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ROULETTE  31



このまま永遠に閉じ込めて、隠してしまいたい。


そう思ったら、更に腕に力が入る。


 


「あの…シヌオッパ?少しだけ苦しいです」


「ごっごめん…加減できなくて」


小さく漏らしたミニョの言葉にはっとしたシヌは、慌ててパッと手を放した。


気持ちが舞い上がってミニョがあくまでも病人ことを忘れていたことを反省する。


すると、今度はミニョが落胆の表情を見せた。


 


「違います…あの…」


控えめにおろされたシヌのシャツの袖口を、そっと掴む。


 


「じゃあこっちなら、いいかな?」


「はいっ」


シヌがミニョの指先に触れると、少し恥ずかしそうだけど嬉しそうに微笑んでくれる。


 


「あ~あ…いつまで二人の世界に浸ってるんだろうね?」


「いいじゃないの?そっとしときなさいよ」


「まぁ、彼女なしには目の毒だよな」


カイル、リタそしてアレクの間で交わされた会話のことなど、二人には全く届いてなかった。


 


それからミニョに合わせてゆっくりと歩くと、再び車椅子へと誘導した。


「シヌオッパ、私まだ平気です」


「わかってるけど…少しづつね」


 


頑張り屋とミニョだから、このまま自力歩行で過ごしたい思いは理解できたが無理は禁物である。優しく諭すと、渋々だが納得したようだった。


何より、ミニョのこの姿を見せたい人物が他にもいのだから。


 


「シヌ、交代よ!」


ミニョの車椅子は、再びリタの手に渡ってしまった。


困惑するシヌに、料理の準備ができるまで庭を案内するのだと言う。


 


「自慢じゃないけどその辺の花屋さんに負けないくらいなのよ?ミニョお花は好き?」


「はいっ!!大好きです」


リタの言葉に、目をキラキラ輝かせるミニョ。


 


「良かった。じゃあ行きましょうミニョ?」


ひらひらと手を振ると、車椅子のハンドルを回すミニョと並んでフラワーアーチへと向かったのだった。


 


そんな二人の後姿をしばらく見つめるいると、ごつんと背中に当たる感触。


思わず振り向くと、カイルとアレクがニヤニヤしながら立っているのだ。


 


「そんな顔して、すぐ戻ってくるよ。もしかして嫉妬?」


「えー?そうなのか?相手はリタ相手だぞ!!その心配は無用だからな?」


面白がって勝手に盛り上がる二人に対し、シヌは苦笑しながらもゆっくりと首を横に振った。


 


「そんなんじゃない…改めて女の子だなって思っただけだから」


シヌの記憶の中のミニョは、ミナム時代の姿が色濃く残っている。


女の子としての記憶は、わずかしかない。それも苦い思い出だ。


 


「おかしな奴だな?どこからどう見てもあの子は女の子だろう?」


「それは…そうだけど…」


男として過ごしていた日々のことなど、アレクに説明できるはずもない。


 


「そんだけ可愛いってことだよね?はいはいそれ以上は本人にいいなよ?ごちそう前に胸やけしちゃうだろう?」


「ああ、そういうことか?」


カイルがややオーバーに口元を覆うと、アレクは不思議に納得したようである。


 


しばらくすると、膝の上にいっぱいの花を乗せたミニョがリタとともに戻ってきた。


 


「シヌオッパ!こんなにきれいな花をたくさんいただきました!!」


「良かったね。」


満面の笑みを浮かべるミニョを見ると、こっちまで嬉しくなってしまう。


 


(花よりもミニョのほうがずっと綺麗だよ)


本当はそう言葉をかけたかったけど、みんなの手前ぐっとこらえる。


不意にミニョの手からこぼれた一輪を咄嗟にキャッチしたシヌ。


見ると棘の少ない品種の薔薇のようで、手早く抜き取るとミニョの髪にそっと差し入れた。


 


「え?シヌオッパ…これ?」


「だめだよ!よく似合ってるのに触ったら崩れちゃうだろう……」


髪に手をやるミニョを制しながら、思わず出た言葉。


あの日のミニョも、本当にきれいだったことを思い出す。


二人きりの幸せなひと時…だがそれは一瞬で終わりを迎えたことも。


 


「シヌのいう通りだけど、それだけなら動いただけで落ちちゃうわ。行きましょうミニョ」


リタが何か思い立ったように、屋敷の中へミニョを連れていった。


ほどなくして戻ってきたミニョの髪には、傍から見てもさっきよりしっかり薔薇の花が留まっている。リタがしっかりと装着してくれたのだろう?


 


「あれ?リタも?」


少し遅れて出てきた姿にいち早く反応したのはアレクである。


 


「べっべつに…ミニョがお揃いにしたいっていうから…すぐに取るわよ!!」


きまり悪そうなリタに、アレクが近づくと耳元で何かをささやいている。


内容ははっきりとわからないが、顔を赤らめたリタの反応を見るとほめ言葉に違いない。


 


あっちの二人が良い雰囲気なので、ようやくミニョのそばにいられると思っていたら


使用人がリタのもとへと小走りでやってきたのだ。


 


「ああ…彼らなら大丈夫…お通しして?あそれからいすを2つ追加してね」


「かしこまりました…すぐにお連れいたします」


恭しく頭を下げた使用人は、しばらくして再び現れる。


良く知った人物を案内しながら…


 


「みんな!!今日のスペシャルゲストの到着よ!!」


リタが声を上げると同時に、ミニョがくるりと車いすの向きを変えた。


 


そしてその人物をとらえた瞬間…驚いて固まってしまう。


次に瞳からあふれそうな涙。


 


「オッパ?本物?」


「うん…だまっててごめんな…ちょっとしたサプライズだよ」


笑いながら、ミニョのもとへと近づいてくるミナム。


 


「もうっオッパったらいつも突然なんだから!!」


泣き笑いのミニョを見て、シヌは一計を講じる。


 


「あんなこと言ってるから?リベンジしようか?」


その言葉に告りとうなずいたミニョは、シヌから差し出されて手をしっかりと掴むと


車いすからゆっくりと立ち上がった。


 


そしてミナムのところへ、静かに歩みを進める。


「ミニョ…お前?」


驚くミナムの口からやっと出たのは、その一言。目には涙があふれている


 


「うん…少しだけど」


「そう…そうっかあ…良かったな」


言葉は少ないが、双子ならではの不思議な空気をその場にいたもの全員が感じただろう。この時の二人の間には、シヌすらも這い込めないと思ったほどだ。


 


だが…そんな感傷的な思いはすぐに一変する。


 


「あーミニョが立ったー!!歩いてるよーどうしよう!!オレ…オレすっごく嬉しい」


泣き笑いのジェルミが、ゴシゴシと手で涙をぬぐいながらミニョを見つめているのだ。


 


「バカ…そのネタ古いんだよ…それに泣きすぎだって…兄貴の俺よりも…」


「良いんだよ…嬉しいときは…悲しいときよりもたくさん涙が出るんだからね」


目の前のミニョが呆気にとられるほど、子供のように泣きじゃくるジェルミ。


そしていつしかミナムも負けないくらいに、涙を流していたのであった。


 


======================================



思いが通じ合った後の、幸せなひと時です。


(うっかりミニョちゃん窒息しかけましたが)


どんな綺麗な花も、ミニョちゃんには敵いません。


だけど…ふとした瞬間に脳裏に浮かぶ過去に痛みです。


今回はミナムに歩行サプライズがありました。


なかなか会えない分嬉しかったでしょうね。


でも、それに負けないくらい喜んでいるのはジェルミ。


その気持ちを誰よりも理解しているシヌでした。


 


 


 


 


 


 


 


 

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ROULETTE 30


カイルとほぼ同時に、アレクの車も到着した。


 


「お待ちしておりました。皆様こちらへ」


なぜか屋敷の中に入らずに、そのまま裏手に移動となる。


 


今日は天気が良いので、野外でのパーティをするのか?


ミニョの体調はどうなのだろう・・・


考え事をしながらすすむと、リタとともに席についているミニョがいた。


 


「ミニョ!」


「シヌオッパ…こっこんにちは」


皆がいるのに、つい大きな声をあげてしまったことにはっとする。


案の定、ミニョは少し恥ずかしそうに俯いているのだ。


 


「さぁ、早く座りなさいよ!」


リタに促されて席に着くと、すぐに飲み物が運ばれてきた。


 


「じゃあ、始めましょうか?」


ドラマのヒットと、シーズン2決定を祝うリタの言葉。


 


「まぁ?この私が出ているのにヒットしないなんてありえないけどね」


「おいおい・・・主役はオレだろう?」


リタの言葉に物申すのは、アレク。


揃っていい性格をしているものだ。


 


「そして・・・」


一旦言葉を切ると、リタは隣に座っているミニョを見つめて


 


「そして可愛い妹に巡り合わせてもらった幸運に、乾杯!!」


驚いたことに、韓国語なのだ。


ミニョの表情ははっきりとは分からないが、喜んでいるに違いない。


 


それに引き換え言葉の分からないアレクとカイルは、グラスを上げるリタを


見てそれに続く。


 


ノンアルコールのシャンパンを飲むと、再びリタが言葉を発した。


 


「シヌ?ミニョにあわせてくれたあなたに、とっておきのサプライズがあるわ。


立って・・・」


「はいはい…分かったよ」


何をされるか分からないが、このお嬢様に反論するのは無駄な抵抗だろう


やれやれといった表情で、リタの示す位置へと移動したシヌ。


 


だが…その表情はすぐに驚きへと変わる。


 


 


リタに手を引かれたミニョが、ゆっくりと近づいてきたのだ。


 


「大丈夫?」


「はい…ありがとうございます」


少しふらつくミニョに優しく声を掛けたリタの手が、離れると


一歩また一歩とシヌの目の前にやってくる。


 


「ミニョ…歩けるようになったのか?驚いたな。気付かなかったよ」


「ごめんなさい…今まで隠していて…まだ少しなんですが」


周りを見ても反応が薄いところを見ると、既にこの事実を知っていたようだ。


ミニョが自分の足で歩いていることは嬉しいのだが、一番先に知らされなかったことがおどこか寂しく思う。


 


「おいっシヌ拗ねるな!!オレも知ったのは今日だぞ」


「ミニョ!!余り長くそうしていると疲れるから早く」


微妙な空気を察知したアレクとリタから、掛けられる言葉。


 


 


「シヌオッパ…私…自分で歩けるようになったら…伝えたいと思っていたことがありました」


大きく息を吸い込んだミニョ。


いったい何を話すのだろう?シヌには全く見当も付かない。


 


「私…事故にあってシヌオッパのことを忘れてしまいました。本当にごめんなさい」


「良いんだ…それはもう…」でも!!」


気にしなくても良いというシヌの言葉を大声で遮ったミニョは、更に話を続ける。


 


 


「でも…私は…以前の記憶が無くてもまた好きになりました」


「え?今…なんて?」


ミニョの口から出たのは、到底信じられない言葉。


聞き間違いに違いない。


 


「シヌオッパが好き…こんな私でも、もう一度受け入れてくれますか?」


「ミニョ…本当に本当にオレのこと?」


「はい…好き・・・好き・・・大好き…信じてもらえましたか?」


潤んだ目で見つめるミニョを、そっと胸の中に閉じ込めたシヌ。


 


かつてどれほど思い焦がれても決して自分のほうを見てくれなかったミニョが


こうして腕の中にしっかりと存在している。


これまで生きてきた中で一番の幸福だと思えた瞬間だった。


 


その嬉しさのあまり…


ミニョからでた“もう一度”と言う言葉の意味を深く考えられなかったのは


仕方がなかったのかもしれない。


 


======================================
 


漸くここまで、書けました。


今のミニョちゃんにとって、シヌはフィアンセなんです。


自分なりのけじめとして、告白するタイミングを計っていたのでリハビリに励んでいました。


 


全くの不意打ちだったミニョちゃんの告白に、シヌは驚きと嬉しさでいっぱいです。


このままでは終わらないと思いますが・・・一応の区切りとしてかけたと思います。


 


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ROULETTE 29


ミニョは、ある決意をずっと胸に秘めていた。


 


その為に、以前よりもハードなリハビリメニューをこなす日々。


ロケ後のシヌが会いに来てくれても、睡魔には勝てないことがたびたびあった。


 


だがそんなミニョの秘め事は、たまたま会いに来たカイルによって、露呈してしまう。


 


“え?ミニョ…すごい”


“あっその…これはシヌオッパにはまだ”


“大丈夫だよ…二人の秘密だね?”


ミニョが必死に口止めを頼むと、いたずらっ子のように笑ったカイルであった。


 


ミニョの努力の甲斐あって、日に日に良くなっているのが実感でき


それが更に、良い成果に繋がってゆくのだ。


 


“ねぇパーティの日にさぁ、シヌにその姿を見せてあげようよ?”


“え?それは…まだ”


心の準備が出来ていなかったミニョは、カイルの申し出に戸惑ってしまう。


だが、ミニョをずっと見守ってきたシヌへのサプライズだといわれて決心したのだった。


 


そしてパーティ当日。


 


ミニョを迎えに来たのは、リタ。


前日シヌから連絡があったので、驚くことはなかったが


ほんの少し寂しく思う。


朝電話で話したばかりで、後で会えるというのに…ミニョのとってシヌの存在がそれほど大きいのだ。


 


「すみません…リタさん」


「もう、言ったでしょう?オンニだって!!」


英語のミニョに対し、リタはしっかり韓国語で返して来たのだ。


 


「フフどう?結構なものでしょう?」


「はいっびっくりです」


いつの間に覚えたのかと聞くと、教え方の特に優れている家庭教師を読んで


撮影後びっしりレッスンしたという。


当初は翻訳機を使ってのやり取りを考えていたようだが、やはり直接会話をしたいという強い思いからだった。


 


「こんなに真面目に勉強したことなんて、もうどれくらいぶりかしらね?」


トップ女優として多忙を極めるリタが、ここまでしてくれたことにミニョは


感極まって涙ぐんでしまう。


 


「ほら?そんな顔しない。これから楽しいことが待ってるのよ!!」


ミニョが車椅子を押しながらVIP専用口から出ると、自家用のリムジンへとそのまま乗せてもらった。


 


そして…ミニョがつれてこられてリタの自宅といえば


 


(ここ…何?)


林を抜けてどれほど走らせたのか


 


ミニョの眼前には、自身が通った学校よりも余裕で大きいであろう建物が飛び込んできたのである。


 


車から降ろした車椅子のミニョを、自ら押しながら入り口へと進むリタ。


 


「おかえりなさい。お嬢様…私共が」


「良いのよ…この子は私の大切な妹のような子だから…」


出迎えた使用人達が役目を代わるといっても、首を横に振り決して譲らなかった。


 


豪邸の広い廊下を過ぎ着いた部屋には、ショップ顔負けの洋服に靴やバッグが並べられていた。


 


「さぁ?今からミニョに一番似合う服をチョイスしてあげる」


「言え…私は…このままで」


張り切るリタに対し、固辞をするミニョ。


 


実は数日前にシヌからのプレゼントがあったときも、断ったのだ。


それでなくても入院費や諸々で負担をかけているというのに、これ以上甘えてしまっては申訳ない。


「あのね?ここにあるのは全部もうサイズが合わなくて私が着られなくなったものなのよ!!このまま捨てられちゃったらかわいそうだと思わない?ねっだからお願い来てちょうだい」


手を合わせてウィンクをするリタの言葉は更に続く…


 


「とびっきり可愛くなって、シヌを驚かせてあげましょう」


「リタオンニ…ありがとうございます」


ここまで言ってくれるリタの好意を素直に受けることにしたのだった。


 


 


一方のシヌは、ミニョの迎えの役割をリタに取られて手持ち無沙汰だった。


ミナムとジェルミの飛び入りを承諾する際の、条件がこれだったのだ。


 


“女の子は、支度だっていろいろあるの!!”


そういわれてしまっては、何もいえない。


せめてパーティドレスを送りたかったのに、頑なに拒んだミニョ。


慎ましく控えめなミニョのこととわかっていても、本音はもっと甘えて欲しい。


人間の欲というのは、限りが無いとつくづく思い知らされるのだった。


 


だが肝心の飛び入り二人は、ジェルミがどうしても外せない打ち合わせが入ってしまい


少し遅れるとい連絡を受けたばかりである


ミナムは身体が開いていたのだが、ジェルミの“先に行くのはダメ”と


強く言われているという。


『大丈夫だ…焦らずに来いよ・・・』


『うん・・・じゃあね』


 


通話を終えた後、片づけを始めていると


にぎやかな訪問者がやってきた。


 


「シヌ!!…そろそろ行くよ…」


「え?まだ早いだろう?」


パーティの開始は午後からだと聞いていたシヌは、早朝からやってきたカイルを見て戸惑いを隠せない。


 


「良いから…アレクが車で待ってるだから」


強引に腕を掴まれたシヌは、訳もわからぬまま車に押し込められてしまう。


 


「じゃあ…アレクよろしくね♪」「ああ…遅れないで来いよ…」


「おぃ…話が見えないぞ」


カイルのアレクのやり取りの中、一人蚊帳の外状態のシヌ。


 


アレクの向かった先は、ブランドのショップ。


 


「おいっいきなりつれて来てなんなんだ?」


一方的に告げたアレクは、ひたすら手元の携帯に集中してシヌの言葉に耳を貸さない。


 


しばらくして…


「決まったぞ…何も聞かずに…これに着替えろ!!」


完全に命令口調のアレクは、シヌの反論に耳を貸すはずも無く


渋々といわれるまま、用意されたスーツを身につけたシヌ。


 


「はぁ…なるほ似合う…ムカつくほど王子だな」


「無理やり着させられたのに、その言葉はないだろう?」


ため息を漏らしながら、ますます訳の沸かないことも呟くアレクにシヌは精一杯の抗議をするのだった。


 


 その頃カイルは、外出届けの書類を提出に病院を訪れていた。


口頭で許可をもらっていはいるが、書面で交わさなければならないことをミニョはともかく周りもすっかり忘れていたのは、いただけない。


 


案の定、看護士長からは小言を言われてしまう。


もちろんそんなことは、今のカイルには右から左へ余裕なのだ。


 


だが鼻歌交じりで戻るカイルは、次の瞬間一気に顔色が変わる


 


(え?アイツ…?)


一度見ただけで忘れられない強烈な存在感を放つ人物と、病院の入り口ですれ違ったのだった。


 


激しく動揺しながらも、ハンドルを握ったカイルはリタの家へと車を走らせる。


そして到着する頃には、いつもの笑顔を必死に貼り付けていたのだった。



===========================================================================
 


ついにやって来たパーティ当日です。


ミニョちゃんを迎えに行く役をリタさんに取られてしまったシヌ。



ほんの少しでも離れていたくないのでしょうか?

リタさんは、ミニョちゃんをドレスUPするために頑張ってくれました。



本当に可愛がってくれます。



一方のシヌには、アレクがついてましたし・・・




和やかな雰囲気の中、


カイル君は、あの方とすれ違ってしまいました。


存在感ハンパないですからね・・・


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ROULETTE 28


リタ主催のパーティが近日に迫ったある日。


 


パーティのことで話があると言い出したシヌに、リタの表情は変わった。


 


「ちょっと何よ?まさかミニョが来れないなんていわないでしょうね」


「いや…そうじゃなくて…」


彼女の余りの剣幕に、シヌは怯みながらも続けた


 


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


それは、早朝のジェルミからの電話に遡る。


『シヌヒョン!オレとミナムまたロケでそっちに行くんだよ。でね、なあんと


オフの日がパーティの日と同じなんだ。すっごい偶然だよね?』


見え見えのことを平然と言ってのけるジェルミにシヌは、苦笑しかない。


偶然も何も、パーティーの日程を根掘り葉掘り聞いていたのは他ならぬジェルミだ。


 


『わかった…2名の飛び入り参加が出来るか聞いてみてやるから』


『ええ…いいの?シヌヒョン大好き!!じゃあ連絡待ってるよ』


言いたいことだけ言って、その通話はすぐに終わってしまったのだった。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


だが、相手はリタである。


承諾してもらえるかどうかが不安であった。


だが、それはシヌの徒労で終わることになる。


 


「そう別にいいわよ…ミニョの双子なら会ってみたいし…もう一人の子もシヌのバンド仲間なら問題ないわ」


「ありがとう!!」


以前のリタだったからわからないが、ミニョと知り合ってからは確実に変わった気がした。


 


その場でジェルミに連絡を入れると、テンションMAXのジェルミの声が聞こえてきた。


するとなぜか携帯をスット引き抜かれる。


 


「おい、カイル?」


シヌが止める間もなく、勝手に話をしているのだ。



  



Hello! Do you know who I am?



いきなり相手が変わってジェルミは少し困惑していたが、すぐにカイルの声に気付いたようだ。



「すごい!良くわかったねキミは天才だ。それにしてもラッキーだよね?本当はお呼びじゃなかったのにミニョの兄さんのコネがあってさ。じゃあねー!!」



言いたいことが終わったのか再びシヌに戻った電話の向こうからは、ジェルミの怒りの声が響き渡った。



 


『シヌヒョーン!!あいつ生意気だよー!!オレを馬鹿にしたんだからー』


「わかった。興奮するな」


ジェルミを宥めるのを、みてカイルはクスクス笑っている。


 


「カイル、ジェルミを挑発するなよ」


「だってぇーからかうとムキになって楽しいんだもん。子供みたいでさ」


シヌの苦言もどこ吹く風のカイル。


もっともシヌから見れば、二人は良く似ていると思うのだが。


 


その日の撮影は、思ったよりも長引いてしまう。


終わった足でミニョの病室へ向かうが、生憎既に夢の中。


それでも穏やかな寝顔に、シヌはほっとするのだ。


 


見つめすぎていたせいなのか?ミニョがぱちりと目を開けてしまう。


 


「シヌオッパ?」


「ごめん…起こしちゃったね?だめだよそのまま」


起き上がろうとするミニョを、そっとベッドに戻すシヌ。


 


「だいじょう…ぶです…すこしくらい…せっかくシヌオッパがきてくれているのに」


「だめだよ?パーティの前に体調崩したら、外泊許可下りないだろう?おとなしく言うことを聞いて?」


不満げなミニョを宥めると、そっと瞼に指を乗せる。


 


「魔法をかけてあげるよ?こうして3回ゆっくりと触れるとまたすぐに眠くなるから」


とっさに言ってしまった、結構恥ずかしい言葉。


ミニョと再会してからは、自分でも驚くくらいの甘い言葉が出てしまうのだ。


 


だが程なくミニョから静かな寝息が聞こえてきたところをみると、効果はあったようだ。


覚醒しきってなかったので、そのまま眠りに付いたのだろう。


 


「朝までゆっくりおやすみ…眠り姫」


額の髪をかきあげると、額にそっと唇を寄せる。


その後はゆっくりと、病室を出て行ったのであった。


 


アパートに着いたそのタイミングで、ミナムからの着信。


『ごめん…ジェルミの奴無理言ったんだろう?オレがうっかりパーティの件を話してしまったから』


「気にするな…ミニョも喜ぶよ。会うの久しぶりだろう?まだ言ってないんだけどね」


一瞬目を開けたときに伝えたら、そのまま興奮して眠れないだろうと思い敢えて言わなかったシヌ。


だが、その判断はミナムにとって好都合だったという。


 


『だって…仕事でのスケジュールの変更なんて良くあることだろう?がっかりさせたくないんだ』


ミニョの心情を慮る発言に、シヌも納得する。


 


「そうか…まあミニョへのとびっきりのサプライズにするのも、良いかもな」


『うん…だから、当日まで内緒にしておいてよね…』


互いにミニョの反応を楽しんでいたのだが、いきなりミナムが真面目な口調に変わった。


 


『本当シヌヒョンにはミニョンことで世話になりっぱなしで…ごめん…これからもお願いします』


改めてそういわれるのは、おそらくシヌがミニョにとって兄の同僚に過ぎないからだと分かっている。


 


もし…恋人だったなら…


その時、ふと自分でも気づかぬうちに口に出でしまう。


 


「ところで、テギョンはどうしてる?」


『え?ああ…相変わらず仕事ばっかりだよ…海外も多くて殆ど帰ってこないんだよね。』


シヌがここへ来てから、互いのやり取りは1度としてないというのも驚く


 


尤も宿舎に住んでいるときですら、仕事以外での会話はそうなかったのだ。


二人の中が近づいたのは、ミニョがミナムとして活動していたときくらいだろう。


 


『社長も心配してたんだけど、普通に休めって言っても聞く耳持たないから、仕事の一環としてミュージカルを見に行かせることにしたんだって…あれで結構考えてるんだよね?』


「そうか…社長が…」


先日の電話の様子を思い出したシヌは、これで合点がいった。


いざとなれば、しっかりと自分たちのことを考えてくれている人なのである。


 


「それとね…「ミナム…!!」」


何かを言いかけた向こうから聞こえてきたのは、ジェルミの声。


 


『どうした?』


「あっううん…会ったときにゆっくり話すから」


ジェルミに聞かれたくなかったのか、ミナムはやけに慌しく通話を終えてしまったのだった。


 


切れた携帯を見つめるシヌは、ミナムからでた“デイリー劇場”の名になぜかわからないが妙に引っかかりを覚える。


シヌが住んでいる場所から車で時間ほどの劇場。


 


これまで遠く離れていたテギョンが、突然近くにくることに


違和感を感じて仕方がなかったのだった。


==============================================================================


ミニョちゃんとシヌの絡みが少なくてすみません。
ジェルミのパーティ参加は希望は容易に叶いました。
カイル君はジェルミが来るので、牽制してるのかもしれませんね。
キャラが被るし、お互いシヌ大好きなので・・・火花バチバチ

リタさんも、飛び入り参加を快く受けてくれました。
すっかり優しいオンニです。

一方ミナムは、いけなかったことを考える優しいお兄ちゃんです。
ミニョちゃんを期待させたのに、がっかりさせてくないですよね。

何気なく出たテギョンさんの話題。
この段階でミナムもテギョンさんの詳しいスケジュールは、把握してませんでした。
このぎこちない関係があるからこそ、今後の展開に繋がってゆきます。
テギョンさんの活躍をどこかで待っている不思議な自分がいます(爆)


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ROULETTE 27



一方AN企画の社長室では―


 


「ふぅ…」


アン社長は、滅多に吸わないタバコを手にしていた。


 


昨日のシヌからの電話。


シヌのキャリアアップのためには、ありがたい話だ…


これまでグループ内でも、どこか一歩引いていたシヌ。


今回のドラマには、演技を通して今までに無い意欲を感じるのだ。


シヌの出演シーンも当初より、大幅に増えていると聞く。


社長個人としても、成長していくのは嬉しいことこの上ない。



 


もちろん、アン社長は他の3人のメンバーもその行く末を見守っている。


 


ジェルミとミナムは、最近コンビとしての仕事のオファーも増えてきた。


特にメインMCのジェルミは高評価で、視聴率も安定している。


 


残るは、リーダーであるテギョン。


彼の天才的音楽センスは、業界でも一目おかれるほど。


だが過去の偉大な音楽家もそうだが、大概天才と謳われる者は性格に多少の難がある。


 


テギョンもかつては手を焼いた。


他の意見には殆ど耳を貸さない。社長も例外ではなかった。


 


そんなテギョンに変化が見られたのは、ミナムが加入した頃。


表情が随分柔らかくなって、すぐに彼が作る曲にも影響を与える。


これまでにない、切ないメロディーが生まれたのだ。


 


そして、ライブでの予想外の行動。


ステージから降りてのハグには、誰よりも社長が驚いた。


相手の素性は明かさないが、恋人だと言う。


ライブの後しばらく会えなくなるから、我を忘れての行動だったと弁明。


 


リーダーにあるまじき行動とペナルティを課すところだったが、他の3人が必死にとりなすので厳重注意で済ませることにした


 


付き合いは順調に思えた。



そして1年後


『もうすぐ恋人を紹介するからな』


照れ笑いを浮かべるテギョンは、少年のように思えたものだ。


 


だが…


あるときを境に、テギョンの表情は以前の人を寄せ付けないものに戻ってしまう。


(もしかして別れたのか?)


即座に恋人の存在を思う。


男女の仲には付きものだと、そのときは深く気にも留めなかったが


そのダメージは予想以上だったのである。


 


それ以後とにかく尋常ない仕事量をこなすのだ。


もともと睡眠時間が多いほうではないが、12時間程度の睡眠が連日の上


時には徹夜もあったようだ。


 


『少しはゆっくり休め』


何度も忠告したが、より頑ななテギョンには届いていなかった。


 


昨日も疲れ切った様子で顔を出したので、本気で休暇をとらせなければならないと危惧したのだ。


そこで、海外のミュージカルを鑑賞することを提案することにした。


 


『オレは…興味ないが』


『そういうな…実はこっちでリメイクの話が出ていて…そうなったら音楽担当はお前に任せることになるから』


噂レベルではあるが、そうでも言わないということを聞きそうも無いテギョン。


 


『そうか…まぁ考えてみる』


余り気乗りしないテギョンを見て、諦めてきたところだったのだ。


 


そして再び事務所にやって来たテギョンは、上映場所を尋ねて来た


 


「ああ…LAのデイリー劇場だ。行く気になったのか?」


だめもとで聞いてみると、満更でもない表情を浮かべるテギョン。


 


「向こうでもずっとスタジオにこもってばかりだったしな…たまには違うこともしてみようと思う。」


「そうか…きっといい刺激になるぞ。そういえばジェルミとミナムも同じ時期にまたロケがあるんだ。偶然だな?結構近いぞ」


乗り気になっているテギョンに、たった今番組担当者から入った話をする。


 


「わかった…ところで、頼みがある」


改まって何を言うのかと思えば、向こうに行って数日休みを取りたいという。


 


「もちろんだ…いいか?命令だぞ!!しっかり休んで来い!!ああ遊びは程ほどにな!」


「わかっている…後はよろしく」


社長の言葉に、テギョンは見せた珍しい笑顔。


 


だからなのか?


これまで頑なに仕事ばかりしていたテギョンがの突然の変化を


深く考えることはなかったのだった


 


=================================== 


まるまるアン社長からの視点でした。


異国に居るシヌはもちろんですが、テギョンさんのことも心配している社長。


病的な仕事ぶりを見るにつけ、何とか休みをと思っていました。


これまで耳を貸さないたテギョンさんの豹変を、単純に喜んでしまいます。


 


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