忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Little Wing 5



心地よい疲労感で迎えた翌朝、ミニョの腕をそっと外すとその可愛い寝顔にそっとキスを落とした。

その後、シャワーを終えて戻ってくるとメッセージが入っている。



『昨日は十分すぎるくらい堪能したか?早速だがそろそろ対談はじめようぜ』
相変わらずこっちの行動を見透かしたような発言。
それでも、いまの自分たちがあるのは間違いなく奴のおかげ…苦笑しつつ電話をかける。


10分もしないうちにやって来たロンの開口一番は
「シヌ、ハラ減った~なんか作ってくれよ」


一緒に住んでいたの頃のように催促してきたのだ。

「何だ?食べてきたんじゃないのか?」
呆れるシヌだがちょうどミニョが起きる前に朝食の準備をしようとしていたところ、二人分も三人分も同じだろうと思いキッチンに立つ。


「あっ一人分追加お願いしま~す」
ロンに続いてやってきたのは、ハルカ。


「全く…どっちかが作ればいいだろう?」
フライパンを動かしながら、つい漏らすシヌ。
ロンはともかくハルカならそれなりに料理が出来ると思えたのだ。


「だってロンにさーシヌさんの料理はマジ美味ィーって散々訊かされてたんだよね。
だからせっかくのチャンスを逃す手はないよ」
いたずらっぽくこっちに視線をよこして来た。


「わかった…ったく二人とも調子がいいな」
口ではそういいながらも、シヌは満更でもない。


やがて…慌しい足音が聞こえてきた。



「おっおはよございます」

やって来たミニョは急いでシャワーをしてきたのだろう。
声が上ずり髪の毛も完全に乾ききっていない。


「ちゃんと乾かしておいで…風邪を引いたら大変だろう?」
さりげなくミニョを促した。
もちろん半分は本心…だけどもう半分は頬が高揚しているミニョを見せたくなかった。

ハルカはもちろん…ロンにさえ。

どうしようもない独占欲は、もう抑えることはできないのだ


シヌのそんな気持ちなど思いもしないミニョは、素直に部屋をでると10分後に戻ってきた。


だが、何故か浮かない顔。
手伝う気満々だった彼女は、ほとんど出来上がっている様子を見てがっかりしたのかもしれない。

だけどミニョにお願いしたい大切な仕事があるんだよ。


「ミニョ…ちょっと味見して?」

小皿をひょいと渡すと、途端に嬉しそうな表情に変った。


「サイコーです」
親指をクイット立てるミナムの頃のポーズを見せてくる。


それが懐かしくて――
可愛いすぎて――

ロンやハルカが待ちわびていることなど、一瞬忘れそうになる。


「おーい、お二人さん?こっちは腹が減って倒れそうだぞ」
ロンがニヤニヤしながら見ていたので、急いで盛り付けた。


「あー美味い!!」
「ホントに美味しい、予想以上だよ」
ロンとハルカはものすごい勢いで食べている。
そして二人同時のお代わりを要求で、こうしてみると良いコンビだと思えた。


「いいなぁ…ミニョさんはこんな美味しいものをいつでも食べられるんだね」
「え…はい…本当は私がもっと上手だったらいいんですけど」
ハルカの言葉に、ミニョは少し複雑な表情を浮かべる。


ミニョがいつも幸せそうに食べてくれるから、喜んで作っていたけど
もしかして心の中で気にしていたのかもしれない。

だから、後片付けを申し出たミニョに任せて少し席を外した。


ところが戻ってくると、キッチンにいつの間にかロンがいる。
あのロンが、食器を洗っているのだ。


(恐ろしく似合わないな)

だが、当人は結構楽しそう。


「もうっロンさんたら、洗剤を入れすぎです。濯ぐ水が勿体無いじゃないですか!!」

「ハイハイ…厳しいな」

ミニョの指摘を素直に聞くロン。
二人は時折視線を合わせて笑っている。



「ロン…悪かったな。代わるよ」

さりげなくポジションチェンジのつもりだった。


「……ああ…いいところに来た…助かったよ」
手を止めたロン。
一瞬の沈黙に違和感を覚えたのが、ミニョの笑顔を独り占めしたくて
すぐに忘れてしまったのだった。



「さあ…腹ごしらえ済んだし、はじめようか」
ロンがパンと手を打つ。


いつの間に準備したのか、ビデオカメラもセットしている。

本格的な機材を見て、社内報とはいえレベルが違うことを実感した。


「あの・・・じゃあ私は向こうの部屋で」
「ミニョさん…この二人の対談なんてプレミアものだよ…見物しようよ。これでも食べながら」
気を利かせて席を立とうとするミニョに、ハルカが箱を渡しながら声をかけた。


「わぁ…美味しそう!!また食べられるなんて幸せです」
どうやら…例のスイーツのブランドのケーキのようだ。


「プティフールを特別に頼んだ、種類をたくさん食べられるようにね!!」

ちょっと得意げなハルカだ。


「おいシヌ…スイーツ小僧に妬くなよ」
二人から目を話せないシヌに、ロンが揶揄してきた


だけどその指摘は少し違う。
嫉妬の対象は、スイーツそのものなんだから。


そしてようやく対談が始まる。


【ロックとビジネスの関係について―】

それが今回のテーマだ。


そんな俗っぽい話をするかと思ったが、キーファーグループの時期総帥のロンにとっては重要な話である。

違法DLが蔓延りCDの売り上げが落ちる中、バンドの存在証明はライブにある。

そしてそれには、しっかりとしたテクニックに裏打ちされたものであるべきだと
熱っぽく語るロン。

そう言えば、KEIFER時代はこれでもかというくらいリハーサルを繰り返したいたことを思い出していた。

いつだって最高のパフォーマンスを見せるため…


最近は耳や目が肥えたファンが多い。
納得できなければ、すぐに批判に変わるだろう。
だが…逆に納得させられれば、注がれる賞賛の声。

KEIFERの揺ぎ無い人気はそこにあり、決して安価ではないプレミアムチケットも、あっという間に売り切れるのだ。


もちろんロンのカリスマ性は、他の追随を許さない…

『見せ掛けのメッキなんか、剥げたらそこで終わりだ』
それが口癖だったのだ。

生演奏が困難なTV出演でも、ライブにこれないファンのためにと
決して手を抜かないのだ。


ただ…ロックバンドが市民権を得ているアメリカと比較して、
自分たちはどうだろう…
人気があるとはいえ、その位置づけは…まだまだである。


A.N。JELLに続くバンドがなかなか育たないのが。
練習生の中で希望を聞くと、殆どボーカルとギターに集中する。


特に人材不足になるのはドラマー。
後方にいて、注目度はどうしても低い。

加えて本格的なドラムセットは、それなりの価格のため
アマチュアがそろえるには負担であり、練習場所も必要だ。


「だから…それは環境が整っていればいいだろう」

ロンは笑いながら言う。

「いつだって思う存分練習ができれば、問題はないじゃないか?」
言葉で言うのは簡単だが…実際それができないから皆苦労するのだ。


「オレを誰だと思ってるんだ?」
自信たっぷりで語られたその言葉


音楽学校の設立。
最高レベルのあらゆる機材を揃えて、いつでも自由に使えるようにする。
もちろん音楽だけじゃない。
世間に出ても困らない知識は、しっかりと叩き込む。


奨学金制度ももちろんあって、才能があっても経済的に苦しいものも
音楽の道を諦めることがないように

さらに有望な生徒達でバンドを組ませ、バックアップもする。


だけど…売れる奴らはほんの一握りなのだ。

殆どは挫折を味わう。


「そのときはキーファーグループで働いてもらって投資した分は何年かかってもキッチリ回収するから」

はっきり言い切ったロン。


そこで、いったんカメラを止めた。


「まぁ…こんなもんだろうなぁ。あとは広報担当の奴が適当に纏めるだろうから」

「おいおい…オレはもっとその話が聞きたいんだけどな」
ロンのもうひとつの表情も、シヌには大いに興味深かった。


だが、ロンは対談の第2弾にとっておくと嘯く。


「次回はまともにアポを取れよ」

「おまえなぁ…俺の楽しみ奪うなよな」
一応釘をさしたつもりだったのに…ロンと来たら相変わらずの答えだった。


何はともあれ、一応目的は済んだわけだ。


早速ミニョの所へ戻ると、最後のケーキを食べ終えたところだったようだ。


ふと見ると、口端にクリームの残りがある。
すばやく指で絡めとって、ペロリ。



「うん…甘いな…オレはこれで十分だ」

「もっもう…シヌヒョンたら皆さんの前で恥ずかしいです」
シヌの言葉に、ミニョは真っ赤になって俯いている。

きっと今夜のミニョの身体は、一段と甘い味がするに違いないとぼんやりと考えていたのだった。


======================================

キリが良いので、一旦ここで終わります。

音楽学校の設立は、まだ先のことでしょうが…

もちろんロンの構想の先にいるのは、シヌです。
シヌ大好きですからね。

一方・・・そのロンに対してシヌはミニョちゃんを無意識に隠そうとしています。
やっぱり、独り占めしたいですよね


拍手[27回]

PR
<< Masquerade 2 850 |  849 |  848 |  847 |  846 |  845 |  844 |  843 |  842 |  841 |  839 |  Little Wing 4 >>
HOME
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
[09/25 まゆ]
[09/24 ゆぅぺん]
[07/06 まゆ]
[07/05 まるちゃん]
[06/01 まゆ]
最新記事
(05/11)
(02/12)
(02/12)
(12/28)
(12/28)
(12/04)
(11/15)
(11/02)
(11/02)
(10/21)
プロフィール
HN:
まゆ
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
忍者カウンター
忍者アナライズ
フリーエリア
◆ Powered by Ninja Blog ◆ Template by カニコ
忍者ブログ [PR]