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ご挨拶

出遅れて申し訳ありません。


当ブログ管理人の『まゆ』ともうします

このブログは、『美男ですね』のシヌミニョを扱った
妄想二次創作ブログの別館です。


関連する版権元様とは一切関係ありません。
シヌミニョONLYのため、苦手は方は閲覧されない方が懸命に思います。
でも、基本テギョミニョありきでシヌミニョへシフトするパターンが殆どです。


元来読む方専門で、文章書くのは超が付くほど苦手なのに
無謀ともいえる創作に手をだしています。


よって誤字脱字や、おかしな文章表現多々あるかと思います。
広い心で、読み進めていただけると幸いです。


なお、ブログ内に掲載してある文章の無断転載は禁止させていただきますので
よろしくお願いします。


パスワード付き記事に関して・・・



現在のところ、クイズ形式を取らせていただいております。
80年代前半のHRに関する問題が、殆どです。

パスについての個別対応は、原則としてしておりません。

過去の経験上こういう形を取らせていただいております。


相手の顔が見えない世界ですので、どうかご理解ください。
当方は極度の人見知りです。

そして、パスは不定期で変更させていただきますので合わせてお願いします。

面倒をおかけして、申し訳ありませんが
なにとぞご理解をいただきたく、お願いいたします。

拍手[58回]

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ROULETTE 39


一方


翌日一足先にリタの屋敷を出ることになったミナムとジェルミ。


朝食後ミナムは、皆の前で深々と頭を下げた。


「また皆さんにご迷惑をお掛けして申し訳ありませんが、もうしばらく妹のことどうかよろしくお願いします。」


「もうっ、そんな固いこと言わないの!!ミニョを迷惑だなんて思ったことないわよ。」


ミナム言葉にリタは少しばかり不満な様子だ。


 


「ミナム、リタのいう通りだよ。遠慮しないでおれ達にミニョを預けてくれないかな?」


「ありがとうございます。」


アレクの言葉に、ミナムは少し目を潤ませる。


たった一人の妹と離れて暮らさなけばならない寂しさは、シヌには計り知れない。


 


「ミナム!!大丈夫だよ!!ガンガン視聴率上げてまたこっちのロケに来るからさ」


こともなげにそんなことを言うジェルミ。


自信満々な様子に苦笑するが、すぐに実現するかもしれないと思う。


その証拠にミニョもジェルミの言葉に、目を輝かせているのだから


 


「本当に仲良しだよね?」


「ああ…ミナムは知らないかもしれないが記憶を失う前も二人はあんな感じだったかな」


少し離れたところでふたりを見ていたミナムが呟くと、隣にいたシヌも同調する。


 


「シヌヒョン…さっきみんなの前で言ったけどさ、ミニョのこと本当に頼むね。


しっかり捕まえて何があっても絶対に逃がさないでよ」


「おいおい、兄がそんな事を言っていいのか?俺としてはミナム公認は願ったりだけど


これから先ミニョの記憶が戻ったら…このままではいられないかもしれない」


ミナムに発言に嬉しさを覚えながらも、シヌに付き纏う不安。


今のこの記憶が、取り戻した記憶に書き換えられる可能性は捨てきれないのだ。


 


「シヌヒョンはミニョのことになると、いつも不安げだよね?オレは先輩としてだけじゃじゃなく別の意味でもヒョンて呼びたいって思ってるんだ。今からミニョに約束取り付けておけば?」


「いくら何でも、それはまだ早すぎだ?何よりもまだミニョは入院中の身体だしな」


思いがけないミナムの言葉に戸惑うシヌ。


長い間の思いがようやく実ったというのに、その先を考えるには少々ハードルが高い。


 


「そんなの気にすることないのに。オレはいつでも大歓迎だよ」


「ありがとう…その時になって撤回するなよ!!」


ミナムの目がいつになく真剣だったこと。あとから考えれば深い意味があったはずなのに


この時のシヌはそれを推し量ることは出来なかった。


 


「ミナム!!もう行くよ!!」


「ああっわかった」


ジェルミに促されたミナムはリタが用意した車に乗り込むと、なぜか運転席にはカイルがいた。


カップル二組のイチャコラを見せつけられるのはごめんだと笑いながらハンドルを握る。


昨日まで何かといがみ合っていた二人なのに、この変貌ぶりがミナムには不思議だったので訳を聞くとすぐに納得したのだった。


それからは3人で大いに盛り上がり、ロケ現場まであっという間に到着する。


 


「それじゃあ、頑張って♪」


「待って!!カイル」


車を走らせようとしたカイルをなぜかジェルミが引き留めた


 


「この後予定ないならロケを見学していく?」


「え?良いの?シヌのとこでちらっと見たとき面白そうだって思ったから、嬉しいな」


ジェルミの誘いを二つ返事で受けるカイル。


その後番組スタッフがカイルの存在にいち早く気付き、急きょスペシャルゲストとして出編することになるとは予想できなかったのだが…


 


 


その後は4人でゲームを楽しむことになる。


施設を出た後はシスター修行の日々だったミニョ。


普通の若者のように遊んだ記憶はほとんどないようだ。


 


「あっこれやってみたかったんです」


ミニョが目を輝かせたのは、所謂UFOキャッチャー。


目当ては、ぬいぐるみのクマがギターを持っているもの。


 


「あーもう少しなのに…」


なかなか上手につかめなくて、落すたびに小さなため息を漏らす。


 


「ミニョったら、そんなに欲しいなら鍵を開けてもらいましょうか?」


「せっかくですが、自分で取りたいんです」


見かねたリタの申し出だが、ミニョは固辞する。


 


そんなミニョの姿を見て、シヌは隣に立ってアドバイスをすることにした。


「もう少し右…あっ行き過ぎだよ…今だ!!」


確実に取れる位置を見極めたシヌ。


 


「はいっ!!あっ…取れました…シヌオッパみたいにカッコいいくまさんです」


取り出し口のぬいぐるみを両手でしっかり持つと、子供のように喜ぶ。


 


「ミニョにそんな風に言ってもらえると嬉しいよ。じゃあオレもちょっと狙ってみようかな」


ミニョに続いてプレイをしたシヌは、華やかなドレスを来たクマを取り出した。


 


「ほら可愛いだろ?ミニョには負けるけど」


「えっやだ!!シヌオッパたら冗談ばかり」


シヌが本心で言ってるというのに、ミニョは恥ずかしそうに顔を赤らめている。


 


「「ああバカップル~」」


リタとアレクが呆れて呟いていたことなど、シヌの耳からは簡単に通り抜けだのだった。


 


「シヌ、あれで勝負しようぜ!!」


アレクが指さしたのは、エアーホッケー。


彼曰くこれまで負けたことがないという。


「俺じゃ力不足かもしれないけど…」


学生の頃は時々やったが、この数年は全くやっていない。


 


ポイントをアレクに続けて先取されてしまった。


だけど…


「シヌオッパ頑張ってください!!」


ミニョが両手をしっかり握りしめてのエール。


 


いつの間にか追いつき、逆転を決める。


 


「わぁ!!すごいすごいシヌオッパ」


「ミニョの声援のおかげだよ…ありがとう」


自分のことのように喜ぶミニョを、そっと抱きしめるシヌ。


 


「ああ…今のシヌには何をやっても負ける気がするよ」


「仕方ないわ…最強の女神が付いてるんですものね」


苦笑するアレクを、リタが珍しく慰めていたようだった。


 


そんな楽しい時間はあっという間に過ぎて、就寝時間が近づいてきた。


 


「ミニョ…今日は私と一緒に寝ましょう!!」


「はいっリタオンニ…」


ガールズトークで盛り上がるに違いない。


シヌはほんの少しの落胆を感じつつ、ミニョの後姿を見送る。


 


「俺たちも、一緒に寝るか?」


「遠慮するよ…じゃあお休み」


アレクの誘いをやんわりと断ったシヌは、昨夜と同じ部屋へと向かった。


 


それから数時間が過ぎた真夜中…


 


“コッコッ”


控えめなノックの音に、浅い眠りのシヌはすぐに目を覚ました。


椅子に掛けてあったシャツを急いで着ると、戸口へと向かう。


 


「はい…」


ドアを静かに開けると、目の前に立っていたのはミニョ。


「あのっごっごめんなさい…起こしましたよね?」


「いや…ちょっとうとうとしただけだけだよ…入って」


ミニョの手を静かに引き、部屋の中へと誘う。


深夜に来るなんて、何かあったのだろうか?


 


椅子をすすめた後、飲み物を用意しようとしたシヌは


何故かシャツの裾をミニョに掴まれてしまった。


 


「私喉が渇いていません…あの…こんなこと言ったらシヌオッパ困るかもしれないけど…私どうしても…聞いてほしくて…」


「ミニョ…どうした?大丈夫落ち着いて?大丈夫なんでも話していいからね」


どこか切羽詰まったミニョの様子を見て、シヌも動揺を覚えたが必死で平静を装う。


 


「私のこと好きですか?」


「うん?もちろんだよ!!」


どこか不安げな声で尋ねるミニョに、シヌは腰を落して優しくそして力強く答える。


 


「なら…どうして何もしてくれないんですか?シヌオッパはすごくいつだって優しいけど…でっでもここにキスさえしてくれたことないんですよ」


ミニョが触れたのは唇。


 


「ミニョ…それは…!!」


正直言ってミニョの言葉は予想にしていなかったことだ。


シヌの思いはずっと変わらなかったが、ミニョから気持ちを聞かれたのは一昨日である。


 


「シヌオッパは、ドラマでもかっこよくてギターを弾いているときはキラキラ眩しいです。


だから…私の手の届かない人になっちゃうんじゃないかっんん…」


シヌに縋りついた形になったミニョの言葉はそれ以上繋ぐことはなかった。


 


出会ってからどれほど焦がれただろう…


薄い夜着を通して伝わるミニョの身体。


ゆっくりと唇を話したシヌは、自嘲気味につぶやいた。


 


「オレがどんな思いでずっとミニョを見てきたかわかるか?一度は諦めたんだよ…


でも、ようやく叶ったんだ。一歩ずつゆっくりと進んでゆきたかったのに…もう手遅れだよ」


椅子からミニョを抱き上げると、ベッドへと運んだ。


 


そっと横たえると、シャツを脱ぎ捨ててミニョを見下ろす。


心も体もミニョを求めていたシヌだが、最後の理性はギリギリで残っていたので


ミニョに問う。


 


「いやなら、止めるからね。」


「いやじゃない…好きシヌオッパ」


ミニョのその言葉を合図に、ゆっくりと覆いかぶさった。


 


するすると滑り落ちる、夜着。


無我夢中だった。


だが…無意識なミニョの身体の反応に複雑な思いが何度も過る。


 


誰の所以なのか、わかりすぎるほどだったから。


 


「私の初め…ては…っぱりシヌオッパで幸せです」


「オレも幸せだよ」


ミニョの言葉に、相槌を打つシヌ。


途切れ途切れでよく聞こえなかったが、あえて聞き返すことはなかった。


 


そして胸の中にミニョをしっかり閉じ込めると、そっとキスを落すのだった。


 


===================================


テギョンさんに居場所を突き止められたからかは疑問ですが、


シヌとミニョちゃんは結ばれてしまいました。


ミニョちゃんから迫ったのは、きっと事情があるはずです。普段のミニョちゃんではありえないでしょうから。


シヌは当然戸惑ったでしょうが、恋い焦がれたミニョちゃんを前にやっぱり理性をふっとばしてしまいました。


ミニョちゃんの身体の反応に見える、あの方の存在。


もちろんミニョちゃんはそれがシヌのものだと疑いません。


そうして、このずれがまた波紋を呼ぶことになるのかもしれません。


 


拍手[27回]

ROULETTE 39


あえて乱暴に腰を動かすテギョン。


ミニョに対する後ろめたさからなのか、優しく抱くのことは出来なかったのだ。


この行為自体許される筈などはないが、心がないからと無理やり納得させる。


そうして今にも達するかと思ったその時、避妊具の持ち合わせにないことに気づいてしまう。慌てて行為を中断し自信を引き抜くテギョンに、マリアンヌは怪訝な様子だ。


 


仕方なく理由を話したが、マリアンヌはそのまま行為を続けろという。


「大丈夫よ…病院で薬を処方してもらえるから…」


「いや…それは」


「もうっ時間がもったいないじゃない…あら?ちょっと元気がないわね」


「おいっ何を!!っ」


 


あっという間のテギョンの熱は、マリアンヌの咥内で侵される。


ミニョにこの行為をさせたことはない。


まだまだ初心なミニョだから、泣き出してしまうかもしれない。


もちろんそんなことをしなくても、テギョンの心は満たされていたのだ。


 


だが心と体を切り離している今、理性よりも欲が勝ってしまった。


何より、マリアンヌの巧みな舌使い。


テギョンの手は、自然とマリアンヌの秘部へと手が伸びる。


それぞれから発する水音が更に興奮を高めてゆき、あっという間に元の勢いを取り戻した自身。


 


マリアンヌの身体を反転させると、腰を持ち上げ一気に捻じ込んだ。


十分濡らしているはずなのに多少の窮屈さを感じる。


先刻の大胆な行為をするマリアンヌがまさか…と考える余裕などなかったのだった。


 


「ハァハァ良いのか本当に?このまま?」


テギョンの問いかけに、マリアンヌは呼吸を乱しながらも頷くが


腰を激しく打ち付けたのち、テギョンの迸りはマリアンヌの中で解放されたのだった。


 


翌日テギョンが目を覚ましたのは夕方近く。


隣に目をやるとマリアンヌの姿はなく、慌ててベッドから出て隣の部屋に向かうと


テーブルに、メモが残されていた。


 


『昨日はありがとう。私の連絡先です。』


テギョンはすぐさま、携帯を掴んでいた。


 


何度かのコール音の後、聞こえてきたマリアンヌの声。


黙って帰ったことに苦言を呈したが、テギョンの眠りがあまりにも深いので


そそのままにしていたという。


言われてみれば、確かにそうだった。


病み上がりの上に、久しぶりの激しい行為だったのだから。


 


『今夜先輩と会うから、何とか聞き出してみるわ。』


「頼む…何かわかったら夜中でもいいから教えてほしい」


マリアンヌのその言葉に、一縷の望みを託したのだった。


 


そして…


日付が変わりしばらくして、マリアンヌの着信が表示されるとものすごい速さで通話ボタンを押した。


 


『あら?取るの随分早いのね』


「あっいや…それで?わかったのか」


『ええ…ミニョさんは特別病棟にいるわ。面会者に関して特に厳しいらしいの。


保護者の同意が原則ないと』


「そうか…」


保護者―すなわち兄のミナムのこと。


 


ミニョを傷つけた己をミナムが認めるわけはない。


せっかくすぐそばにミニョがいるというのに…会うことは叶わないのだろうか…


落胆するテギョンだが、マリアンヌの話は続いた。


 


『でもね?貴方は一般病棟で入院していたから、ちょっと面倒な書類の手続きとプラスαで入棟できそうよ』


「本当か?書類なら何十枚だって書く!!他にオレができるなら何でも」


ずっと靄がかかっていた目の前がようやく晴れたテギョン。


今すぐにでも、病棟に向かいたい衝動にかられたほど。


 


『明日、退院後の検査があるでしょう?終ったらナースステーションまで来てくれる?』


「わかった…疲れているのにいろいろと本当にありがとう…おやすみ」


マリアンヌへの心からの感謝の気持ちを込めて、テギョンは静かに通話を終えたのだった。


 


そして…迎えた朝


この上なく軽い足取りで、病院へと向かう。


 


診察室に入ると、アレルゲンの詳しい検査をすると言われてしまった。


「今回は偶然病院前で倒れたから大事に至りませんでしたが、きちんと調べておかないと


お仕事上影響されますよね?」


 


この病院に潜入するために、あえてアレルゲンのものを口にしたことなど


口が裂けても言えずに、医師たちの言葉にテギョンは素直に従った。


何よりこの検査を終えればミニョに会えるという思いもあったので、長い検査もおとなしく受け入れたのだった。


 


だが…テギョンは知らない。


この検査に時間を要してなければ、ミニョに会えていたはずであろうことを。


 


長い検査を終えたテギョンが気分転換に院外に出て、5分ほどで戻ったとき


自分の存在に過敏に反応した人物のことも、気づくはずはなかった。


 


ナースステーションに向かうと、すぐにマリアンヌがやってきた。


目の前で出された12桁のパスワードと数枚の書類。


特別病棟の入室に伴い、注意事項が事細かに記載されている。


 


最初のミニョとの関係に関しては、一瞬躊躇した。


当然恋人と書きたいところだが、ミナムの手前“親しい友人”としておく


シヌやジェルミもそう認識されているのだろうから…


そうして書き終えた書類を事務長に提出してから、ICカードを受け取った。


これと12桁の暗証番号を入力することで、特別室病棟を許可されたようだ。


 


これは非常に特別な措置らしい。


この病院で絶対の信頼を得ているマリアンヌが頼んでくれたからのようだ。


 


マリアンヌに案内されて向かったミニョの特別室。


だが…皮肉にも


ミニョは数日外泊許可をもらって、不在だという。


 


「申し訳ありません?確認していませんでした」


「いえ…気にしないでください…出直してきますから」


浮かない表情のマリアンヌに対して、テギョンは違った。



会うこともかなわないと思っていた数日前を思えば、確実に会えるとわかったのだから。



=======================================



連続のテギョンさんでした。ミニョちゃんに会うために必死です。



そして執念からようやく、たどり着けそうになった時…自ら起こした行為によって



究極のニアミスになりました。




拍手[12回]

ROULETTE 38


「そう言えば、何見てたの?」


マリアンヌがリモコンを操作すると、ドラマの続きがやっていた。


 


「ああ…これ面白いんだよね?特にこのヒョンス役の彼?リアルでドクターできそうな雰囲気!!。素顔もこんなにいい人なのかな?」


 


「皆そう言うが、実際は俺より腹黒だぞ?」


シヌを褒めることがなんとなく面白くなくて、うっかり漏らしてしまったテギョン。


 


「もう!そんなのわからないでしょう」


「それがわかるんだ。長い付き合いだからな…」


「どういうこと?」


「百聞は一見に如かずだ。まあこれを見ろ」


タブレットに映るANELLの姿。


 


「うそ!!ヒョンスそれに、Mr.ファン?どういうこと!!」


彼女のあまりの驚きは、本当に自分たちのことを知らなかったことを再認識させられた。


 


「まあ、見ての通りだ。向こうではそれなりに有名だけどな」


「ごめん…私そっち系疎いんだ。それにあまりTV見ないし。ってゆうか持ってないの」


テレビを持っていない彼女は、休みの日に友人のところで録画してもらったものを纏めて視聴するようだ。


ドラマ効果でシヌの名はそれなりに認知されたが、バンドとしてはまだまだだと思っていたが、マリアンヌに関してはそれ以前である。


 


バッグから取り出したもう一つのタブレット。


「じゃあこれをやる。暇なときに見ればいい。」


 


「はっ?何言ってるの?気軽にもらえる品物じゃないでしょう」


「オレは、こっちで無名に近いことでプライドが傷ついてるんだ。それで少しは勉強しろ。


命令だぞ!!」


すんなり受け取るはずもないと思っていたから、有無の言わさぬ言葉を言い放つテギョン。


気の強いマリアンヌも圧倒されているように見える。


 


「わかったわ…でも良いの?これ高いんでしょう?あっでもこんなホテルに泊まってんだからお金持ちかぁ」


「ここは、親父のコネだからオレ個人じゃさすがに難しいぞ」


会って間もないマリアンヌと会話が弾むことが不思議なテギョン。


 


まるで古くからの友人のような錯覚を覚える。


 


そんな彼女には小細工などせずストレートに話し手も良いのだろうか?


だが、彼女の立場上受け入れがたいことかもしれない。


テギョンの中で葛藤が続いた。


 


「何か言いたいことあるの?さっきから独り言がただ漏れだよ?」


マリアンヌに声を掛けられて、はっと気づくテギョン。


こんな失態をさらすなんて普段のテギョンではありえないことだが、


やはりマリアンヌには不思議な力なあるのかもしれない。


 


「実は頼みがあるんだ。ただ無理なことはわかっているから断っても気に病むことはない」


「話す前からネガティブ思考でどうするの?早く言ってみて?」


深刻なテギョンを姿を揶揄するマリアンヌ。


 


テギョンはゆっくりと語り始めた。


ボランティア活動をしていて事故に巻き込まれた知人を探していること。


調査会社を使ってこの街の病院を探したが、該当するものがないこと。


そんな中、セキュリティが厳重な大学病院の特別病棟の存在を知ったこと。


仕事でこの街に来たテギョンは、自分でもどうにか調べられないかと焦っていたこと。


その矢先に、病院の前で倒れてしまったこと。


 


マリアンヌはテギョンの話に真剣に耳を傾けていたが、患者の情報を外部に漏らす行為は


職務規定に違反するのだという。さらに彼女は特別病棟の全部の部屋を把握できるわけではない。職員といえども…まさに不可侵領域に近い…さらに准教授クラスの許可がないと入れないと言われるところだという。


そんな場所になぜミニョが?と後から考えれば疑問がわくのだろうが、その時のテギョンは余裕がない。やはり無理だったという落胆の気持ちが心を占めていたのだから。


 


「ねえ、聞いていい?知り合いってミニョって人?」


「どうしてそれを!!」


不意に出たマリアンヌの言葉に、テギョンは激しく動揺した。


 


「やっぱり…意識を失う直前その名前が聞こえたのよ。それから譫言でも何度も呼んでいたわ。“ミニョ…ミアネ”って苦しそうに何度も…ただの知り合いじゃないわね?もしかして恋人?」


射貫くようなマリアンヌン視線に、テギョンは静かに頷いた。


 


そして身代わり時代以外のミニョとの関係を簡単に話す。


同じグループのメンバーの妹と恋人関係になったこと。


だが自分の我の強い性格が災いして。愛しているのに気持ちを理解せず傷つけるような言動をとってしまったことを。


電話越しのケンカの後、帰国しなかったことで勝手に腹を立てていたが


最近になって事故に巻き込まれた事実を知った。


許してもらえないかもしれないが、あって謝りたい気持ちがあること。


 


「ちょっと待って?ミニョさんのお兄さんに訊けば済むことでしょう?」


マリアンヌは尤もな疑問を投げかけてきた。


こんな回りくどいやり方をする必要なないのだから。


 


「ふっそれが出来たら良かったな」


自嘲気味のテギョンは、ミナムに訊けない事情を吐露した。


全ては自業自得であることを。


 


「そう…つらいね?」


ぽつりと呟いたマリアンヌはそのあとしばらく無言になり、何やら考え込んでいるように見える。


テギョンの頼みごとが負担になったのだろう、もうあきらめかけたその時だった。


 


「わかった…特別病棟には親しい先輩がいるの。ミニョさんの情報を聞けるかもしれない」


「本当か!?」


切望しかけたテギョンへ一筋の希望の光が見えた。


 


「でも…条件があるわ。聞いてもらえる?」


「ああ…オレにできることことなら」


ミニョの為なら、犯罪以外ならなんだってできると思ってしまってテギョン。


だが…マリアンヌの条件は思いもかけぬものだった。


 


テギョンに立ち上がるように促したマリアンヌ。


次の瞬間胸に軽い衝撃を覚得たかと思うと、背中にしっかりと回された手の感触。


 


「君…何を?」


「条件は…私を抱いてほしいの」


 


テギョンの頭の中は一瞬真っ白になった。


 


「悪い冗談で驚かせるな」


「本気よ!!好きなんだもの」


テギョンにしがみ付きながら、思いつめた声のマリアンヌ。


 


「大学病院の前で偶然助けたときから、あなたに惹かれたの。私を担当に指名してくれた時は本当に嬉しくて…今夜のことだって誘われた時は夢みたいだったわ。ここに来た時は期待した!!」


堰を切ったように語られたその思いを知り、テギョンは動揺してしまう。


出会いは作為的なものだったというのに…


 


「とにかく、少し落ち着いて」


マリアンヌの身体を押し戻して宥めようとするが、強い力でさらに身体を密着させてくる。


 


「代わりでいいの…だから」


「…っ!!」


テギョンは心では必死に自制をしていたが、男としての反応は情けないが確かにしている。


 


(ただの交換条件だ…だから)


そう自分自身に言い聞かせたとき、マリアンヌの身体をそっと抱きしめて


耳元で囁いた。


 


「わかったいう通りにしよう」


「本当?キャッ下して…重いわよ」


テギョンがお姫様抱っこをしたのでマリアンヌは焦っているようだが、全く重さは感じない。


 


そうしてマリアンヌをベッドに横たえると、ゆっくりと覆いかぶさる。


背中に手を回して、ワンピースのファスナーを下し下着姿にした。


次の段階に差し掛かった時、マリアンヌから出た“待った”の言葉。


土壇場で気が変わったのだと思っていたが、そうではなかった。


 


「見られると恥ずかしいから、暗くして」


「良いけど、俺は夜盲症だから限度があるぞ」


マリアンヌの希望を受け、照明の明度を下げてゆくテギョン。


「だめ…もっと」


結局ぎりぎり輪郭がわかる程度まで、下げることになった。


 


「もう…いいな」


「うん…」


マリアンヌを生まれたままの姿にしたテギョン。


 


薄闇で顔が良く見えない。


そのため、心の中で錯覚した。


自分が抱いているのは、ミニョなのだと。


 


初めて身体を重ねた日を思い出す。


苦痛に耐えながら、幸せだと微笑んでくれた次の日の朝。


ぎこちないキス・・・すべてが愛おしかった・・・


 


だからこそ…目の前の現実に気づくことができなかったのかもしれない


マリアンヌもミニョと同じように、耐えていたことに.


===================================


前々回の流れから、鬼畜MAXのテギョンさんも考えたのですが


騙されたマリアンヌさんが不憫になりすぎて…


せめて彼女から求めたという、例によっての大砲使用でございます。


テギョンさんに惹かれた彼女は、身代わりとしてでも求められることを望みました。


拍手[23回]

ROULETTE 37


「どうぞ、入ってください」


「はい…あっ」


部屋の入り口でテギョンに促されたマリアンヌは、飛び込んできた光景に


言葉を失いそうになる。


それくらいにハイグレードな部屋なのだ。


 


こんな場所に自分が踏み入れてよいものかと、最初の一歩が出せない彼女の手を


テギョンがそっと手をとって、中へと誘導する


 


そうして部屋の真ん中のソフォに到着すると、手を繋いだままそこに腰を下した。


 


「あの…手を」


「これは申し訳ない…」


俯きがちにつぶやくマリアンヌに反応したテギョンは静かにその手を放すのだった。


その時マリアンヌの目に浮かんだ落胆の表情をテギョンは見逃さなかったが、


何も気づかぬふりで席を立つ。


 


しばらくして、トレイにグラスを二つ乗せて戻ってきた。


「綺麗なオレンジ色。いただきます」


「おいっ待て。」


喉が相当渇いていたのかマリアンヌは、一気に飲み干してしまう。


テギョンの呼びかけは間に合わなかったようだ。


 


「なんだか、身体がふわふわするようです…」


そう言って、ソファに沈んだマリアンヌ。


 


「マリアンヌさん、起きてください」


テギョンが強く身体を緩るが、効果はない。


 


まさか一気飲みをするとは思いもよらなかったのだ。


テギョンに焦りが芽生える。


とはいえ、このままソファーにというのも良くないと考えたテギョンは


マリアンヌをそっと抱き上げると、ベッドへと寝かせるのだった。


 


アルコールの所以のせいか、ほんのりと赤い顔。


そして子供のような無防備な寝顔に、どこか重ねてしまう。


 


「君はしっかりしているようだが、アルコールに関してはあいつと同じ事故多発地帯なんだな」


こんな苦労して部屋まで連れてきたが、無駄足になる可能性が高い。


 


隣の部屋に戻り、もう一つのグラスを手に取った。


グラスが空っぽになったとき、テギョンの心も同様に虚しさを覚える。


 


(何やってるんだ…オレは)


アルコールで懐柔し、ことと次第によっては一線を越えても良いとさえ思っていたのだ。


ミニョの情報を得るためには、手段を選ばずにここまで来たテギョン


だが、それは人として決して褒められたやり方ではない。


ましてや、テギョンのケアをしてくれたマリアンヌに対して。


 


その時、テーブルに置かれている雑誌に目が止まった。


入院した日にマリアンヌが購入してくれたもの。


今になって、ようやくパラパラとページを捲る。


 


すると、その中に良く知った男の姿を見付けた。


 


「むかつくほど、白衣が似合うやつだな」


ついつい出てしまう憎まれ口。


シヌの演技は評判が良く、当初よりも出演シーンが大幅に増えているという。


医療系は専門用語が多いことに加えて、異国のドラマ。


英語が堪能なシヌでも、苦労はかなりあったのだろう。


 


“シヌヒョンの演技すごいんだよ。それに内容も面白くて!!次が待ちきれないよ”


ジェルミが熱く語っていたが、そんなものかと聞き流す日々。


 


リモコンを掴み、スイッチを入れてドラマチャンネルを選択すると


ちょうどシヌのドラマが放映中のようだ。


せっかくだからと軽い気持ちで見てみようと考えたテギョン。


 


だが、いつの間にかその内容に引き込まれている自分に気づく。


内容ももちろんだが、使われている音楽もテギョンが興味を持つには十分だった。


夢中で見ていたら、あっという間に時間が過ぎたようだ。


時間を確認すると3時間は過ぎている…


 


「こんなに面白かったなんてな…もったいないことをしていたぞ」


自嘲気味につぶやくテギョンの背後で、バタバタと足音が聞こえた。


 


「あっあの私すみません!!うっかりその眠ってしまったようで」


目が覚めたマリアンヌが慌てて起きてきたのだろう。


床に座り込むと、深く謝罪押するのだ。


 


「頭を上げてください」


「はい…」


テギョンの穏やかな声に安堵の表情を見せたマリアンヌは、すぐに思いがけない瞬間を迎えた。


 


「バカ!!!」


「へ?」


テギョン怒鳴り声に、マリアンヌは驚きのあまり一瞬固まる。


 


「のこのこ男の部屋まで付いてきて、出されたものを確かめずに飲むとは危機感が欠落してる。オレが犯罪者だったらどうするんだ!!」


「ごめんなさ…でも…あっ私…ごめんなさい」


強引に誘ったというのに随分な言い分だが、マリアンヌはこれまでに見たことのないだろうテギョンの姿に動揺し、今にも泣きそうなのだ。


 


「と言いつつ…オレが言えたことじゃないな。ほら飲め!」


テーブルの上にやや乱暴にグラスを置くと、テギョン愛用の海洋深層水を


注ぐ。


 


「はいっいただきます」


マリアンヌは反射的に、グラスを掴むと緊張しながら口に含んでいる。


 


「少しはすっきりしたか?」


「はいっ…いろいろと驚いて醒めたかもしれません」


未だ床に座ったままのマリアンヌを立たせると、隣に座るように促した。


 


少しの間流れる沈黙。


「どうした?オレの顔に何かついてるか?」


マリアンヌの視線を感じ取ったテギョン。


 


「いいえ…Mr.ファンが別人のようで…あっいえ…失礼しました…ごめんなさい」


マリアンヌは失言とばかりに慌てて口元を抑える。


これまでのテギョンとのギャップで驚くのは、無理もないかもしれない。


 


「悪いが…これがオレの地でね?穏やかな男を振る舞うのは疲れたんだよな。」


「そういうことでしたか…あっこのお水美味しいです。お代わり!!ううんボトルごとちょうだい!!」


海洋深層水ボトルを、半ば強引に奪い取るとごくごくと派手な音を立てて飲み干した。


 


「ああ…すっきりした。」


ソファに身体を投げ出すように座るマリアンヌ。


これまでの彼女のイメージとは違い、今度はテギョンが困惑した。



「猫かぶるって疲れるの!!もっと早く言ってくれればよかったのに」


「そう…か」


サプライズ返しとでもいうのだろうか?


お互いに真逆のキャラを演じていたようだ。


 


「この仕事をしていて、この名前でしょう?それにこの憂い顔で勝手にイメージ持たれちゃって。まあ得することも多かったけど。だけどオフまで続けるのはきついわぁ。どうせならレストランで教えてくれれば良かったのに。」


もっと料理を楽しめたとぼやいている。


 


「ハハ…とんだ偽マリア様だな。アルコールに弱いのが弱点か?」


「もうっそれは言わないでよ。本当はもっと強いの!!だけどここんとこ勤務がハードで回るのが早かったのよ。魔王様♪」


揶揄するテギョンにきまり悪そうに反論するが、しっかり攻撃も忘れないようだ。


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ROULETTE 36

一時間ほどして、看護士の女性が戻ってきた。


「着替えです。運ばれてきたときに着用していた服はクリーニングに出していますので、退院までには間に合います。あとは、雑誌も買ってきました」


「ありがとう…これで足りるかな」


財布から取り出した、100ドル紙幣数枚。


だが、こんなにかかってはいないと受け取りを拒否する看護士。


 


強引にも受け取ってもらうことも考えたがある考えを思いつきここは一旦引くことにするテギョン。


 


「異国であなたのように親切な女性に会えるなんて、白衣の天使は本当にいるのだと思いました」


「天使だなんて、褒めすぎです。それに私は人として当たり前のことをしたんですもの」


テギョン視線を感じると、彼女は慌ててそれをそらし毅然と言い切る。


 


「でも…そんな天使にも休息が必要です。夜勤明けだったのですよね?帰って休んでください」


「あ…はい」


テギョンの言葉に、落胆の様子を見せた彼女。


 


「明日から数日間ですが、お世話になりますのでよろしくお願いします」


「え?あのなんのことですか?」


すでにこの病院に入院しているテギョンが改まってこのようなことを言い出すことに、


看護士の女性は戸惑っている。


 


「貴女を僕の専任にしていただけるように依頼しました。勝手を言って申し訳ありません」


「そんなこと!!短い時間ですが、精いっぱいお世話させていただきます」


テギョンの言葉に、看護士の表情がぱあっと明るくなるのが分かった。


 


自分の容姿が人を引き付けることをわかっているテギョンは、それを最大限に生かすことにしたのである。


 


それにしても、韓国内ではスーパーアイドルで知らぬ人がいないほどだというのに


この国では違う。


(井の中の蛙ってやつだな)


当初の思惑では、有名人である自分が人目につかないように別棟へと便宜を図ってもらうつもりだった。


だがこの状況でわざわざアピールするのは、売れないアイドルのようだ。


ならば、この看護士から有益な情報を聞き出すのが一番の策だと思ったのである。


ミニョがいるという確証は得られていないというのに…ここに拘ってしまったテギョン。


自分の直感が正しいと、信じたかったのかもしれない。


テギョンの退院は当初予定していたより、長くなってしまった。


『もう少し多く摂取していたら、命にかかわるところだったんですよ』


 


故意に行った行為だとは、口が裂けても言えない。


本当に苦しんでいる人たちには、心の底で懺悔をするテギョン


 


そして入院が長引くことによって本来テギョンがここに来た目的の遂行が困難になったことを思い出し、携帯を手にした。


 


連絡先はアン社長である。


電話口の社長の第一声は相変わらずの軽いノリだが、病院のベッドからの電話と伝えたとたん急に深刻なものに変わる


 


【病院てどうした?病気か?ケガか?大丈夫なのか?】


「過剰な食物アレルギー反応を起こしてしまったらしい。気を付けてはいたんだが気が緩んでいたんだな。治療のため数日間入院して治療している」


独身の社長にとってテギョンたちは息子も同然なのであり、テギョンに関しては入所も早かったので特に気にかけてくれているのだ。


 


【そうか、大事に至らなくてよかったぞ。ところで不自由はしていないか?あっ病院はどこだ?】


「ああ…クリスフォード大学の附属病院だが、社長聞こえてるか?」


一瞬返事の途切れた社長を怪訝に思うテギョン。


 


really?お前たち日ごろから仲が良くないが、やっぱりどこか引き合うものがあるんだな?まあそうじゃないとこんなに一緒にやってない】


「なんのことが、話が見えないぞ」


先刻までの深刻そうな様子からどこか楽しそうに変わった社長に、テギョンは困惑する。


 


Sorry…その病院の旧館は、シヌのドラマのロケで使っているんだ】


「シヌの!!…そうなのか」


社長の言葉を聞いた瞬間のテギョンの気持ちの高揚は、言葉で言い表せないほど。


だがそれを悟られないように今回の目的である―舞台鑑賞について切り出すのである。


「ということで、社長にいわれていた舞台の件だが…その」


No プロブレン…あれはまあいんだ…それよりお前の身体を優先しろ】


舞台鑑賞に関しては仕事漬けのテギョンを無理やり休ませるために口実だったことをカミングアウトした社長。


 


さらに体調のことを考慮して、休暇の延長も便宜を図ってくれるようだ。


願ったりのことで、有難く受け取る。


だが、シヌに連絡を取ることを勧められた時は固辞をした。


「社長!!それには及ばない。向こうにいるときもさんざんオレのアレルギーでミナン兄迷惑をかけたんだ。こんな情けない姿を見せるのは気が引ける。幸いにも親切な人がいてケアをしてくれるし、…このことはシヌもそうだがジェルミとミナムにも伏せてほしい」


 


リーダーとしてのプライドを散らつかせると、案外社長はあっさりと納得してくれた。


その代わりこまめに近況を知らせる約束を取らされたのだが。


 


「フフフ・・・」


通話を終えた後、テギョンの口元が思わず緩んでしまう。


“ミナムの知り合いがいて、ミニョのこと頼んでいるんだ”


“知り合いって…誰だ?”


以前交わしたジェルミとの会話。


心のどこかでずっと引っ掛かりを感じていたその“知り合い”の存在。


ミニョのことをあれほど大切にしているミナムが、安心して任せられる存在。


『シヌ』の名を聞いた瞬間、バラバラのピースが一気に埋まった。


 


今すぐにシヌに確かめたいところだが、ジェルミ同様ミナムに口止めされている可能性がある。ミナムが頑なにテギョンを拒む以上、秘密裏にことを進める必要があるだろう。


 


あくる日昨日の看護士が、テギョンの病室を訪れた。


「改めてお世話させていただきます。」


制服を纏い髪の毛を纏めたその姿は、昨日とはやはり印象が違う。


彼女の名は、マリアンヌ。


 


「マリアンヌ?聖母マリアにちなんでいるのかな?」


半分冗談で聞くと、どうやら図星らしい。


この職業に就くには、ふさわしい名前だと言えるだろう。


そのことを伝えると、恥ずかしそうに微笑む彼女。


 


「やっぱり…きっと将来慈悲深い母親になるのでしょうね」


「そんな…ただの名前負けです!!」


テギョンの言葉を聞いて、とんでもないと言いたげに首を大きく振る。


 


元来不愛想なテギョンが滅多に見せない笑顔を、惜しげもなくマリアンヌには向ける。


目的のためには、彼女と親しく成っておく必要がある。


その後些細なことも、あえてマリアンヌに頼んだ。


 


テギョンがコールボタンを押すたびに、息を切らして駆けつけてくれるのだ。


一生懸命なその様は、愛するミニョとどこか重なる。


尤もミニョのような事故を起こすことはなかったが…


 


入院の3日目を迎えた午後、


点滴針が漏れたようでナースコールを押すと、やってきたのはマリアンヌではない。


今日は休みなのだろうか?


代わりにやってきた看護士の顔を思わず凝視してしまう。


 


「申し訳ありません痛いですか…?」


「あっいえ…いつもの方ではないので」


ただでさえ目つきの鋭いテギョンの強い視線に看護士は緊張気味である。


せっかく来てくれた看護士に対し失礼なことを言ってしまったと一瞬思ったのだが、


テギョンの発言は思わす事実を引き出すことになった。


 


「彼女は別棟のサポートに付いています。スタッフの一人が急に体調を崩して


しまったようで」


「別棟があるんですか?僕は倒れて運ばれてきたので全然知りませんでした」


「病院なんてそんなものですよ。実は私だって別棟に関しては話だけで、足を踏み入れたことがないんです。あそこに出入りできるのは一握りの優秀なスタッフですから」


本来内部の情報を簡単に漏らすのもどうかと思うのだが、おしゃべりな看護士に


感謝するテギョンだった。


 


尤も入院患者の情報は固く守られているようで、一般病棟のスタッフでも知りえない。


 


(となると…次は)


テギョンはマリアンヌからゆっくりと話を聞き出す方法を考えていたのだった。


 


それから数日後のこと体調が回復したテギョンは、とあるレストランの最上階にいた。


 


向かい側に困惑顔で座っているのはマリアンヌである。


さっきから全然食がすすんでいないようだ。


 「お口にあいませんか?冷めてしまいますよ」


「いえ…そんなことは…いただきます」


テギョンが促すと、マリアンヌは静かに頷く。


 


時間は1日前に遡る。


無事に退院を迎えたテギョンのもとに、マリアンヌがやってきた。


 


今回のことでお礼をしたいことを告げると、彼女は職務を全うしたまでだと言う。


もちろんそんなことは想定の範囲である。


 


「僕がここに来た時、買い物をしてくれましたがその時の代金も受け取ってくれませんでしたよ。貴女にはこの命を救っていただいてこのまま何もしないというのは僕の国では許されない不義理なのです。どうかこの通りです!!」


「本当にお気持ちだけで…それに何か頂くというのはその」


テギョンの強引さにマリアンヌは揺れだしたようだ。


 


「それなら、食事を一緒にどうですか?こっちへ来てから友人もいなくていつも一人寂しく食べていたので」


「食事…そうですね」


妥協案として提示すると、ようやく折れてくれた。


 


そして今に至るのだ。


仕事終わりの彼女は約束通り現れたが、明らかに動揺している。


ホテルに併設されたレストランで、ハイレベルらしい。


尤もテギョンはそんなことは知らずに、ここを選んだ。


彼の父のファン・ギョンセ氏が会員で、以前訪れたことがあったからである。


 


普通の店での食事と思い込んでいたマリアンヌの驚きはかなりのものだった。


だが…普通の概念はひとそれぞれ…


 


「こういう店の方が、メニューに対してこちらの希望を伝えられてよいのですよ。うっかり食べてまた病院へ戻ることになったら、困りますから。あっでもあなたにまた会えるからそれもありでしょうか?」


「もうっそんなこと仰ってはダメです。せっかく良くなられたんですから。ブラックリストに載ってしまうかもしれませんよ」


テギョンのあまり笑えない冗談に、マリアンヌはは少しだけムっとした表情を見せる。


 


「僕の退院祝いも兼ねてると思ってくださいませんか?こっちに来てずっと外の食事はいひとりだったんですよ。」


「そうでしたか…わかりました。ではお言葉に甘えます。遠慮しませんよ」


マリアンヌは宣言通り、テギョンの前で気持ちの良い食べっぷりを見せてくれた。


 


 


「ところで、先日コールしたとき別の方がいらしたので実はがっかりしました。貴方の仕事は忙しいのわかっているのに」


 


さりげなく別棟の話題へとテギョンは持っていく。


冗談ぽく、それでいて切ない表情を見せながら…


 


「お世辞だとわかっていても嬉しいです。そんな風に仰っていただけで」


「お世辞じゃないです。貴女には初めて会ったときから、不思議と安らぎを感じていました。これでも人を見る目はあるんですよ。」


恥ずかしさから顔を背けようとするマリアンヌに、熱い視線を注ぐテギョン。


そしてマリアンヌの手の甲に、己のそれをそっと重ねた。


 


「今夜はこのままもう少しあなたと一緒にいたいです。僕の願いは叶いますか?」


「え…あっあの私は…」


テギョンの言葉に戸惑って返事に窮するマリアンヌ。


 


「だめですか?」


指を強く絡めて再び懇願するテギョンに、小さくうなずくのがマリアンヌの答えだった。


 


「ありがとう…じゃあ行こうか?」


レストランを出たテギョンは、マリアンヌの肩を抱きながら


棟続きのホテルの部屋へと向かう。


(今夜中に…ミニョの情報を聞き出さなければ…)


狂気を笑顔に隠し、部屋のロックを解錠した。


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テギョンさんが止まりません。


何故かキーを打つのもやたらと軽やかに(コラ!!)


ミニョちゃんにたどり着くためには、手段を選びませんね?


今後どうなるでしょうか?


好きなように暴走させると、回収するのが大変になりますので(汗)


 


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ROULETTE 35



「わからないって、どういうことだ!!」


電話越しに声を荒げるのは、テギョン。


 


“申し訳ありません…必死で調べているのですか…その”


「言い訳はやめろ!!こっちはそれなりのいや!それ以上の報酬を払っているんだぞ。わかったもういい」


担当者の言葉を遮り、通話を終えたテギョンは怒りに任せて電話を投げつけた。


 


(全く…役立たずものが)


チッと舌打ちをして、ベッドに横たわるテギョン。


 


あの日…


ジェルミから聞いたミニョのケガのこと。


LA入りしてからひそかに探偵を雇い、入院先を見つけてもらおうとしていたのである。


 


ジェルミの番組のロケ場所とホテルは、聞き出していたので


そこから車で1時間以内で行ける入院施設のある病院を、片っ端から調べてもらっていたのだが…


 


正直高を括っていたのかもしれない.


容易に判明すると…


 


休暇は2週間だというのに、何も収穫がないままその半分が過ぎようとしている。


今回特別に長い休みを社長はくれたが、そうあるものではない。


 


探偵を使わずに、いっそ自力でとおもうが


自国でも迷うほどの方向音痴のテギョンが、異国で行動を起こすのは無謀すぎる。


 


(ミニョ…同じ町にいるはずなのに…会えないのか)


落胆しきったテギョン。


 


その時、床に放り投げたスマホが着信を告げた。


 


表示されているのは、先刻の探偵事務所の番号。


そのまま無視するつもりだったが、コール音があまりに続くので


手に取るテギョン。


このタイミングでかけてくるとは余程神経が図太い奴なのかと思うテギョン


ダメ押しでもう一度怒鳴ってやろうと、通話を選んだその時だった


 


「なんの用」情報…あるにはあるんです!!」


テギョンの声にかぶさる担当者の声。


 


「何!!どういうことだ?さっきわからないと言われたばかりなんだぞ」


“それは…上からの指示でそういいました。だけど、私が個人的にお耳に入れたいことがあるんです”


あまりに必死になっている担当者に、とりあえず話だけは聞いてやることにしたのだ。


 


“実はある大学病院の別棟にVIP用の入院施設があるようなんですが、特にセキュリティが厳重のため情報を得ることができいのです。”


“患者として入り込むことも考えましたが、腹痛程度では簡単な診察で終わってしまいました。かといって入院をするようなケガもできませんし”


“どちらにしても緊急を要する場合でないと大学病院は難しいです、しかもそんな無茶をして、空振りの可能性もあるわけで…”


 


担当者の話を聞き終えたテギョンは、さっきまでの剣幕が想像できないほど


穏やかな声色に変わった。


 


「いろいろ、ありがとう」


“あっいえ、とんでもありません”


「さっきは失礼な言い方をして申し訳なかった。その大学病院だが場所を教えてくれないだろうか?俺は地理に疎くてね」


“それなら、私がお連れしますか?”


 


担当者が自ら申し出てくれたので、手間が省けたとテギョンは心の底でほくそ笑むのであった。


 


翌日の早朝、宿泊先のホテルの隣の遊戯施設前で迎えの車を待っていると


やってきたのは、思いのほか若い男。


 


「こんな朝から、申し訳ない…」


「平気です。気にしないでください」


そんなやり取りののちテギョンがお礼だと言って紙幣の入った封筒を男に渡すと、中身を見たとたん、固まってしまう。


 


それは最初に事務所にはあった手付金の3倍の金額だったからに違いない。


 


「こんな…大金…オっオレ…いただくわけにはいきません」


「これはオレの感謝の気持ちだ。君の情報はこの金額に値する有益なものだったから、どうか受け取ってほしい。」


一度は固辞した担当者だが、テギョンがすすめると案外あっさりとポケットに納めたのだった。


 


しばらくすると、目当ての大学病院の正門前の付近へと車を止める。


 


「あっ!!あの一般病棟から出てきた女性は、看護士ですよ?オレが診察中に、院内で見かけましたから、夜勤明けですかね」


視力がよいと自慢しながら、教えてくれる男。


 


行動を起こすなら、病院の関係者の目に留まった方がよい。


男にお礼を告げた後、車から降りた。


 


そしてポケットに入れていた、スナック菓子を頬張りお茶で一気に胃の中に流し込む。


小さいころから自分のアレルギー体質が苦痛で仕方なかったが、


皮肉にも、今は最大限に役立つとは…。


 


リアルタイムで、症状が現れたようだ。


呼吸が次第に乱れ…


立っていることができなくなる。


 


そして…足元から崩れ落ちたとき


 


「大丈夫ですか?しっかりしてください」


遠くなる意識の中、ぼんやりと聞こえたのだった。


 


 


次に目を覚ました時、消毒薬の匂いを感じたテギョン。


 


「ここは?」


「ああ気が付かれたんですね?良かった。ここは大学病院です。貴方は正門のそばで倒れられて…通りかかった私が勤務しているこちらへ運んでもらいました」


テギョンが視線先にいたのはここの看護士で、どうやら第一関門は突破したようだ。


 


「申し訳ありません…ご迷惑をかけて」


起き上がろうとする身体は、医師によって止められた。


 


「意識を失うほどのアレルゲンのものを摂取してしまったようです。成分が完全に身体から抜けるまで2日間ほど入院するのが望ましいと思います」


テギョンの思惑通り、病院に入り込むことには成功した。


そして入院と、順調に事が運ぶ。


 


だが、医師が病室から出て行った後あえてテギョンは浮かない表情を見せたのだ。


 


旅行者なので入院と言われて戸惑っていることを伝えると、看護士の女が必要なものをそろえてくれるという。


 


「そんな見ず知らずの貴女に甘えることは出来ない。それに貴女の仕事に差し障りが」


「ご心配なく…夜勤明けです…それにもう見ず知らずではないです」


テギョンが期待した答えをくれる、看護士の女性。


 


「本当にありがとう…貴方は命の恩人だ」


看護士の目を見つめて感謝の気持ちをつげると、心なしか顔を赤らめているのだ。


 


(きっと、彼女は使える)


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ミニョちゃん捜索に必死なテギョンさん。


探偵を雇って、金に糸目はつけませんね?


でも、なかなか見つからずにいらだちを隠せません。


そんなテギョンさんに一筋の光が!!


アレルギー体質を最大限に生かして、病院に潜入です。


この後の展開はベタになると思いますが、おつき合いいただけると嬉しいです。


 


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ROULETTE 34


それからはシヌを他所にジェルミと二人で大いに盛り上がる。


結構騒いだせいか、ソファにもたれかかって少し転寝をしたらしい。


 


すぐに目が覚めたが、シヌとジェルミの話し声が聞こえてきてなんとなく起きるタイミングを逸してしまう。


 


「あ~あ、ソファ3人分を占領して寝ちゃったよ。もう子供みたいな寝顔だね?」


「お前がいうか?」


くすくす笑うジェルミに対してのシヌの言葉。


 


(ホント…シヌのいう通りだよ)


自分も揶揄してやろうと思ったカイルだが、二人の会話が韓国語になったことで
その話の内容が気になってしまった。


 


考えてみれば、カイルがいる前ではシヌとの会話も英語のジェルミ。


先刻の内輪ネタでも同様であった。


本気で蚊帳の外にしたければこっちのわからない言葉で話せば済むのに、


そんなことはしない。いろんな意味でまっすぐなやつなのだと思う。



 


「そうだ…ジェルミ?テギョンが見に行く舞台ってどこなんだ?」


「うん…LAのデイリー劇場だって、あと今回前後で休みたいって社長にお願いしたらしいよ」


「そうか…それならミニョに会う時間があるんじゃないか?テギョンだって心配しているだろうし」


「それはダメ!!ミナムに止められているんだから。それにさっきも言ったけど記憶喪失のことを知ったらテギョンヒョンは無理やりでも記憶を取り戻そうとするかもしれないよ…それってミニョにとってはすごく負担になるんでしょ?オレだってミニョが笑顔でいてくれることが一番なんだもん。今のミニョはオレの知ってる限り一番幸せそうに見えるからね」



 


  やがて二人の話し声が聞こえなくなってしばらくすると、カイルは掛けられたブランケットを抱えてゆっくりと起き上がる。


そして静かにベッドに向かうと、規則正しい二人の寝息が聞こえてきたので完全に眠りについたのだろう



いつかのような無邪気な寝顔のジェルミを見つめながら、深いため息を漏らす



  


「やばいよ…自力で病院をしらべたのか?あんな広い中から」


つぶやくと、日中見かけたテギョンの姿を思い出した。


一瞬でも強烈すぎる存在感。


 


ミニョの元カレなのにミナムがそこまで拒む理由はわからないが、会せないほうがよいというのはカイルも同感である。


ミニョの病室は別棟で、セキュリティも厳しいから部外者は勝手に入ることはできない筈だが、妙に気になる。


病院に確認を取りたいが、緊急でもないのに顰蹙だろう?


 


それでもこのままだと眠れそうにもないので、気分転換にテラスへと向かうと


思いがけない人物に出くわしたのだった。


 


「アンニョンハセヨ、キミも眠れなくてここへ」


「え?ああ…それより…話せたの?…」


いつかのミニョと同じ反応をするのは、さすがの双子と想うべきか。


カミングアウトしたカイルは周りへ伏せるように頼む。


 


「良いけど?別に隠すことないのに」


ここは妹とは違い怪訝な表情をうかべるので早々に話題を変えてみる。


病院で見かけたミニョの元カレ?のことだ


 


「なっそれ本当!」


「うん…あの悪いけどちょっと声のボリュームさげてね」


大声を上げそうなミナムに、そっと人差し指を向けるカイル。


 


「ごめん…でもどうしてわかったのかな?まさかジェルミが?」


自問自答を繰り返すうちに出た名前。


だが、ここはジェルミの名誉を守るために、はっきりと比定しなければならないだろう。


先刻聞こえてきたシヌとジェルミの会話の内容を伝えると、ミナムは少し苦笑いをする。


 


「そうだよな…うっかり疑うところだっよ。」


「あいつ見かけによらず、しっかりしてる。あとミニョのこともすごく心配してたよ。
 同じグループのメンバーの身内って特別なんだね?」


「まぁ…ね」


「オレ、目力の半端ないvocalのことは知らないからだろうけど、ミニョはシヌのそばにいるの
 が似合ってると思うんだ」


ANJELLのメンバーと深くかかわるミニョの存在の大きさに何か秘密が有るような気がしたが、知り合って間もない自分には教えてもらえないだろうということもわかっている。


ミニョが事故にあった直後から、シヌとともにそばにいる機会が多かったカイルならではの率直な思いを告げた。


 


さらにミニョの兄として、ミニョへの面会者を厳しくチェックすることを


病院に働きかけることを進めた。


この時のカイルは、自らが発信したシヌがミニョの婚約者であるということを


あろうことか、すっかり忘れていたのである。


 


そして、この日



秘密厳守のはずの別棟の特別室に

ミニョがいる事実をテギョンが掴んだことなど


 


全く予想はできなかったのだった。


 


===================================


久しぶりの兄妹の水入らずの夜です。


美男本編では、兄妹でも同室は好ましくないとジェルミが言ってましたが


ここはお見逃しくださいませ。


ミナムはミニョちゃんからでるフィアンセのワードに、内心は焦ってます。


あえて教えないのは、ミニョちゃんのため。


 


一方顔を会すとケンカのジェルミとカイル君。


だけど、お互いを認め合っていることを知って関係改善ですね?


 


シヌとジェルミの話を耳にしたカイル君。


テギョンさんの名が出て、耳がダンボ状態です。


病院で見かけたばっかりだったので…


その後出くわしたミナムに、病院へのけん制を勧めるのですが


一足遅かったようです。


 


次回からついにテギョンさんが、本気モードで動きます。


彼のパワーをどうやって抑えるのか、至難の業になりそうですね。 

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ROULETTE 33


それからほどなくして、部屋の用意が整ったらしくそれぞれの部屋に向かうのだった。


「はぁ…すごいなこんな部屋がいくつのあるなんて、本当に超がつくお嬢様なんだな。
ミニョの病院の特別室といい勝負だ」


「うん…私もびっくり」


部屋に足を踏み入れて開口一番のミナムに、ミニョも同調する


ただ寝るだけの部屋だと思っていたら、予想を大きく裏切るオリティなのである。


普通にお金を払って泊ったとしたら、どれだけ高額なのだろうか?。


 


「ミニョ…リタさんにすごく可愛がられてるんだな。?」


「うん、綺麗で凛としてそれに優しいし、いろいろと良くしてくれるよ」


ミニョからいろいろと話には聞いていたが、さっきの短い時間でよくわかる。


ミニョも、本当の姉のように慕っているらしい。


 


「そうか…良かったな…ところでさ?本音のところはオッパじゃなくて別の人とこの部屋に
  泊りたかったんじゃないのか?」


「えっいやだ…なっ何のこと?」


この屋敷に到着してから、とっくに気づいていた“二人”の空気感。


ちょっと揺さぶりをかけただけで、素直な妹は堕ちてしまうのだ。


 


「あのね…シヌオッパに気持ち伝えたの。昔の記憶はなくてもまた好きになったって」


ミニョの告白をシヌは本当に喜んだだろう…引っかかりのあるワードをスルーしてしまうくらいに違いない


夕食時の甲斐甲斐しく世話を焼く様子を目の当たりにしてよくわかった。


ミニョを愛おしそうに見つめるシヌ、そんなシヌの視線に気づくと顔を赤らめながらも


目を合わせるミニョ。


見ているこっちが恥ずかしくなるほどだ。


 


「ねぇ?シヌオッパに訊いた方がいいのかな?婚約のこと」


「え!?それはまだやめておいた方がいいよ。シヌヒョンだってきっとミニョのことを思って
  何も言わなかったんだろうし」


元々だれが流した情報なのかわからないが、すっかりミニョはこのことを事実だと思い込んでいる。


記憶をなくしたミニョが優しいシヌに惹かれていったのは事実だが、大きなきっかけは将来を約束した相手だと聞かされたことが大きいと思う。


 


「そうだよね…早く思い出したいな…だってシヌオッパと過ごした記憶が全然ないんだもん。」


「過去のことなんて気にすんな!!今のシヌヒョンだけを見つけていればいいんだよっな。二人でこれからたくさん思い出作ってさ。」


ミニョの気持ちを思えばもどかしいのだろうが、本音はこのまま思い出さなければと良いと思うのだ。長い人生の中のわずか2年間だからさほど重要じゃない。


 


そしてミナムはさりげなく話題を変えることにする。


「ミニョせっかく久々に会えたのにシヌヒョンのことばっかりだとオッパはさびしいなあ。ああ兄貴より彼氏かぁ…うっうっ」


「ごっごめん…オッパだって大切だよ。そうだ!!今夜はちょっと夜更かししておしゃべりしようよ」


ミナムの態度に焦ったミニョが必死でフォロー。


 


電話では語り切れなかったここ最近の近況を話すと、ミニョは目をキラキラ輝かせている。


話題の中には頻繁にジェルミも登場させた。


ミニョの記憶がないことで、彼なりにかなり気を使ってるのが分かった。


矛盾しているが。ジェルミとの記憶だけ思い出せないか・・と本気で思ったりもしたのだった。


 


「でさ…ミニョ…ふっ寝ちゃったな。」


幼いころと同じような無邪気な寝顔に笑みがこぼれるミニョ。


 


両親を亡くしてから苦労してきた妹が、やっと幸せをつかもうとしている。


遠くない未来に本当にシヌと婚約すればいいのだ。


だから、今はこのまま…自分の胸の内に。


その時下した判断が、ミニョそしてシヌをも苦しめることになるとは予想だにしなかったのだった。


 


いろいろと考え込んでいるせいか、ミナムはなかなか寝付けそうもない。


部屋から階段で続くテラスがあると聞いていたので、気分転換に行ってみることにする。


 


少し重たいドアを開けて、足を踏み入れると…


 


「「あっ」」


隣のドアから入ってきた人物と出くわすのだった。


 


 


 


一方別の部屋では――


 


「ねぇシヌヒョン…この間のアリーナライブさぁ」


ジェルミがグループのことで、熱心にシヌに話しかけている。


はっきり言ってカイルには、ついていけない話題だ。


それを知ってのことなのだろうけど…


するとカイルもつい対抗心を燃やしてしまう。


 


「シヌ、この前のあのシーンだけど…」


今度はジェルミが話に加われないので、ちょっと悔しそうな表情だ。


そうして内輪ネタで何度も互いを蚊帳の外状態にすることが続いたためか、ついに穏やかなシヌがキレてしまった。


 


「いい加減にしろ二人とも」


滅多に怒らないシヌだから、静かだけど余計に身体が震える。


それに妙に迫力があるのだ…


 


(ヤバ…怒ってるよ)


俯きつつジェルミの様子をこっそり盗み見ると、同じようにうなだれていた


 


「カイル!!ドラムを叩きながら歌うジェルミがカッコ良かったって俺に伝言頼んだよな?
 本人が目の前にいるんだから言えよ」


「シヌヒョン!!それホント?こいつが言ったの」


「うっうるさいな…もう…ああ…そそうだよ!!オレ音痴だし、それにドラムって難しん
  だろう?すっげえなってさ」


まさかこの場で暴露されるなどとは思いもしないカイルは、ジェルミに対しやけ気味で言い放つ。


 


「あっありがと…カイルは…ドラマでの演技すごいじゃない?オレそっちは苦手だから
  羨ましいよ。アレクヒョンと堂々と渡り合うシーンなんて釘付けでさ。動画サイトに
  UPされるのが楽しみなんだけど…」


「そ…そなんだ…ども」


今度はジェルミがこっちを褒めるのだ。


いがみ合う時と違って、妙に照れるというか不思議な気持ちになる。


ジェルミも同じように感じているのかぎごちなさが続いていたが、あるCMモデルの映像にテンションが上がった。


 


「この子のファンなの?オレ前に一緒に仕事したよ」


「えー!!いいなあ。」


うらやましそうなジェルミを横目に、無言でスマートフォンを取り出した。


 


話しの途中での行為にジェルミは顔を少し歪めているのは気づいたが、今はこっちが優先なのである。


 


「ねぇ…ジェルミ?こっちの仕事はいつまで」


「え?うん順調にいけば、あと5日くらいだけど」


「そう…わかった」


再びスマホとにらめっこのカイル。


 


「もうっ何なんだよぅ。さっきからスマホばかりで」


「ごめん!!あの子とやり取りしてたんだ。連絡先交換してたしね。もしかしたら会えるかもしれないよ。」


ついに不機嫌になったジェルミに、カイルは朗報を持ち出す。


 


「えっほっほんと?」


「うん…一応オレも同席するけど…あっでも時間とれるかな?」


「とれる!ってか絶対とる!!ありがとうカイルぅ。良い奴だなぁ」


テンションMAXで、ジェルミはカイルに抱き着く。


 


「ちょっと!何その手のひら返しの態度は?」


「ごめんねーこの通りだよ」


あきれ顔のカイルに、ジェルミが可愛く手を合わせるポーズをする。


 


(何だよ…憎めないなあ)


シヌが可愛がる気持ちが、わかる気がしたのだった。


 

拍手[19回]

ROULETTE 32



「では、改めて自己紹介します!!僕はa.n.jellの魅惑ドラマーのジェルミです。」


つい先刻大泣きしたのがウソのようないつものジェルミだ。


「おいっこの場所でそれをいうのは恥ずかしくないのか?同じくボーカルとキーボード担当のコ・ミナムです。皆さんには妹が大変お世話になっているだけでなく、このような場所に部外者であるにも関わらず妹共々参加させて頂くことに心から感謝いたします。」


ジェルミに軽く突っ込みを入れつつもミニョの兄としてしっかりとした挨拶の後、深く頭を下げる。


 


「そんな畏まることないわよ。ゲストは多い方が楽しいもの」


「そうそう!!こんな飛び入りなら歓迎するよ。」


それぞれが初対面であろうリタとアレクもそれぞれの自己紹介をすませた。


 


ほどなくして、外が冷えてきたことと少し早めの夕食の準備が整ったということで屋敷の中へと戻った。ミニョの車椅子を押す役目はここは兄貴に譲ることにする。


 


「オレも…押してあげたいのにな」


「今はそれはミナムが最優先だろう?」


二人の後姿を見つめながらぽつりと呟くジェルミの肩に、軽く手を乗せるシヌ。


 


「ミニョの兄貴ってしっかりしてるんだね?それに比べて恥ずかしげもなく自分で魅惑とか言ってる約一名。超寒いんですけど」


例によってジェルミを弄るカイルは、ブルブルと大げさなリアクションをするのだ。


 


「フン!!自分が言えないからってジェラシーかよ?」


「まさか?オレの場合は言わなくても周りが知ってるもん。照れるよなー」


シヌを挟んで、口撃戦いを繰り広げている。


(やれやれ…頼むから仲良くしてくれよ)


似た者同士の兄弟げんかに見えなくもないとシヌは思うのだ。


 


だがそんな二人の小競り合いは、ダイニングルームに近づくにしたがっていったん休戦を迎えた。


 


「「わぁ…何だが美味しそうな匂い」」


見事にハモッったのである。


 


そしてダイニングルームでは、座席はリタによって決められる。


ミニョの両隣はシヌとミナムだったが、ミナムがその場所をジェルミに譲る。


思いがけないことだが、ジェルミは大喜びだ。


 


ミナムはカイルの隣へと座る。


ジェルミに対して好戦的なカイルも、ミナムの前にすると態度が違う。


その様子を見たジェルミが、何か言いたげだったのだが。


 


この日の夕食は、ビュッフェスタイルだという。


堅苦しいコース料理の気分じゃないというリタの言葉を一度はそのまま受け取ったが、


ミニョのことを思ってだということを、後で知った。


 


「ミニョ?何食べたい?」


「シヌヒョン!!ミニョの分はオレが持ってくる」


ミニョより先に返事をしたジェルミが、トレイにたくさんの料理を乗せてミニョの前に置くと、彼女は小さく声を上げた。


 


「あ?ごめん嫌いな物あったかな?」


不安げなジェルミの表情に、あわててかぶりを振るミニョ。


 


「いいえ!!好きなものばかりでちょっとびっくりしちゃって」


「うん!ミニョのことは、食べ物に関してならちょっと…ううん!!かなり自信があるんだぁ」


記憶のないミニョにとってはミナムからの情報だと思ったのかもしれないが、ミナムとして過ごした日々の記憶はジェルミの中でも忘れられないものなのである。


 


ビュッフェスタイルとは言え、コース料理としても十分通用するクオリティに驚くばかりだった。


飛び入り参加に拘らず、すっかりこの場に溶け込んでいるジェルミ。


 


「へぇ?ジェルミ君の実家はプランタジネット家の流れをくむ貴族だって?」


「一応そうらしいでけど。オレにはその威厳らしきものは皆無ですよ。あっアレクさん?良かったらジェルミって気軽に呼んでください。」


カリスマ性のあるアレクだが、テギョンのように人を寄せ付けない空気はないので


結構楽しく盛り上がっている。


 


「わかった。ジェルミそれならオレのこともシヌのように兄貴って呼んでくれるかい?あっもちろんミナム…もね」


「「はいっアレクヒョン」」


ジェルミとミナムの声が綺麗に重なったのだった。


 


そんなマンネたちの様子を遠巻きにミニョと見ていたら、いきなりリタがやってきて


ミニョを連れて行ってしまった。


ミニョの双子の兄貴のミナムも交えて、話をしたいようだ。


 


“あら?ミニョって小さいころそうだったの”


“はいっ結構大変でした”


“もうっ言わないでよ。オッパのいじわる”


3人が韓国語で盛り上がっている。


 


「オレも言葉覚えようかな」


話の輪の中に入れないアレクのつぶやきは少し笑えた。


そんなアレク今の話し相手はカイル。


 


そしてシヌのそばには自然とジェルミがいたのだった。


 


「シヌヒョン、見て?ミニョこの前病室であったときよりすごく元気そうだね」


「ああ…ミナムに会えてさらに…だ。ありがとうな」


ジェルミの強引さはたまに閉口するが、今は素直に感謝である。


 


「ところでさ…オレずっと気になってたとこあるんだ。シヌヒョンてばミニョと…」


ジェルミの言わんとすることはすぐに理解できた。


かつてシヌと同様にミニョに恋心を抱いたジェルミだから隠さずに打ち明けようと決心したが、最初に出たのは謝罪の言葉だった。


 


「ごめん…」


「え!?何言ってるの?いきなりさー」


シヌの言葉が予想外だったジェルミは、困惑している。


 


「俺…ミニョが好きなんだ…あの頃から変わらず…こっちに来たら忘れることができるかもしれないって思ったけど…やっぱり無理だった」


「もうっシヌヒョンそんな落ち込んだ顔しないでよ!!オレ責めてるわけじゃないよ。


それにミニョも同じ気持ちなんでしょ?さっきの食事の時の二人の様子でよくわかったもん」


くすくす笑いながら、指摘された先刻のこと。


 


“ミニョたくさんあるんだから、欲張って口に入れない”


“はいっ”


“ほら?スープ飲むか”


“ありがとうございます”


“ミニョ?しっかり噛まないと消化に悪いよ”


“もうっシヌオッパたら、あんまり子ども扱いしないでください”


“ごめん悪かったよ、怒った”


“怒って…ませんけど…もう”


 


「隣で聞かされた俺は赤面ものだよ。まあ思い起こせばシヌヒョンはミニョがミナムだったころから一番良く面倒をみてたものね。ミニョもシヌヒョンには自然に甘えていたし。


今の状況は、案外落ち着くべきところに落ち着いたって思えるんだ。シヌオッパなんて甘えちゃってさ。お似合いの二人だよ。ただね?そのヒョンのことなんだけど…オレ…その」


「テギョンがどうかしたのか?言ってみろ」


これまで饒舌に語っていたはずのジェルミは、テギョンの話題になるとやけに歯切れが悪い。


 


「ごめん…オレミニョのこと話しちゃったんだ。だってあんまり落ち込んでいるし。事故にあって入院してるって。面倒を見ているのはミナムの知り合いだから心配しないようにって。あっ記憶喪失のことは言ってないよ、ヒョンは絶対無茶しそうだし」


「そうか…いろいろ気を使わせて悪いな」


あのテギョンに問い詰められた時を想像すると、最低限の話で切り抜けたのはある意味すごいことだと思う。


ミナムがテギョンに対して憤りを感じている以上、ジェルミを頼るしかないのだから。


 


ミニョとのことがあってほとんど休みなしの仕事人間だったテギョンは、アン社長の命令で舞台鑑賞の指令が下ったという。社長の苦肉の策なのだろう。


 


「劇場はどこなんだ?」


「っとね?…」ジェルミ!おれたちそろそろ帰るぞ」


ジェルミの言葉を遮ったのは、ミナムだ。


 


「えー!!もう少しいいじゃん?」


「だめだ…わがまま言うなよな。明日はロケだしホテルに戻らないとだめだろう」


このままだといつまでも滞在しそうな勢いのジェルミをミナムが制する。


 


「あら?でもそれならここからのほうが近いわ。良かったら二人泊っていったら?お部屋はあるし」


ロケ場所を知ったリタからの提案がでる


 


「そんな図々しいことは」わぁ!!良かったねミナム。ほらほらせっかくの好意だから甘えようよ」


恐縮するミナムとは真逆で、すっかりここに泊まる気満々のジェルミ。


 


あまりのストレートな感情の表現に、ミニョは呆気に取られているようだ。


 


「ジェルがすっかりその気だし、ミナムもそうしなよ。」


「すみません…何から何まで甘えてしまって」


アレクに促され、ミナムも首を縦に振った。


 


その後リタによって部屋割りが決められた。


 


リタとアレクは当然同室。


そしてミニョは積もる話があるということで、ミナムと同室。


残るは…


 


「はいっオレシヌと一緒」


「何言ってるんだよ!!シヌヒョンはオレと一緒だよ…」


カイルとジェルミのシヌ争奪戦が始まった。


どちらもムキになって譲らない。


 


「はぁ…」


「あらぁ…シヌったらこっちにもモテモテなのね?それならベッドをもう一つ入れるから、二人ともそんな子供っぽいケンカしちゃだめよ?」


シヌから出るため息に、面白がって傍観していたリタからでた妥協案。


 


「仕方ないよね…今日だけ我慢してあげるよ」


「それはこっちのセリフだよ!!」


「「フン!!」」


いつかのように互いにそっぽを向いたが、とりあえずはこの場は収まったことに安堵した。


 


====================================


穏やかな時間が続きます


ジェルミはミニョちゃんと遊びに行ったこともあるし、好みも知っていると思います。


記憶のないミニョちゃんは、きっと不思議に思ったでしょうね?


ジェルミから聞かされるテギョンさんのこと、その存在がシヌの幸せにどんな影響を及ぼすのか?


嵐が来るのは、できるだけ後にしたいのですが…


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