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Little Wing 2




何年かぶりにひいた風邪は、翌日には熱はほとんど下がったようだ。


 


「大丈夫ですか?」
ゆっくりと目を開けると、心配そうに覗き込むミニョ。


「うん…ずいぶん楽になった…ミニョのおかけだな」


「それは良かったです…じゃあ朝ごはん…キャ」
ベッドから離れようとするミニョだったが、シヌの強い力に引かれて倒れこんでしまった。


「おはようのKISSを忘れているよ」
シヌは静かに目を閉じる。


「はっはい」
少しあせった声のミニョ…
きっと真っ赤になりならがら、キスをくれるに違いない。


唇が重なった瞬間そのままミニョの後頭部をしっかりと捕まえて、
昨日できなかったキスを思う存分堪能する。
はじめは緊張していたミニョも、次第にそのまま身体を預けてくれた。


このままずっとこうしていても…と思うが
宿舎では、みんなの目もあるから自粛することにした。


その代わりに…ミニョにはまだおねだり
引き出しから着替え一式を用意してもらう。


そして
「病み上がりで力が入らないんだ…脱がせて?」


「えっ?…でっでも」


「ほら…汗かいているし…このままだとぶり返すかもな」
その言葉を聞いてミニョは、ようやくシャツを脱がせにかかった。
必死になるミニョを見ていたくて、わざと身体に力を入れる。


「シヌヒョン…あの手を上げてください」
シャツを捲り上げながら、控えめなミニョ。


半裸が晒されると、もう幾度と無く目にしているのに真っ赤な顔をしている。
だからその初心な反応をもっと楽しみたくて・・・


「ねぇ?したは?」
ちょっとだけ聞いてみた。


ミニョは、目をしっかり瞑ってブンブンと頭を振っている。
まあこっちとしても、朝からしっかり反応している自身を見られるのは恥ずかしい…


「良いよ・・・もう終わったから」
そういうと、ゆっくり目を開けるミニョ。
露骨に安堵の表情を浮かべている。


ふと、昨日までなかった折りたたみベッドが目に付いた。


「あっあの…テギョンさんが使うようにって…その」
わざわざ持ってくれたらしい…
同じベッドで寝るのをそうまでして阻止したいのかなんて思ったけど…昨日の場合は仕方ないか。


手を繋いでキッチンへと向かう。


「シヌヒョンは、座っていてくださいね」
手伝おうと思ったけど、断られてしまった。
でも…こうして自分のために朝ごはんを用意してくれるミニョを見るのもいい。


早く…これがあたりまえになることを願う。


病み上がりだというので、ミニョが作ってくれたのはリゾット。
柚子の皮と絞り汁が入っていて、さっぱりとした味だ。


思わずお代わりを伝えると、すごく嬉しそうなミニョ。
心もおなかも満たされて幸せな時間。


後片付けも一人でやるというミニョだったが、半ば強引に手伝うことにした。


「だって…その方が早く終わって…一緒に居られるだろう?」
ミニョの耳元で囁きながら、耳朶をペロリとなめてあげる。


「キャッ」
ショックを持つミニョの手が滑ってしまった。
幸いセラミック素材だから、割れては居ないがちょっと恨めしそうな目で見られて反省。


その後は真面目に手伝居、早々に片づけを終わらせた。


朝食とはいえ、起床が遅かったので気がつけばもうお昼に近い。


「ミニョ…あと半日あるけど…どこかに出かける?」
とはいっても、近場のスポットは人が多い


ミニョとのことは、隠していないからシヌは構わないが
他の男達に易々と見せたくは無い。
「いえ…できれば今日は宿舎で二人で過ごしたいです」
ちょっとだけ顔を赤らめて話すミニョの、本当にささやかな願い。


結局…二人の思いは同じということ。


「じゃあ…ダラダラしよっか?」


「はい!!」
ミニョは今日一番大きな声をだした。


映画のDVDを見たり、ゲームをしたり


L.A.時代に、覚えたカードマジックを披露したらミニョは大興奮していた。
手先が器用なのは、本当に役立つらしい。


楽しい時間は、あっという間に終わりを告げる。


ミニョをアパートまで送り届けて、戻ってきたのは日付が変わるほんの少し前。


「ずいぶん元気そうだな…」
キッチンでハーブティ用意していると、やってきたテギョンはいつものように冷蔵庫から海洋深層水を取り出して一気飲み。
皮肉めいた物言いは変わっていないが、その表情は以前とは違う。


「ああ…おかげさまで…ああミニョにベッド貸してくれてありがとう」
一応お礼を伝えると、テギョンはにやりと笑った。


「気にするな…ミニョは寝相が悪いから病気のシヌのベッドで寝たら良くないといってやったんだ。あいかわらず素直だよ」


「やっぱり…そういうことか?性格の悪い奴だ」
予想通りのテギョンの答えに、シヌは分かりやすい舌打ち。
冗談と本気のハーフ&ハーフといったところだろう。


そしてお互い大笑いした後、テギョンが話題を変えてきた。
対談の依頼が来ているというのだ。


「対談て?誰?」


「ああ…相手の名前は知らないが…若手実業家だと…」
ビジネスと音楽の関係について語りたいらしい。


「リーダーのお前のほうが良いんじゃないか?」
素直に疑問を向けると…テギョンは困った顔をよこして来た。


「オレが相手だと緊張して話せなくなるからって…見た目が穏やかなお前を指名してきたようだ。本性を知らないって怖いなあ」
やけに面白そうな表情を浮かべているのは気のせいか。


明朝早くに、先方の使いの者が迎えに来るという。
(やけに根回しがいいな…)


ただ…病み上がりのため、いつもより思考回路が鈍っていたのだろう
明日に備えて、早めに就寝することにしたのだった。


「おはようございます…カン・シヌ様お迎えにあがりました」
上等のスーツを纏った男性が差し出した名刺には、TOJOコーポレーションと記載されている。


(日本企業なのか?)
日本語はそれなりに話せるが、ビジネス用語になると通訳が必要かもしれない。


車の中で翻訳アプリを探し始めていた。


しばらく走った車が向かった先は、空港。
「えっもしかして飛行機ですか?」
意外な展開にシヌが尋ねるが、運転手の男性はただ頷くだけだ。


「あの…パスポートが無いのですが…取りに戻らないと」
準備万端なシヌも、ここまでは用意していなかったのだ。


「大丈夫です…ファン・テギョン様からお預かりしておりますので」
顔色一つ変えずに、差し出したのはたしかにシヌのパスポート。


(どうして…あいつ昨日は何も言ってなかったのに)
すぐにテギョンに電話をするが、コール音のみ…


今日は新曲を作るといっていたから、電話には気づかないのか…


多少の不安を抱えながら空港に到着すると、渡されたチケット。


予想通り行き先は、日本。
グループとしていったことのあるのは、沖縄。


だが今回は、それとは真逆の北らしい。


「あちらの空港で、お迎えがありますので」
運転手の男性は、一言だけ言い残すと足早にその場から去っていってしまった。


(いったい何なんだ…大丈夫なのか)
状況が今ひとつ把握できないまま、向かうことになるとは…


そして…ミニョに連絡できてないことも、シヌには心残りだった。


新○歳空港には、約3時間ほどで着くらしい。
病み上がりで疲れていたシヌは、移動時間を睡眠に当てたのだ。


空港に着き、スーツ姿の若い男性が声を掛けてきた。


名刺に書かれていた名前は、“KANATA・TOJO”
どうやらシヌの迎えらしい。


「お疲れのところ、申し訳ありませんが現地まで2時間半ほどかかります」
流暢な韓国語で説明をする。


わけも分からず来てしまったシヌだが、とりあえずは腹をくくることにして
その青年から少しでも相手のことを聞きだそうと考え始めていた。


日本語で話しかけると、青年は少しびっくりながらも感心した様子だ。


「日本語お上手ですね…忙しいのによく勉強されて」


「いえいえ…まだまだです…TOJOさんこそ僕と同じくらいなのに立派ですね」
お互いに褒め称えた後本題に入ると、彼は少し苦笑しながら教えてくれた。


「実は…僕も相手のことは良くわからないんです。従弟に頼まれて場所を提供するようにと…」
仕事の関係で海外に居るのだが、一昨日突然の電話があったというのだ。
詳細も知らされぬまま、手配を任されたといって苦笑いを浮かべる。


初対面だが波長があったのか、車中で話が弾む。
車は中心部を抜け、山道へと進む。


(ずいぶんな田舎だな…どこまで行くんだ?)
少しばかり不安になってきたところに…世の前に町並みが広がってきた。


「ここは?」
目の前に広がるのは、ちょっと違った雰囲気の町並み。
尋ねてみると、北欧を意識したとのこと。
建物も当然それらを意識して情緒溢れるものとなっているのだ。


やがて車は、それらの建物の中でも一際大きな戸建ての前に止る。


「まだ…先方は着いてないようですね。申し訳ないのですが私はこの後商談があるので
このままお待ち下さい。」


「え…それはあの…」
初めての場所で、一人取り残されるというのは不安が募るのだ。


「建物の中には、本屋CDがありますし、自由に使って下さって構いませんので」
結局そのままシヌを一人残して、走り去ってしまったのである。


(ああ…何なんだ?いったい?)
こんなことなら、相手の素性をきちんと確認すべきだったと後悔する。


携帯を取り出すが、何度もでる圏外の表示…
連絡手段は…これでは無い。
何よりミニョに伝えずにここまで来てしまったことが、悔やまれる。
心配しているに違いないから…


そのまま建物の前に立っていては、不審に思われるかもしれないので
中に入ることにした。


外観もそうだが、内装も気の温もりを生かしたものが多くて
初めてだというのに、どこか懐かしさを覚えてしまう不思議な感覚だ。


そしてリビングの椅子に座って待っていると…


【バタン】
車のドアの閉まる音が聞こえた。


(やっと…相手が着いたか?)
どんな人物か…窓から覗き込むと…驚きのあまり言葉を失ってしまった。


自分が良く知っている男女の姿が見えたのだから…


======================================


長くなって、すみません。


良くわからぬまま、日本の片田舎にやってきてしまったシヌです。


この建物一帯は、ハルカ君の実家の藤城建設のものという設定にしておりますので
融通が利きます。


そして・・・シヌを迎えに来たのはハルカ君の従兄です。


藤城彼方といいます。
山の彼方の空遠くにちなんでつけたという、由来があります。

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