけるとシヌヒョンが出てる。
私は、その姿に釘付けになった。
シヌヒョンのスペシャルドラマの撮影は終了したので、OA前のプロモーションでの出演らしい。


『いやぁ・・・バイクのシーン決まってますね』
『ありがとうございます。この話をいただいてから、練習しましたので』
賞賛の言葉にも、シヌヒョンは謙虚な姿勢を崩さない。
シヌヒョンが演じたのは、男子高校生の役。
眉目秀麗で、成績優秀だけど、ケンカも強い。
殆ど地で演じられるといわれて、ちょっと照れてた。
『そういえば、このドラマでは後ろに乗っているは男性ばかりでしたが、シヌさんがリアルで後ろに乗せたい女性はどんな人ですか』
『もちろん・・・大切な人です!!』


はっきりと言い切ったシヌヒョン。
(大切な人・・・か・・・それはきっとシヌヒョンの好きな人だよね)


ミニョにあんなに優しいシヌだから、恋人にはメチャメチャ優しいだろう。
そう思うと・・・無性に寂しく思ってしまう自分がいた。


数日後・・・ミナムオッパからの宿舎へのお誘いの電話。
この前のように、皆と楽しく過ごせると思って私は宿舎へと向かった。


チャイムを押したけど、返事がない。
きっと手が離せないのだろう・・・そうっと入ってびっくりさせようなんてちょっといたずら心。


リビングに近づくと、聞こえてきたのはミナムオッパの声。
あのミナムオッパが失恋?
ちょっと・・・ううん・・・かなりびっくりした。


だけど・・・その次に聞こえてきたシヌヒョンの話に私はその場で動けなくなった。
“当たって砕けたならいい・・・オレなんてその前に見事に自爆したからな”


(え・・・シヌヒョン・・・好きな人って・・・)
あのインタビューの内容は事実だったのか・・・
これまでそんなそぶり全く見せなかったのに、何故だが複雑な気持ちになる。


あのシヌが失恋するくらいだから、きっとものすごく綺麗な人なんだろう。


(聞いてみようかな)
そう思って、ドアノブに手を掛けて開けようとしたら
再びオッパの声。


“ホントミニョのやつ鈍すぎるよ・・俺なんてすぐに気付いたのにさ。シヌヒョンがミニョに夢中だって”


(え!?今なんて!?シヌヒョンが私を?)
あまりにも意外な話に頭の中が混乱して、その場に固まった。


「ミニョ・・どうしたの?入らないの?」
背後からの元気いっぱいのジェルミの声・・・


当然オッパとシヌヒョンにも聞こえていた。


私の姿を見て、目を見開くシヌヒョン。
急用だといって、慌てて出て行ってしまったんだ。
シヌヒョンらしからぬ態度に、オッパとジェルミも呆然としていたっけ・・・


『オッパ?さっきのシヌヒョンの話だけど』
『え?聞いてたんだろう?』
しばらく経ってオッパに聞いてみたら、そっけない返事。


『だって・・・知らなかったんだもん・・・シヌヒョンに何も言われないし』
『はぁ?・・・あれで気づかないなんて・・・態度でばればれだろう』
ちょっと反論したら、オッパに呆れられてしまった。


ジェルミにも聞いてみたら・・・当然だといって頷く。
知らないのは、私だけだったなんて。


そういえば、よくシヌヒョンに言われたっけ
『鈍い』って・・・


この前に見たTVのインタビュー。
“バイクの後ろに乗せるのは、大切な人”


シヌヒョンの気持ちに全然気付かなくて、ただ甘えていたひどい私。
そう思ったら、申し訳なくてシヌヒョンに合わす顔がないって思った。


そして・・・幸か不幸か・・・シヌヒョンとは現実にしばらく合えなくなってしまう。


突然の海外での取材の仕事。
シヌヒョンの姿は、ネットやTVでしか確認できない。
あんなことがなかったら、電話でおしゃべりできたかもしれないのに。


リポーターとして、流暢な英語を話すシヌヒョン。
かっこいいけど、遠い人に思えたんだ。


シヌヒョンは、いつだって甘えることが出来る存在だって根拠なく思っていた自分が情けない。
このまま気まずくなって、会うことも出来なくなったらって想像しただけでも辛くなる。
私の心の中は、シヌヒョンでいっぱいになっていた。


そんな私の気持ちの変化を、彼が気付かないはずはない。
帰国した彼と会っても上の空のことが多かったから・・・


このまま自分の気持ちをごまかすことは出来ないと、決心して彼と会った。


すぐに切り出そうとしたけど、彼に制される。


『話は、食べてからでも良いだろう?』
そういわれてぐっと言葉を飲み込んでしまった。
そして運ばれてきた料理は、私の好きなものばかり。


『いつも・・オレに合わせていただろう・・・今日は遠慮するな』
彼の表情は、これまで見たことがないくらい優しい。


(どうしよう…)
気持ちが全くなくなったわけじゃない。
このまま・・・なんて思いが少しだけ過ぎった


だけど・・・やっぱり・・・私の心は・・・別のところに向かっている。


そして・・・食べ終えた後・・
意を決して、話を始める。


「あの・・・私・・・・・他に好きな人が出来たんです・・・ごめんなさい」
ようやく出た言葉・・・頭を下げることしか出来ない。


二人の間に流れる沈黙。
いつかも同じようなことがあったけど、あの時とは状況がまるで違うんだ。


「シヌ・・・か」
「テギョンさん!!」
搾り出すような彼の声に、はっと顔を上げる。


「なんとなく気付いていたぞ・・・お前は最初からシヌの前では、自然で笑顔で・・・
だからこそオレを好きだといいてくれたこと嬉しかった。シヌよりオレを選んでくれたことで、満足してたんだろうな。
いざ付き合うことになったら、どう接していいかわからない。お前は相変わらず緊張しているし・・・そのくせシヌの前では以前と変わらない態度に腹が立った。お前に宿舎に来るなという大人気ないことも言ってしまったな。」
彼の言葉の一言一言が胸に突き刺さる。
そんな風に思わせてしまったのは、私にも原因があったんだ。
彼の前では、ありのままの私でいることが出来なかった。


「悪い・・・未練がましいな・・・オレとしたことが」
自嘲気味に笑う彼。


私の思いを受け入れた彼から一つの条件を提示された。


それは、私が振られた事にすること。
「仮にも皇帝と呼ばれた俺が振られるなんて、皆にちょっと言えないからな」


彼の言うことは尤もだ・・・
だけど・・・その言葉の裏に隠された真意に私は気付いていなかった。


数日後・・・ミナムオッパから電話が来た。
私とテギョンさんのことを知って、慰めてくれる。
本当のことを言えないのが心苦しかった私は、電話口で無言になってしまった。


そんな空気を呼んでくれたオッパは、話題を変えてくれた。


『シヌヒョン・・・明後日帰ってくるって』
『ホント?』
その言葉に自分でもびっくりするくらいの大きな声で反応してしまった。


宿舎に戻ってきたら、会いに行きたい。


だけど・・・・気持ちをどうやって伝えたら良いんだろう勇気が出ない。


そんな時、あるサイトで知ったエッグチョコの存在。
中にプレゼントを入れるみたい。


これなら・・・伝えられるかも知れないって思った。


それからは、チョコと格闘の日々。
エッグチョコレートは、想像以上に難しい。


100個以上作って成功したのは、僅か2個だけなんだ。


私の気持ちをこめた小さなカードを、チョコに入れて閉じようとして
はっとした。


(もし、気付かずに食べたら)
お腹を壊してしまうかもしれない。


大切な身体がそんなことになったら・・・


それなら、食べても大丈夫なように
クッキーを焼いて中に入れよう。


チョコは2個・・・2文字しかない。


좋아해요 は作る文字が多すぎて断念
LOVEも4文字だ。
他の国の言葉で探したけど、文字数が多い


落ち込みかけたとき、ふと日本語に気付いた。
カタカナ?


2文字・・・?


それに、私でもなんとか出来そうな形・・・


もちろん、たくさん作って一番うまく出来たものをチョイス。


それらをそっとチョコに入れ、縁に接着のチョコを塗ってもう半分をあわせて。


気がつけば、日付が変わっていた。


後は・・・ラッピング…だけど、少しだけ寝かせて?
======================================
ミニョちゃんサイドの話の続きです。
思いがけない状況でシヌの気持ちを知ってしまったミニョちゃん。
ニブチンを兄にも指摘されてしまいましたね。
その後シヌに会えなくなったミニョちゃんは、寂しさでいっぱいになります。
恋人であるはずのテギョンさんとは、同じ状況でも大丈夫だったというのに・・・


別れ話は実はミニョちゃんからでした。
テギョンさんの引き際は素晴らしかったと思います。


次回の完結目指して頑張ります。


 

拍手[39回]

BITTER&SWEET 2


CHOCOLATEには、恋が叶う魔法の力があるのよ。
施設にいるとき、お姉さんが教えてくれたお話。


幼かった私には良くわからなかったけど…
口の中にポンと入れてくれた、甘い甘いチョコ。
とっても幸せな気持ちになったことだけは、覚えている。


思い出すのは、去年のバレンタインデー。


アレルギー体質の彼に食べてもらえるケーキを作るためにお菓子教室に通った。
不器用な自分が情けなかったけど、失敗を繰り返して何とか出来上がったケーキ。


教室のことミナムオッパには話してたけど、私を見るたびニヤニヤ笑う。
そして何故かシヌヒョンに耳打ち?


ミナムオッパはシヌヒョンと仲が良い。
身代わりをしていたときも思ったけど、もしシヌヒョンがいなかったら・・・
きっとこのグループから逃げ出していただろうし、テギョンさんの優しさに気付くこともなかった。


バレンタインデーはグループのイベントがあるみたい。
当然だよね?大人気アイドルだもん。


夜遅くなって悪いと思ったけど、宿舎に向かった。


途中で連絡を入れていたためなのか、宿舎の前に人影が見える。
 
『待っていてくれたんですか?』
『別に・・・曲作りで煮詰まったから、気分転換だ!!』
ぶっきらぼうなところは、会った頃と変わっていない。


『あ・・・あの・・・これ』
『なんだ・・・これ?』


勇気を振り絞って渡したのに、彼の第一声でちょっと落ち込む


『その・・・バレンタインデーなので』
『あー?くえんのか?俺がぶっ倒れるもの入ってないだろうな』
失礼な言葉だけど、以前彼の体質を知らずアレルゲンのものを用意したから言い返せない。
 
『安心してください。プロの先生に習ったんですからね』
今日は自信があった。


そんな私を見た彼は、箱を片手で抱えると宿舎の中へと戻ろうとする。


 
『あ・・あの待ってください』
『何だ?他のやつらにもやるんだろう?呼んでやる』
彼は、勘違いしているのだ。


『違います・・・ケーキは一つだけです!!』
この言葉でようやく気付いてくれたみたい


『それって・・・お前・・俺の事を?』
心底驚いたような反応をする彼。


その後二人の間に流れる沈黙。
やっぱりダメなのかな?絶望的な気持ちになって思わず俯いてしまう。


『おい・・・ミニョ』
不意に名前を呼ばれて顔をあげると、そっと唇が重なった。


『これが返事だ・・・分かったな?』
甘い言葉はなかったけど、真っ赤な顔をしている彼をみたらなんだか可愛かったんだ。


こうして私達の恋は、始まった。


だけど・・・
今思えば、あの瞬間が―
私達にとって一番幸せなときだったのかもしれない。


 
次の日ミナムオッパに伝えたら、ひどく意外な反応をする。
そんなに驚くことなのかな?


シヌヒョンは、いつもの優しい声で“そうか、良かったな”って言ってくれた。
 
ジェルミからはチョコを催促されたけど、用意してないって言ったらすごくがっかりしてたっけ。


人気者だし、昨日たくさん貰ったのに
“大好きなミニョだから、欲しいんだよー!!”
ジェルミは大好きという言葉を良く使う。


うん・・私も大好きな友達・・・ずうっとね
 


告白後の初デートは、彼が予約してくれた高級レストラン。


ただでさえ慣れない場所に加えて、目の前には彼。
テーブルマナーの失敗をしないようにって気合を入れすぎたせいかな?
ナイフを落とし、グラスを倒したりと散々だった。


“事故多発地帯は相変わらずか”
彼が笑いながらも、少しため息をついた気がした。


次のデートのときは、失敗をしなかったけど
それに捕らわれすぎたのか、会話が進まない。車の中でも少し気まずかった。


所謂恋バナを相談できる友達は私にはいない。
二人のことは、グループ内と室長、そしてオンニだけ。
 
ある日のことだった。
彼の不在のときオッパに呼ばれて宿舎に遊びに行くと、サンドイッチパーティだという。


だけど実際に作っていたのは、殆どシヌヒョンみたい。
そして私のフルーツサンドがたくさんあったのは、本当に嬉しかった。
シヌヒョンに話したことあったかな?


そのときは深く考えることはなかったけど・・・


ジェルミもいて楽しい時間。


デビュー当時の秘蔵映像をまた見せてくれた。


ミナムオッパは、初めてらしく興味津々。
シヌヒョンはさすがに苦笑いしかしなかったけど・・・


そんな楽しい時間は、予定よりの早い彼の帰宅によって終わりを告げてしまう。


私が宿舎に来るのを彼は好まないようだ。


仕事に厳しい彼だから、集中できないかもしれない。
落ち込む私に、ミナムオッパの言葉は救世主の声にも聞こえた


“気にするなよ。ミニョは俺の妹なんだ!!兄貴に会いにくるのに誰にも文句は言わせない!!”
その言葉に甘えて、私は頻繁に宿舎に行った。


当然彼は不機嫌だったけど、ミナムオッパの言葉でしぶしぶ許してくれる。


だけど、疲れたといってすぐに自室にこもってしまう。
皆と楽しく過ごしたい私の思いは、我儘なのだろうか…
 


考えてみれば、彼と共通の話題を探すのは用意じゃなかった。
世界的に有名な指揮者の一人息子として生まれた彼。


私とは、あまりにも違うことを思い知らせるようになる。
それでも、この恋を失いたくなってどこかに必死だったかもしれない。


そんな日々の中、彼からの電話があった。


オフだから、宿舎に来るようにと。


誘っていてくれたことが嬉しくて、即答する。


これで・・・ここ最近の気まずさを解消できるって・・・信じてたから。


当日バス停から宿舎に向かって歩いていると、見知らぬバイクが傍でとまる。


誰?って警戒したら、なんとシヌヒョン。


ロケでバイクのシーンがあったみたい。
その時使用したバイクがこのバイク。
すごく気に入って、撮影後は格安で譲ってもらえると笑っている。


その笑顔は少年のようで、私が知っているシヌヒョンとは少し違って見えた。


『宿舎へ行くんだろう?送ってやる。乗ってけ』
『いえ・・・大丈夫です』
仕事へ向かう途中のシヌヒョンに申し訳ないと固辞したら
 
『そんな遠慮はするな・・オレ達の仲だろ?』
ミナムオッパの代わりをしていたときによく言われた言葉。


妙に懐かしい気持ちになって、気がついたら後ろに乗っていた。
 


『しっかり捕まっていろよ。落ちるからな』
シヌヒョンの言葉に、私はちょっとびっくりで・・・とっさに腕を回していた。


不思議と安心できるシヌヒョンの背中。


だけど、この日は何故だかドキドキした。


きっと…落ちないようにってしがみついていたからだと思う。


 
シヌヒョンは宿舎のまん前ではなく、少し手前で下ろしてくれた。
それは、きっと彼への配慮だと思う。
何も言わなくても、昔からシヌヒョンは気付いてくれるんだ。
 


『じゃあな?』
そういって走り去るシヌヒョンの後姿から、何故だか目が放せない。
 


その後自分で信じられない行動をとってしまった


宿舎に行かずに


足は・・・再びバス停へと向かっていたのだから。


===================================


ミニョちゃんの気持ちがテギョンさんからシヌへと移り行くため、
説明の部分が長いです。


思いが通じ合っても、育ってきた環境が違うから~(BYセロリ)の二人。
中々うまく行きません。
そうしてすきま風と供にミニョちゃんの心にシヌが入り込みます。


もう少し続けても良いでしょうか?

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ミナムの一番長い日 後編


「あっヒョン来たんだ?」
ドアを勢い良く開けて入ってきたのはテギョンである。


「何だ?その言い草は?」
「べつにー意味はないよ」
グループでの活動時と違い強気な口調のミナムだが、テギョンは特に気に止めてはいないようだ。


つかつかと部屋の中に入ってくるなり、ミニョの姿を上から下まで品定めをするような視線を送る。
「フン!!流石はプロのテクニックだな、お前でもまともな花嫁に見えるぞ」
「もー!!相変わらず私には厳しいことばかり言うんですね」
出会った頃と変わらないテギョンの物言いに、ミニョは少しばかり頬を膨らませて反論していた。


「褒め言葉なら散々聞き飽きただろうが。このオレ様が敢えて苦言を呈してやるんだありがたいだろう?」
「はいはい・・分かってますよ。テギョンさんいえオッパは素直じゃないって」
今度はくすくす笑い出すミニョ。


その二人の姿にミナムはもちろん、ジェルミも不思議そうに見守っている。
付き合っていた頃でさえテギョンに遠慮をしていたミニョが、こんな風に軽口を交わすのである。


「躓かずに歩けよ、これで転んだら後々までの語り草だからな。まあネタを提供してもらうのも愉快だけど」
「大丈夫ですーローヒールだしドレスも引き摺らない丈ですから」
このドレスの元々の持ち主も、ミニョと同様ちょっぴりドジな人だからほとんど補正無しで着用することが出来たのである。


「そう…か?まああいつが着いているんだから抜かりはないな」
「はいっ」
テギョンの言葉に、今日一番の笑顔で答えるミニョ。


今日の式にあたっては、誰よりもミニョを理解しているシヌがアドバイスをしてくれたのだった。


「じゃ…後で…くれぐれも事故を起こすなよ!!」
そういって、後ろでに手を振りドアを静かに閉めて出て行ったのであった。


暫くして…


「やっぱりオレ…一言言いたい!!」
ジェルミが何か呟くと、あわただしくテギョンの後を追いかけた。


「全く・・・」
仕方がないので、ミナムもその後を追おうとするのだが…


「待って!!オッパ」
ミナムの腕をつかむのは、自分より少し小さいミニョの手。


「どうしたミニョ?」
「あのね…ここに座ってくれる?」
ミナムが優しく問いかけると、ミニョの表情は堅い


(まっまさか…この期に及んでマリッジブルーなんじゃ…)
ミナムが真っ先に浮かんだことだ。


ミニョが進める椅子に腰掛けると、ミニョはドレスの裾を軽く持ちあげてミナムの足元に腰を落とす。


「オッパ…今までずっと私を守ってくれてありがとうございます。私オッパの妹で本当に良かった。」
嫁ぐ妹から兄への思いが語られる。


「ミニョ…オレなんて全然兄貴らしいことできなかったじゃんか?挙句にはオレの身代わりをさせることになってさ…」
無菌室のようなところにいたミニョが、全く別の世界に放り込まれてしまったのだ。
感謝どころか、抗議されても当然なのだ。


「ううん…歌手になるオッパの夢のお手伝いが出来たんだよ…それに皆に…シヌヒョンに会えたし」
シヌの名を出したときは、顔を赤らめている。


「そうか…まっ結果オーライってことだよな」
確かにあのまま修道院にいればいずれはシスターになり、アイドルのシヌとは出会うこともなかっただろう。
身代わりを強要したマ室長にも今となっては、一応感謝かもしれない。調子に乗るから本人の前では言わないが…


そうしてミナムは椅子から降りると、ミニョと同じ目線になった。


「ミニョ…ここからは兄としての言葉だ…」
「はいオッパ」
いきなり真面目モードのミナムに、ミニョも緊張の面持ちになる。


「ミニョは小さい頃から我慢ばかりしてたよな。いつだって回りに遠慮してばかりで。
だけどシヌヒョンには遠慮なんかしちゃダメだ。あの人は、ミニョのちょっとした変化でも気がつくんだから。オレにいえないことでもちゃんと言うんだよ。もしそれでケンカになっても、二人ならすぐに仲直りできるだろう。
まぁ、あんまり見せ付けられるのもちょっと複雑だけどさ。でも、オレの望みはミニョが幸せになってくれることだけだよ」


「オッオッパ…」
ミニョの目にうっすらと涙が滲んでいる


「あーもう、せっかく綺麗にメークしてもらってるってのに、崩れたらどうするんだ。ヌナ!!お願い!!」
奥にいるモディを呼びにゆく。


「じゃあ、後で!!」
そうミニョに告げると、急いでジェルミを探しにゆくのだった。


(あいつ・・・どこにいるんだよ)
控え室に行ったが、姿は見当たらない。


少しあせりながら、ホテルの周りを探す。
すると…チャペル側とホテルの連絡通路の影からその姿を捉えることが出来た。


「ジェルミ…」
呼びかけたが、彼からの返事はない。
ただ、じぃっとテギョンを見つめている…いや睨んでいるといったほうが正しいのか。


「何だ…さっきからオレに言いたいことがあるならハッキリ言えば良いだろう?」
テギョンの問いかけに、ジェルミは思いっきり息を吸い込んで一気に吐き出した。


「じゃあいわせてもらうけどさー!!どうしてミニョとバージンロードを歩くのがヒョンなんだよ!!ミナムなら当然だけど…ずるいよ!!」
ジェルミとしては、到底納得できないことなのだ。


「ほぉ?やっぱりそういうことか?」
ジェルミの考えなど、テギョンにはお見通しのようである。


「お前、いつも言ってるよな?ミニョはミナムの妹でもあるけれどグループ皆の妹だって…」
「いってるけど…それがどうしたんだよ!?」
ムキになってジェルミは言い返す。


「本来一緒に歩くべきミニョの父親は他界している」
「……」


「このグループの長兄は誰だ?」
「あっ…!」
テギョンの言葉にジェルミは、はっと気づく


「一番年上なのは…テギョンヒョン…です」
「分かったか?まっそういうことだ…長男のオレが父親代わりをすることにミナムは不満か?」
いきなり話を振られたミナムは、少しあせりながらもテギョンに視線を移す。


「う…ん…良いか悪いかって言われたら…ハッキリいって不満だよ。だけどミニョがヒョンに頼みたいって思ったんだから、オレから何も言うことはないよ」
自分が異議を唱えても、変わることはないのだ。


「そうか?お前は物分りがいい…そろそろオレも自分の支度があるから戻ってるからな」
そういって足早にその場からテギョンは立ち去ってゆくのだった。


「あーもう口惜しい!!ヒョンのばかぁぁー」
テギョンの姿が見えなると、いきなり大声を上げるジェルミ。


「全く・・・いいかげんに…おい、ジェルミどうしたんだよ?」
叫んだと思ったら、すぐに俯くと来た。
(本当に喜怒哀楽の激しいやつだよな)
そう思って、ジェルミを覗き込もうとしたところ


ポタポタと落ちてくるものに気づいてしまった…それは紛れもなくジェルミの涙


「わ・・わかってるんだ…ヒョンの気持ち…だけど…だけど・・・オレだって…オレだって・・・ぐす」
「こら?こんな日に泣くなよ…ほんという泣きたいのはオレのほうなんだからな」
ミニョに本気で恋してたジェルミの思い…
今は良い友達として接しているけれど、人の気持ちなんて簡単じゃない。


「お願いミナム…先に行っててよ…オレ後でちゃんとといくからさ」
「うん…待ってるからな」
中途半端な慰めの言葉なんて虚しいだけ…だから一言だけ伝えた。


(ミニョのモテ期は、健在だな)
心の中でそんなことを考えていると…ついに真打の登場だ。


「シヌヒョン…すっげぇカッコ良いじゃん…イケメン度増してるね」
白いタキシードが癪に障るほど似合ってるのだ。


「ありがとう…やっぱり仕事で着るのとは違うな」
緊張するといいながらも、ミナムからみたら余裕綽々の姿。


「ミニョを幸せにしてあげて…だけど嫉妬はほどほどにね」
兄として改めて頼む。


「初めの言葉はもちろんそのつもりだけど、もうひとつのほうは一応耳に入れておく」
そんな風にしれっと言ってのける。ミニョへの溺愛は留まることがないのだろう。


「これからもよろしくお願いします…ミナム義兄さん」
シヌ深く頭を下げてきたのには、参った。


「もう!!やめてよシヌヒョン…はずいから」
こんなすごい人が弟なんて、ありえないだろう?


だからこそ、間違いない。大切な妹を任せる相手としてね。


だけど…つくづく思うんだ。


自分の子供は男の子が良いと…
こんな寂しい思いをするのは一度で良いから・・・・


                                              fin
======================================
駆け足気味ですが、これで完結です。
何故かミニョちゃんとシヌの結婚式までにはいたっておりません。
どうかお許しを…


いつか、そのシーンが書ければいいなと考えております。

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ミナムの一番長い日



冬にしては暖かいその日



 


ANJELLの宿舎では、早朝からけたたましい声が響き渡った。


 


「っもーどうしてだよーどうしてテギョンヒョンなんだよー!!」


ソファにおいてあったお気に入りのクッションを投げつけるその人物はジェルミである。


 


「っるせーよ!!それはオレがいう台詞だろうがー!!」


ジェルミに負けず劣らずの大声のミナム。


 


今日は、ミナムのたった一人の妹のミニョの結婚式なのである。


だが、この喜ばしい日にジェルミとミナムは何故か溜息の連発。



 


『ごめんね…オッパ』


『いいんだ…ミニョが決めたことだもんな』


ミニョからこのことを聞かされたときは、はっきり言ってショックだったが


異論を唱えることも出来ず、納得するしかなかったのだ。


ミニョなりに考えた末のことに違いないだろうから…


 


(シヌヒョンはどう思ってるんだろう)


ミニョに聞いたところ、特に変わった様子はないといっていたが…


 


いつまでもこうして二人でいるわけにも行かず、とりあえず朝食をすませることにした。


 


しばらくして…宿舎のチャイムがなる。


 


「おはようございます…ジェルミさん、ミナムさん」


ドアの向こうにいたのは、ジュナ。



 


「あっジュナ!!あれ?一人?モリョンは??」


「ああ…モリョンはソンジェがちょっと…話は車の中で」


二人一緒じゃないことを尋ねられるとジュナは軽く溜息をつきつつ二人を促した。



 


「ねぇねぇもしかしてソンジェも、ショックだったの?ミニョのこと?」


後部座席のジェルミが身を乗り出しながらジュナに話しかけると、ルームミラー越しに頷くジュナの姿が映る。


 


「ソンジェのやつ…親友が一番ミニョさんと近い存在だと思い込んでいて、違うと分かったら大泣きしたようです。しまいには今日の式も出ないって言い出して。


ring bearerだっていうのに」


困り果てたモリョンがミニョに相談したところ、どうやって説得してくれたか分からないがソンジェの機嫌は直ったらしい。


 


「ふぅん…随分切り替え早いんだな…やっぱり子供だからかな?」


かつてミニョに失恋したジェルミは、怪訝な様子だ。


 


「ジュナはさ…あのミニョのこと…」


ミナムがさりげなく尋ねてきたのだ。


 


「そうですね…卒業よろしく…花嫁を略奪しようかなと」


「「ええー!!だめだよそれは!!」」


ジュナの言葉に、ジェルミとミナムの声がみごとにハモッた。


 


「冗談ですよ…ミニョさんのお相手に殺されるのはごめんですからね」


そういってクスクス笑い出すジュナをみて、安堵の声を上げたのだった。


 


 


その後式場につくまでは、互いの近況を話し合う。


ジュナがグループを抜けてしばらく経ったが、友人としての付き合いは続いていた。


いや…寧ろ今のほうが気楽に付き合っているのかもしれない。


 


やがて車は、ホテルに併設されたチャペルへと到着する。


 


「ねぇねぇ、ミニョに会いに行こうよ!!」


「おいっ待てよ!!」


車を降りた途端に駆け出すジェルミの後を追いかけようとするミナムだが、ふと足を止めた。


 


「ごめんジュナ…ありがとう」


「いえいえ…ほら急いで下さい!!ジェルミさんよりも先にミニョさんの花嫁姿をご覧になりたいでしょう?」


相変わらず気が利くジュナに感心しつつ、ミナムも全速力で走ったのだった。


 


そしてミニョのいる控え室の手前でジェルミを追い越す。



「ハァハァ…オレが先にゆく!!」「えー一緒に入ろうよ」


「いーや!!お前は数分後だ」「ケチ!!」


 



入り口での小競り合いが、部屋の中に響いたのだろうか。


 


「ちょっと何やってるのよ、こんな大事な日に揉めるのやめなさい!!」


ドアを開けたモディの呆れた声。


 


「ごめんヌナ…ミニョは支度出来てるの?」


そういって部屋の奥へと進むと…


 


「オッパ…どうかな?」


くるりと振り向いたミニョ。


 


「あ…うん…」わー!!ミニョすっごく綺麗だよー」


言葉が出ないミナムに代わって、賞賛の嵐のジェルミ。



 


「ホント?ジェルミ?」


「うん!!お姫様みたいだよ…ミナムってばミニョがあんまり綺麗だから何もいえないみたいだね」


口惜しいけど図星だ。



 


「オレとおんなじ顔なんだから綺麗なのは当たり前だろう!!」


ミニョの隣に立ち、iphoneでパチリ。


 


「あーずるい!!オレもミニョと撮る!!」


「だめだ!!兄貴の特権だよ」


ミニョの前ではすっかりお約束のやりとりだけど、今日はジェルミに感謝してるんだ。


 


だって…寂しい顔をミニョに見られずに済むからね。


 


小さな頃から苦労ばかりしてきたミニョ。


自分の身代わりで、いきなりアイドルバンドで活動もしいてしまった。


まあ、その代わり兄が嫉妬するくらいにいい男に溺愛されまくってるけどね。


 


「ミニョ…旦那に泣かされたら、いつでもいえよ!!」


ちょっと強気に兄らしい発言をすると・・・


 


「その心配は無用だ!!」


もう一人の主役のお出ましだ


 


=====================================

シヌミニョですが、肝心のシヌが出てきません。
お許しくださいませ…続きは、妄想できればがんばります。 


 


 


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